2-EX2 カレーは何にでもあうのか?
「んっ」
うどんを食べ終えたコアさんが残ったカレーつゆを少し飲む。
「くぅー、美味しかった」
「満足してくれたようで何よりだよ」
しっぽを振りながら笑顔を振りまくコアさんに思わず頬が緩みながら答える。
「それにしてもカレーはすごいね、あんまり味がなかったと感じたうどんでも、カレーをつけただけでこんなに美味しく感じるなんて思わなかったよ」
「そうだな、大体の料理はカレーを使ったらカレーなにがしになるくらいカレーは強いな。カレー味っていう風に一つの味を確立してるくらいだしな」
「へぇ、じゃあこれもカレー付けたら美味しくなるのかな?」
そう言ってコアさんが取り出したのは……イズマソクの実。
「いや、それは例外だろ」
「カレーを付けたら美味しくなるかもしれないよ?」
「煮ても焼いてもクソまずかったやつが、カレーを付けた程度で美味くなるとは思えないんだが」
「やってみなくちゃ、わからないじゃないか」
「やらなくても結果は判るだろ、この場合」
「実証しないと本当の結果は判らないよ」
コアさんのそのイズマソクの実に対する情熱というか執念は一体何なんだ?
最早説得を諦めて事の成り行きを見守ることにする。
ドンブリにイズマソクを入れて余っていたカレーつゆを付けてから一気に口の中に入れる、飴を舐めるように口の中で転がして……
「…………ゲホッ!!」
白目をむいて吐き出した。そりゃあ舐めてるだけなら周りについたカレーがなくなったらイズマソクの味がダイレクトに伝わってくるだろ。
まぁここまでは予想通り、吐き出した時に唾が飛んできたのも許そう。むしろコアさんのならウェルカムだ。
問題なのは……吐き出した時のリアクションで投げ飛ばされ、綺麗な縦回転をしてこっちに飛んでくるどんぶりである。
生暖かく見守っていたので避ければギャグマンガみたいに頭からかぶる事はないだろう、だがその場合、貴重などんぶりが落ちて割れてしまう、なので俺には受け止める選択しかなかった。
持っていた俺のどんぶりを太ももに置いて飛んでくるどんぶりに備える。そして白羽取りの要領でどんぶりの回転軸を抑えてキャッチする。
そう、キャッチは上手くいったがタイミングが悪かった。どんぶりの見込み部分が俺の方を向いている、つまり中に入っていたカレーつゆが慣性の法則に従って俺のほうに飛んできた!
手はどんぶりをキャッチしたのでふさがっている、太ももにはどんぶりを置いてしまったので立ち上がることもできない。つまり、もう回避する方法がなかった。
べちゃぁ……
そんな音を立てて飛ばされたカレーうどんのつゆは俺の顔面に着地成功。
ん? そう、これはコアさんが食べてたカレーうどんのつゆ、これをすすればコアさんと間接キス!
俺はさりげなく、ほんとにさりげなく口の周りついたカレーつゆを舐めとる。
「ゲェッ!!」
苦い! 間接キスとはこんなにも苦い物なのか!? 否! 俺はこうなった原因を思い出す。
コアさんはカレーつゆにイズマソクを入れていた。なのでこれはイズマソクの味だ!
くそっ! イズマソクはカレー味すら凌駕するというのか!? しかしここで俺もどんぶりを放り投げるわけにはいかない。
幸い、耐えられる苦さだったのでそっとどんぶりを地面を置いてから、コップ変わりに使っているワンカップのビンから水を一口含んだ後、うがいの要領で吐き出す。
……ようやく苦みがなくなってきたのでコアさんの方を見ると今だに悶絶している。やっぱり直は相当ダメージが大きいのだろう。
ワンカップを手渡すとコアさんも即座に口に含んで吐き出す。それを2,3回繰り返してようやく落ち着いたようだ。
「ふぅ、助かったよマスター」
弱々しい笑顔で礼を言ってきたので、俺もカレーつゆがついたとびっきりの笑顔で答える。そして……
「マスター、なんで顔にカレーつゆが付いてるんだい? それになんで私の耳をつかんでるのかな?」
問いかけを無視してコアさんの耳をいじくりまわしてやる。
「ちょ、ちょっと! わひゃ……くすぐったい! や、やめてよマスター!」
「お前がどんぶりをこっちに飛ばしてきたから受け止めた時にかかったんだよ。これはその罰だ、だから今回は遠慮しないからな」
「えっ! うひゃっ! ちょ、やめて! 許してマスター!」
罰という名目で今回は自重せずに全力でいじらせてもらった。
俺が満足して手を離した時、コアさんは息も絶え絶えでなんかいろいろヤバそうだったが、まぁ命に別状はないしこのまま放置でいいだろう。
これからもコアさんが何かやらかしたら罰の名目でたっぷりモフらせてもらうとしよう。
合計一万Pv突破しました!
毎度ご愛読いただきありがとうございます!