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3-2 議会は殴る だから進まず

 ざわ…… ざわ……

 コロシアムのような円形の集会場に、多くの人々が自席に座って思い思いの雑談を交わしている。

 例外は中央に陣取るのは、古代ローマの正装用トーガを身にまとい、引き締まった体にひげもじゃの一人の男。


「皆の物、静粛に!」


 中央の男が声を張り上げると徐々に声が静まり、静寂が場を支配する。


「ではこれより元老院議会の開催を宣言する。本日の議題はこれから召喚する新しいハーレム要い……もとい、新たな仲間の種族・容姿・能力を決めることだ。今回は前回と違い農業スペシャリストかつヒーラーであるという条件がある。まずはこの条件を踏まえて最もふさわしいと思う種族を決めようと思う」


 ざわ…… ざわ……

 集会場がざわつき、席に座っていた男たちが周りの者と議論を交わしている。


 やがて――


「議長!」


 一人のひげもじゃの男が挙手をしたので、中央の男が発言を許可する。


「やはりここは前回最後まで候補に残っていた化け狸はどうでしょうか? 二足歩行で農業するイメージもあり、癒し系でヒーラーもぴったりだと進言します」

「異議あり! 狸は農業被害を出しているので農業とは程遠い動物です! それにもうコアさんという妖狐がいる以上化け狸はキャラ被りで不和の元です!」

「コアさんはそんな事気にしないぞ!」

「呼ばれた狸が喧嘩を売るかもしれないじゃないか!」

「んだとお前、狸をバカにしてるのかゴルァ!」「やんのかゴルァ!」

「静粛に! 静粛に!」


 ヒートアップして、論議から殴り合いに発展しそうになった2人を議長が仲裁する。


「発言は私の許可を得てからしなさい、それと化け狸は却下だ、キャラ被りという理由ではなく能力が似ているという点でだ。今、必要とされているのは私とコアさんで対応できない状況に対応できる能力を持つ種族だ」 

 

 すごすごと自席に戻る2人を見届けてから、議長は議会を進めようと促す。


「ではここはオーソドックスにワーウルフなどどうでしょう? 農業と犬は切っても切れない関係です」

「犬はどうしても戦士とか前衛系のイメージが強いですよ」

「ここは意表を突いて河童などどうでしょう? 農業してるイメージがありますよ」

「ずっとキュウリだけ作ってそう」

「我に天啓ですぞ! ここはエルフ以外ありえませんな! エルフなら森の民というイメージが強くヒーラーも違和感がありませんぞ!」

「却下、エルフはケモミミじゃない」

 

 あーでもないこーでもない。

 アイデアが出ては却下され、激高した議員が殴りかかろうとして止められるを繰り返し、議会はまったく進む様子をみせない。

 

「議長」

「はいそこ」


 乱闘を始めた議員をよそに一人のひげもじゃが手を挙げ、どこか諦めた風に議長が指名する。


「私はドライアドを推します」


 ――ドライアド――

 ドリアードとも呼ばれる木の精霊の一種、確かにこの種族なら植物そのもの=農業に強そうであり、大自然のパワーとか使って癒してくれそうではあるが……


「却下です! ドライアドにはケモミミがありません!」


 そうだそうだとヤジが飛び交う、しかし男はそれを手で制す。


「皆様お待ちください、私の発言はまだ終わっておりません。それに、あなた方は大切なことを忘れておられます」


 ざわ……

 会場がどよめいたが彼の次の発言を聞くべく、やがて静寂が場を完全に支配する。

 完全に静まり返ったのを確認して彼が口を開く。


「召喚するダンジョンモンスターはカスタマイズが可能なのです。つまり、()()()()()()()()()()()()()がいてもいいさ、ということです」


 ケモミミがないならつければいい、まさに悪魔的発想!

