3-13 宴もたけなわ
田中ヒロミチ様よりレビューを頂きました!
ありがとうございます!
そして今回3章最終話です。
料理はまだまだ他にもある、次は鍋を頂こう。
イマウトルニやダンゴウサギは以前食べたが、今回は魚の白い切り身が追加で入っている。
「なぁコアさん、この魚って確かこの世界の魚だったよな?」
「んぐ? ん……うんそうだね。これはこっちの世界の魚だ」
口いっぱいに含んでいた肉を飲み込むと、まともな返答が返ってきてくれた。
コアさんはこっちから話しかけないと肉、ケーキ、肉、ケーキの胸やけしそうなローテーションをひたすら繰り返す。
もうケーキも半分を切っているので、ちゃんと自分の分を確保しておかないとな。
「召喚リストだと確か……無鉄砲魚とか書いてあったかな?」
「そうそう、それそれ」
「それはまた、どうしてだ?」
「成魚になって産卵の時期になると栄養を確保するために餌とみなしたものに突撃するんだ。それが例え陸上にいたとしてもね、だから餌を空中にぶら下げておけば向こうから食べごろの魚が陸に飛んでくるんだ」
「……えらく無鉄砲な魚がいたもんだな」
「そう、だから無鉄砲魚さ」
……まぁ魚の名前はどうでもいい、重要なのは味だ味。
お椀に持った後で切り身を箸でつまみ、少し冷ましてから一気に口の中に運ぶ。
よく煮られた切り身は、口の中でほどよくほぐれていき――
うん、美味い。味はアジに近いがアジにはない味があり、味噌の風味が合わさって味わい深い。
「うん、この魚も美味いな。コアさんも食べたらどうだ?」
「いや、今日の私はひたすら肉とケーキを食べるただの狐だよ。魚は取れるようになったけどこの肉とケーキは今日が終わったらしばらくお預けだろ?」
「そうか……しっかり食べて大きくなるんだぞ」
「ダンジョンモンスターは進化しない限り大きくも太くもならないから大丈夫だよ」
そうか、うらやましいなチキショウ! 食べた分はどこにいくんだよ!?
♦
その後も黙々と食って飲んでを繰り返す2人を微笑ましく眺めながら、時に食休みの時に談笑しながら……うん談笑だよこれは、多分……
「うふふふ、ご主人様は冗談がお上手ですねー」
ククノチがすっかり出来上がり、しかも笑い上戸だったから何を言っても笑ってくれる。
但し、俺が投げかけた言葉に対して、まともに返答が返ってくることは稀だ。
さっきも「お前流石に飲みすぎじゃないのか?」という返答がこの有様、これのどこに冗談があったのかさっぱりわからない。
まぁ、ククノチは人じゃないし、急性アル中にはならないんだろ多分……
ほとんど空いたボトルを無理矢理視界の外に追いやって、そう結論づけた時――
「うふふふ、ご主人様ー♪」
恐ろしいほど上機嫌のククノチがすり寄ってきた。
嬉しい、嬉しいんだけど酒臭い!
「にゃはははは~、今日は沢山飲めて幸せですー」
そのまま体を擦り付けてくる酒臭いククノチ、召喚した時にネコミミを付けたせいなのか時々行動が猫っぽい。
この前だって罰でネコミミを撫でまわしたら反応が完全に猫だったので、ついつい顎の下まで撫でてしまった。
でもまんざらでもない表情をしていたから、こっちも手加減なしで撫でまわした!
そういえば猫ってしっぽの付け根をなでると喜ぶんだっけか、酒臭いククノチのしっぽの付け根、すなわち……尻。
こうして体を擦り付けてくる以上、触っても許されるはず!
たとえこれが酒のせいだとしてもだ!
俺自身も酒の勢いに任せて酒臭いククノチの尻に手を伸ばし――
「マスター? 何をしようとしてるんだい?」
……! どことなく冷たい声に背筋を震わせながら振り向くと、そこには釣り目を細めたコアさんが……
しまった! 彼女はこういうことが嫌いなのか?
「ダメだよ! もっと積極的に絡みにいかないと!」
この女狐、煽りおった!
いや、俺としても絡めるなら是非絡みたいけど、全てを台無しにする酒臭さがあるんだよ!
「うふふふ~、じゃあ絡んじゃいますねー」
ククノチさん! こういう時だけちゃんとした回答を返すんじゃありません!
すり寄ってた体を離し、俺が止める前に服を脱ぎ捨ててしまった。
やっぱりでけぇ! いや、問題はそこじゃない!
「ククノチさん、お前何で下に何も着てないの!?」
そう、今のククノチは素っ裸、下着をつけてない!
「その質問には私が答えてあげよう」
その声に振り返ると、最後のケーキを名残惜しそうに見つめた後に口に入れるコアさん。
結局ほとんど一人でケーキ全部食べやがった。
「マスターは私たちの衣装を作った時、ちゃんと下着から作ったかい?」
(回想中)
「…………言われて見れば作ってない!」
あれ? ちょっとまって!?
