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3-9 第2防衛エリア防衛戦

 狼共は雄たけびを上げながら、崖に向かって走り出す。

 あいさつがわりに、天井に仕掛けておいたボウガンから矢を一斉射撃で放つ!


 矢は重力の力を借りてより勢いを増し、今まさに崖を登ろうとしていた狼共に突き刺さった!

 ……だが、腕や肩などに命中した連中は、勢いを落とすことなく崖を登り始める。

 

 あのゴツイ見た目は伊達じゃないって事か。

 だが運悪く首裏や頭に命中したやつは死ななかったまでも、戦闘不能にまでは追い込めているので効いてはいるな。


 今回罠はオートモード(多分コアさんが制御してる)なので、リロードが終わりしだいドンドン撃ってもらおう。


 さて、俺も見てないで攻撃に参加しないとな。

 矢筒から矢を取り出し、魔力を込めながら弓につがえる。


 片目を閉じ監視ウィンドウから、崖の状況を見ながら狙う1匹を決める。よし、一番登ってるお前だ。

 決めた瞬間。狙撃スキルにより矢の経路を示す白線のイメージが脳裏に描かれる。


 後は偏差を考え若干上の方に狙いを定めてから――


 放つ!


 

 矢は狙った通りの軌道を描き、()()()()()()()()()()――


 瞬間、矢が軌道を変え、ブーメランのように円の軌道を描きつつ高度を落とす!

 そのまま矢は、俺が狙いを定めた奴の首に向かって高度・方向を調整されて――


 首の斜め後ろから喉に向かって突き刺さる!

 さすがに喉を貫かれては、崖を登るどころか捕まるのも無理なようでそのまま力なく崖を滑り落ち――


 ――後続を盛大に巻き込んで落ちて行った。

 うっしゃ! 狙い通り!


「やるじゃないか、マスター」

「私は見えてませんけど、お見事ですー?」


 2人がほめてくれた! ありがとうよ!

 もちろん2人も何もしていないわけじゃない。

 

 コアさんが右手から火の玉を出し、そのまま崖に向かって放つ。

 火の玉は崖を超えると()()に折れ曲がり、その真下にいた狼の顔面に向かって飛んで行く!


 狼は飛んできたことに気が付いて回避しようと爪を掛けれそうな出っ張りを探す。

 しかし、崖はわざと登れるように作ってあるが、()()()()()ようには作ってないので無理に回避しようとすると姿勢が崩れて落ちてしまうのだ。


 狙われた狼はなんとか右手で払ったようだが、炎が消えずに右手を燃やし続ける。

 やつは悲鳴を上げながら右手を振り回し、そのうちバランスを崩して崖を落ちて行った。


 残念! あの火はコアさんの妖術”狐火”で出したやつなんだよ!

 普通の火魔法と違って、コアさんが術を解除するか魔力で打ち消さない限り燃え続けるのさ!


 俺の幻術破りが上達したら、あれを打ち消す事が次の修行なんですわ。

 「ククノチが回復魔法使えるから、これでいくらでも火傷できるだろ」とにこやかに言われてしもうた。

 これが終わったら次にあれを味わうのは俺なんだよ!


 矢を放り登ってくるやつらを落としていると、時折大きな物音がして石が俺の手前に落ちてくる。

 筋狼族が投げてきたダンジョンのガレキを、ククノチが召喚(?)した木が枝ではたき落として地面に落ちる音だ。


 崖下の連中は、俺たちの位置が正確にはわかってないので適当に投げてるだけだが、それでも俺たちに命中しそうなガレキは何発かある。

 それを叩き落としてくれるので、俺とコアさんは安心して攻撃に専念できている。


 それにしてもあいつら、ダンジョンの壁を壊してそれを投げてきやがって……後で壁を修復するのもタダじゃないんだぞ! 許さん! 

 

 しばらくは順調に迎撃できていたが、やはり攻撃が俺とコアさんの2人じゃ手が足りない。

 徐々に撃ち落とした場所が高くなっていく。そして先頭が約2/3を登った頃――


 風切り音とともに、狼達の後ろの壁から放たれた”モノ”が崖に向かって飛ぶ。

 それは先頭を登っていた狼の背中に突き刺さり貫通する。


 刺さったのは……直径7cmはある通常よりかなり大きい矢。

 急所に命中したのか、刺さった狼はそのまま崖に縫い付けられ動かなくなる。


 まだ登っていない狼の一部が崖の反対側を反射的に見るが、そこには自分達が入ってきた入り口と明かりのない暗い壁しかない。


 と、思うじゃん?


 暗い壁から太い矢が射出され、同じように崖を登っていた別の狼を串刺しにした!