 ざわ……ざわ……

 集会場がざわつくが「秀逸」「奇抜」「卓越」と概ね肯定的な意見が占めていて、ようやく決まったかという空気が流れ始める。


 しかし――


「異議あり! ですぞ!」


 その空気に水を差したのは、先ほどエルフの提案を却下された男だった。


「それならエルフにもケモミミを付ければいいのですぞ! ここは王道のエルフ以外ありえませんな!」

「残念ですが、エルフにはそれができない理由があります」

「なんですと!?」

「質問ですがエルフがエルフたる特徴とは何ですか?」

「愚問ですな。 金髪、美形であること、ダークエルフなら褐色、グラマーであることが特徴ですな。後は……」


 そこで彼は目を見開き、口を大きく開ける!


「ふふ……お気づきになりましたか?」

「後は……()()()()()()()()()であること……」

「そう、エルフにとってエルフ耳は重要な要素、エルフ耳じゃないエルフはもはやエルフではない!」

「がっ……! ぐっ……! ギギッ……!」


 顔をぐにゃぁと歪ませ膝をついて崩れ落ちるエルフ推しのひげもじゃ。


「では種族はネコミミドライアドで採決を取ります。賛成の者は起立してください」


 全議員が立ち上がる。

 長かった種族決定会議はようやく終わろうとしていた……




「ちょっと待ってください! 種族がドライアドなのは賛成ですが()()()()()()()()()はないはずですよ!?」


 ――そんなことはなかった。


 ざわっ……


「ちぃっ! 気づかれたか!!」

「ずるいぞ議長! さらっとネコミミで通そうとしやがって!」

「そーだそーだ! ウサミミにするべきだ!」

「いや、ドライアドには狼耳が一番似合います! ここは狼耳で!」

「君たちは豚耳の良さがわかってない! 豚耳一択だろ常考!」

「イヌミミ!」「リスミミ!」「たぬみみ!」

「よーしわかったぞ貴様ら、この議題は平行線で絶対に終わらない! だから最後まで立ってた奴の意見を採用する! それで文句はないなお前ら!」


「「「やってやろうじゃねーか!!」」」


 かくて議会は、怒号と悲鳴が渦巻く殴り合いのバトルロワイヤル場と化したのであった……



 

 結局の所、殴り合いの最終勝者は議長だったので、そのままネコミミドライアドで種族は決定となった。

 次は容姿と能力を決めねばならないが議長以外全員のびてしまっている。

 「全員寝てるからやむをえないな」と言いながら、議長は一人でカスタマイズを設定していく。


 髪と耳は緑色をベースに、髪型は木の葉をイメージしたふわっふわっのセミロング。

 胸は豊穣でなくてはならないという信念の元、コアさんを超える巨乳に設定する。


 次に能力の追加だが、まず種族特性として「植物操作・意思疎通」があり、そこに「回復魔法・支援魔法」を追加し、戦闘面では完全な支援型として立ち回ってもらうことになる。


 最後に戦闘服だが、これまた神絵師の回復職の絵をベースに緑色の全体的にゆったりした衣装にしてみた。

 もちろん農作業や防衛もしてもらうので、動きやすさを重視してある。

 最後に木製の杖を付けてカスタマイズが完了となった。


 議長はすべての設定を決定すると、力尽きたように仰向けに倒れる。

 だがその顔は今までのどの笑顔より満ち足りていた。




「というわけで、こんな感じに纏まりました」

「何が"というわけで"かわからないけど、随分と時間をかけたね」

「いやー、ドライアドにケモミミを付ける発想をしたあと、どんな耳が似合うか考えてたらこんな時間に……」

「マスターのケモミミにかける情熱を甘く見てたよ」

「いやいや、コアさんの食べ物に対する情熱には遠く及びませんよ」

「ところでドライアドって野菜だと思う? それとも肉だと思う?」

「食うなよ! 絶対に食うなよ! これは振りじゃないからな!」

「冗談だって、流石に仲間は食べないから安心したまえ、それよりさっさとよびだしてあげたらどうだい?」


 仲間じゃなかったら食うんかい、と心の中でツッコミを入れておく。

 確かにこのままコアさんと漫才をしてたら何時までもよびだせない、さっさと召喚しよう。

 

いい加減主人公に髭をそってほしいと思うけどなかなかタイミングがない

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― 新着の感想 ―
[一言] いくらケモミミ好きだからって 人外っ娘に生やすのは邪道オブ邪道オブ邪道
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