その理屈でいうと――
恐る恐る装備ウィンドウを開いて、コアさんの装備を確認する。
――そこには”下着:装備なし”の項目が……
「だから私も着けてないよ? てっきりマスターがそういう趣味だとばかり思ってたけど、違うのかい?」
「そこは明確に否定させてくれ! 後でちゃんと用意するから!」
そう、今はそれどころじゃない! 裸になったククノチが、腕から蔓を伸ばして絡んで来てるのだ!
へー、そうやって出してるんだ。 いや、違う! 絡むってそういう事かよ!
「ちょっと待ってククノチ! 痛い痛い! 蔓が締まってる!」
「うふふふ、逃がしませんよ~」
「逃げてない! 逃げないから離して!」
「えーい!」
縛ってる状態で押し倒さないで! 危ないから!
「よかったじゃないか。美女ラミアとはちょっと違うけど、巻き付かれたかったんだろ?」
「そうだけど! そうなんだけどこれは違うかなって!」
「これも地球じゃできない事だろ? せっかくだし存分に楽しみなよ」
「こんな動けない状態で楽しむも何もって……あれ? ククノチ?」
さっきから俺を押し倒した状態のまま、ククノチが動いていない。
「おい? どうした? まさか急性アルコール中毒か? しっかりしろ! 後せめて解いてくれ!」
「……スヤァ」
ここで酔いつぶれるんかお前はぁ!
ちょっと期待してたのに、このワクワクをどうしてくれるんだ!
ものすごい気持ち良さそうで、とてつもなく酒臭い寝息が聞こえる。
縛られた体で揺らしてみるも、まったく起きる気配を見せない。
うん、起きないなら丁度いい。
「なぁ、コアさん」
「ん? なんだいマスター」
「俺は本当に”召喚”されて来たのか?」
最初の疑惑はコアさんを召喚した時――
コアさんは自分の意思を共有して妖狐になってでてきたが、それは本当に召喚と言えるのか気になっていた。
決定的なのはククノチだ、俺はドライアドにネコミミを付けて召喚してしまった。
出した時はカスタマイズバンザーイと思っていたが、よくよく冷静に思い返すとこれは新種族を作ったと言える。
2人が作られたという事は、俺自身も作られたと考える方が自然だろう。
コアさんは何か考えている素振りを見せて――
「そうだね、多分マスターは作られたと思う。地球にいる”本物の”マスターがどうなっているかはわからない。死んだから来たかもしれないし、まだ生きて社畜生活を続けているかもしれない」
やっぱりか、俺が作られたとすればDPとかいう都合のいいもので簡単に能力が身についたのも、一応納得できない事もない。
「でもさ……」
ここで言葉を切って微笑むコアさん。
「マスターが召喚されたにしろ作られたにしろ、ここの生活をエンジョイする事には変わりないしどっちでもいい事じゃないかな?」
――ああそうだ、確かにどっちでもいい。
地球で社畜生活をしているであろう俺には悪いが、こっちは心行くまでケモミミ娘との生活を楽しませてもらおう。
♦
さて、胸につかえていた疑問も一応の解決をしたところで――
「コアさんたびたびすまないんだけどさ」
「今度は何だい?」
「このツル解いてくれない? トイレに行きたい」
ククノチがとてつもない量を飲んでいたが、俺だって今日は飲んで食っている。
飲み食いすればトイレに行きたくなるのは自然の摂理であろう。
「うーん、解くのは硬くて無理だね。でも、安心して私に任してほしい」
俺に絡まったツルをちょっと触って調べたらあっさりサジを投げおった。
でも安心してほしいってどういうことだってばよ?
「マスターが漏らしたらダンジョンの保全機能でしっかり掃除してあげるからさ」
「いや、それ俺の尊厳的な問題で全然安心じゃないからね!?」
ちょっと! 席に戻って他人事モードになって肉を食べ始めないで下さい!
やばい、ヤバイヤバイ!
意識しだしたら限界が近くなってきた!
「おい、起きろククノチ! 頼むから起きてこの蔓をほどいて! ウェイクアープ! ククノチィ!!」
縛られた体を必死に揺らして、ククノチ起こそうと試みる!
というかな、そこで寝られてたらお前にかかるんだぞ!
「ふにゃぁ……もう飲めませんー」
「お前典型的な寝言を返してるんじゃねぇよ!」
くそっ、せめてククノチにかからないようにしないと!
最後の力を振り絞り、必死に体を揺らして覆いかぶさっていたククノチをなんとかどかす。
だが、その代償は大きかった。そう、余りにも大きな代償だった。
満面に水が溜まっていたダム、そこに地震の振動が加わったことにより水に勢いが加わる。
それはまるで水がつまった水風船に、チャクラを流し乱回転させて水風船を割ったかのように、辛うじて決壊をおさえていた膀胱ダムに執拗なまでの体当たりを浴びせる。
元々許容量を超える貯水量が溜まっていた膀胱ダムは、その水圧に負けて徐々にヒビが入り、やがて――
「あ、あ、ああ……」
コアさん見ないで……今の俺を見ないでぇ……
縛られてるから手で顔を覆うこともできない……
こうして俺の黒歴史ノートに、新たな1ページが書き込まれてしまった。
おちこんだりもするけど、俺は元気に生きてます。




