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3-6 ブレイクスルー

 森林エリアに何かを叩く音が響く。

 先日土鍋と一緒に召喚した鉄鍋に木の実を入れて、ゴブリンからうば……迷惑料としてもらったこん棒を使って木の実をひたすら叩いてペースト状にしていく、そんな作業をかれこれ1時間ほどやっていた。


「マスター、もう飽きてきたよ」

「この作業は時間単位でかかるみたいだぞ、いい揚げ物を食べたいんだろ? だからがんばれがんばれ」


 ――主にコアさんが。

 そうしないと、このブリオーとかいう実から油が取れないからなぁ。


 新しく仲間に加わったククノチに森林エリアの管理を任せてから数日。

 彼女のおかげで、実が成っている木の場所や成長状況を細かく知ることができるようになった。


 それだけでも俺たちにとってはかなりのプラスだったが、ククノチはさらに木の実や木の成分も大体わかるらしい。


 そこで地球で油として精製されているオリーブの実を召喚してククノチに成分を見てもらった。

 その上で似ている品種がこの森林エリア内にないか尋ねてみたところ、一番近いと言われ、紹介してもらったのがこのブリオーの実だった。


 ほんと、種族をドライアドにしてよかったよ。ククノチには今度何かプレゼントを送ってやろう。

 ただ、召喚して日が浅いので彼女の好みが全く分からないけど……

 まぁ本人も何が好きなのか、まだわかっていないようだった。


 そのククノチ本人には俺が作っていた腐葉土の手直しをしてもらっている、

 曰く、あんまり美味しそうに見えないので、美味しく作り直すとの事。


 もう植物関連は何もかも、彼女に任せてしまおう!

 その方が何かと手っ取り早い。


 話をブリオーの実に戻すと、とりあえずオリーブから油を精製する行程の最初の作業が、実を砕いて油分と果汁等を分離する事だった。なのでオリーブオイルと同じ精製手順で砕いているのだが……


「そろそろ変わってくれないかな?」

「しょうがないな、じゃあ洗い物が終わったら交代してやるよ」


 洗いながら様子を見てたが、ずっとこん棒で木の実を叩いてるだけの単調作業だったので、退屈になるのもわかる。

 日本にいたころはこんな作業簡単に機械化して、自動でやってくれていたんだろうな。


 しかし、今の俺たちはまだ鉄の精製すらできないから、機械化なんて夢のまた夢なんだよな。

 自動人形(オートマタ)盛りだくさんの機械ダンジョンとか、中二病心がくすぐられるけど……


 しかし現実は非情である。


 もうすぐ交代できると知ったコアさんが、ラストスパートとばかりにブリオーをがんがん押しつぶしている。

 

 あれじゃあいいとこ全手動釣り天井だな。

 まぁ、罠といえばウチのダンジョンは、DPさえ払えばメンテまで全自動でやってくれるのでそれはとても楽チンで――



 ――まてよ?

 

 

 全自動……釣り天井……自動……罠……設備……

 ウチのダンジョンは、罠も設備も自由にカスタマイズできるから―― 

 

 ……


 目を閉じて拡張ウィンドウを確認する。


 

 ――!


ユリイカァ(ひらめいた)ァァァーーーー!」

「——っ!! マスター、一体どうしたんだい?」


 突然大声を上げたので、コアさんがビクッと身を震わせてこっちに振り向いた。ごめんよ。


「コアさん、私にいい考えがある」

「その言い方はやめろっていったのは、どこの誰だったかな?」

「俺だ! でも上手くいけばこの作業から解放されるぞっ!」 

「ほんとかいマスター! じゃあ早速やっておくれよ!」


 めずらしく興奮しておる。よほど退屈だったのだろう。

 

「よし、じゃあコアルームに行くぞ」

「あれ? ここでやるんじゃないのかい?」

「ああ、新しく部屋を作る。後は作りながら見せてやるよ、その鉄鍋も持ってきてくれ」

「じゃあ、そうさせてもらおうかな」


 そして俺たちは、丁度腐葉土を作り終えたククノチと合流してコアルームに戻った。





「まずダイニングルームを作ります」

「だいにんぐ? ですかー?」

「主に食事をする部屋の事だね」


 まずコアルームに新しいポータルを出現させた。

 その先に6畳くらいの何も部屋を作る。

 床はフローリングにして天井に光源をまばらに設置したので、初めて現代風の部屋を作ったことになる。


 カスタマイズ機能を使って部屋の一片の床を迫り上げ、同時に天井を落とす。

 例えるなら「凸」という字を横にしたような感じになっている。


 次に天井を落とした部分に、釣り天井の罠を仕掛ける。この釣り天井はサイズを直径10センチ程、素材を丸太にした。

 そして釣り天井の下に、へこませた直径50センチほどの回転盤の罠を若干斜めに配置する。


 「コアさん鉄鍋を回転盤の上に置いてくれ、こぼさないようにな」

 「ん、置いたよ」


 回転盤をカスタマイズして、鉄鍋を固定するフックをつけて固定する。

 最後に釣り天井と回転盤の作動方式をレバー式にして、細かい作動調整を施せば……


「よし、完成だ」

「これはなんですかー?」

「——っ!! これはまさか!」

「お、コアさんは気が付いたみたいだな、それじゃ動作確認するぞ」


 レバーを引くと釣り天井と回転盤が動作し始める。

 丸太はトントンと一定のリズムを刻みながらブリオーの実を押しつぶしていき、回転盤は鉄鍋を回すことでへばりついた実を、重力で落としてかき混ぜていく。


「上手くいったな、こいつは全自動マッシュトラップだ!」

「全自動ですかー?」

「——っ!! すごいっ! これはすごいよマスター!」


 ククノチはまだピンと来ていないようだが、コアさんは単調作業から解放された喜びからか称賛の声と拍手を送ってくれた。


「ふふふ、コアさん。俺のトラップクラフトはまだまだこれからだぜ?」

「え?」


 そう、罠で調理器具を作るというブレイクスルーを得た俺のターンはまだ終わらないのだ!

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