 狼共が矢が出てきた部分を狙って石を投げるが、当然壁にぶつかって落ちるだけである。


 タネあかしをすると、カスタマイズで大きくしたボウガントラップを壁際に設置し、その前方に矢狭間付きの壁を設置しておいただけなんだがな。

 狼共がボウガンを破壊するためには壁ごと破壊できるほど威力がある攻撃をするか、狭間を抜けてボウガンに当てられるほど精度の高い攻撃をするしかない。


 後、お前らそんなに壁を見つめてていいのか? 天井からも矢が振ってくるんだぞ?


 リロードが終わった天井ボウガンが再び矢を放つ!

 壁に注意を向け過ぎていた数匹の反応が遅れて、そいつらに矢が突き刺さる。

 

 さらにそのドサクサに紛れて、俺の矢が1匹の急所を打ち抜く!

 

 さすがにリーダーっぽい奴は矢をしっかり避けていて無傷だが、大分イラついているように見える。

 まぁ、あいつは後回しにして今はしっかり数を減らしていこう。


 さて、次に狙うべき奴は――

 

 ん? 狼の鳴き声が聞こえる。いや違う、これは臆病者と馬鹿にされてるんだな。

 いまだに崖も登れない連中がよく言う、てめえらなんざ直接狙って射殺してやるよ!


 木の陰から身を乗り出し、前に一歩踏み出す。


 突如肩を引っ張られて無理矢理振り向かされ、同時に額に衝撃を感じて思わず目を閉じる。


「痛って!」

 

 額を抑えながら目を開けると、右腕を突き出したコアさんがいた。


「まったく、魔力が乗ってるって注意したのにあんな簡単な挑発に乗るなんて……まだまだだねマスター」

「え? 挑発?」

「そうだよ、でなきゃマスターが前に出るなんてありえないだろ? 大丈夫、抵抗するのは私の幻術を破るよりはるかに簡単だよ、デコピンまでしてあげたんだからね」


 妙にイライラして、相手に突っかかっていきたいこの感情は挑発のせいなのか。

 ついでにこの額の痛みはデコピンされたからなのね。


 ならば魔力の意思を込めて落ち着こう、心を冷静に……ビークールビークール。


 よし、イラつきが収まってきた。思い返せばあの程度の罵りで怒る程、俺の沸点は低くはないはずなんだよなぁ。

 やっぱ魔法って怖い、でもここで経験できたのはありがたい。

 もっと致命的な場面で食らわなくてよかった!


 再び挑発が飛んできたが、今度はしっかり抵抗の意思を出していたので、少しイラついたがすぐに落ち着きを取り戻す。


「やつは『このままだと手も足もでないので、お願いしますからどうかこちらに来てください』と言ってるな。だからこのまま続けるぞ」

「その調子だよ、抵抗することに慣れるには丁度いい機会だね」


 そうだな、挑発されて止まっていた攻撃を再開しようと矢をつがえると……何かが俺の横を通り過ぎた。


「私が直接狼共を叩きますー!」


 あかん、言葉はわからんはずなのにククノチが挑発に引っかかってる!

 ニュアンスか? ニュアンスでも引っかかるのか?


 それだけならまだいいが、投石が直撃コースで飛んできてるのに気が付いてない!

 やばい! とっさにククノチを引っ張り、盾になるように身を乗り出し投石に背を向けて備える。


 直後、右肩に衝撃!


「ぐぁっ!」


 痛ってぇ! 丈夫なコートを来てたから軽傷で済んだけど、痛みでしばらく矢は撃てそうにない。

 ゴブリンの襲撃からさらに耐久力があげたが足りなかったか。


「ご主人様! よくも……許さない!」


 突撃しようとするククノチを痛む右手でむりやり押さえ、庇っていた体勢から強引にククノチを抱き上げて木の裏に退避する。


 痛い痛い! 右肩が痛むから暴れんでくれ!


「よし、まずは落ち着こうか」


 ”冷静になーれ”という意思を込めて、左手でネコミミを撫でまわす。

 うむ、ククノチのネコミミもなかなかの感触を返してくれる。


「ふぇっ!? ご主人様!?」

「落ち着いたか―?」


 よしよし、冷静になったようだ。

 同時にククノチの視線が右肩に向く。


「ああっ!? 申し訳ありません! 私のせいでケガをさせてしまって! すぐに回復を――」


 ククノチの口をそっとおさえる。これ、一度やってみたかったんだよね!


「いや、それより――」

「マスター! イチャついてる場合じゃないよ。そろそろ崖を登られる」


 コアさんが俺の言葉にかぶさるように警告をしてきた。

 挑発で攻撃が止まった事もあり、大分登られてしまった。巨大ボウガンも威力をあげた分リロードは遅いから手数が足りなかったか。


 崖際に視線を移すと狼の右手が肉眼で見えた。

 そいつは一気に崖を登ろうと右手を軸に一気に跳躍してきた!


 

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