2-1 ディティールは凝り出すと止まらない
1日中やることがあると日が立つのは早いもので、熊の襲撃から数日立った。
迷宮の胃袋送りにした熊は無事全てDPになってくれたので、生活水準を上げるとしよう。
最初にきゅうりの育て方と生育の知識を獲得する。
好適土壌pH? え、何それ? 土に酸性アルカリ性ってあるの?
野菜って基本植えて肥料をまけば大丈夫じゃないの?
pHを測る器具も変える土もないからこの農地エリアで召喚した土の適性があってることを祈るしかないな。
後はきゅうりに必要な作業になる摘芯・摘花・摘葉等は知識を得た今、忘れなければ大丈夫だろう。
農業なんて種と肥料をまいて水を忘れずかけてやればOKだと思ってたがそんなことはなかった。
侮っててごめんなさい!
次に着替えだが比較的安い作務衣にした。しばらくはこれと異世界に飛んだ時に来てた服を着まわす事になるが、服装に気を使えるほどのDPはないのでしょうがない。
それと着替えのカテゴリーに入れていいのかわからないが靴を下駄からトレッキングシューズに交換している。
身体強化と組み合わせて、大分軽快に動き回れることができるようになった。
これは一緒によび出したダンゴウサギを見つけたり追い回すのために必要だったんだ。
なんせ1辺3kmくらいある森林エリアに放し飼い状態なので、見つけるだけなら監視ウィンドウを使えば簡単なんだ。
でも、そこまで移動した上でさらに脅して、しっぽを切り離してもらわないといけない。
こいつが手間過ぎる!
「しっぽおいてけぇぇぇぇぇ!!」と叫びながら鉈を振り回して追い掛け回すのが、最近の森林エリアでの日課になってしまった。
いやほんと人目がなくてよかった、これもう完全にアブナイ人だわ。
後は防衛用エリアの拡張と森林エリアの配置換えをしてみた。
森林エリアは時間稼ぎの防衛用エリアとしても有効ではあるが、現在では唯一の食料供給エリアでもある。
先日の熊のように居座られてしまうと、食べ物の供給が止まってしまう。
そこで入り口からコアルームに向かう通路からはずし、その代わりに防衛用エリアを差し込んでおいた。
必要な作業やダンジョン維持費が増えた結果――
ついに俺一人の労働力ではダンジョン維持することができなくなった。
コアさんが労働力にならないもんかねぇ?
コアルームにてコアさんを前にして話しかける。別にどこにいても会話はできるが、こういう時は面と向かって話した方がいいだろう。
「なぁ、相談があるんだけどコアさんは人型にはなれるのか?」
「そんな事考えたこともなかった。ちょっと待っててくれたまえ……」
コアさんが人型になれたら、単純に労働力が2倍になって多少は楽できるかなと思ったんだが。
「うーん。残念だけど私自身は人型にはなれないね」
現実は非情であった。
「ただ、ダンジョンモンスターとして私自身の自我を共有して召喚される事は可能なようだよ」
ということは、コアさんにケモミミ美女として降臨してもらうことはできるのか。
あれ? これとってもいいんじゃない?
コアさん頭いいしサポートとしてもリーダーとしても向いていると思う。
「じゃあコアさんにダンジョンモンスターとしても、俺のサポートをしてもらいたいんだけどいいかな?」
「うん、私も興味が出てきたからよばれてみるのもいい機会だね」
コアさんの許可ももらったことだし、さっそく召喚ウィンドウを開く。
記念すべき一人目のケモミミ美女なので、気合を入れてカスタマイズに臨むことにしよう。
まず種族だが、俺の脳内元老院が激しい舌戦を繰り広げた結果、妖狐派と化け狸派にしぼられた。
そこからも俺の脳内ではお互い譲らぬ激しいせめぎあいが続く。
最終的には最後に食べたのはきつね蕎麦だったという理由で妖狐で決定した。
きっともういろいろ疲れたんだろう。
次は容姿だ。最初に髪の色を決めようとしたが、これも金髪派と銀髪派の真っ二つにわかれてしまい、終わらない舌戦を繰り広げるハメになってしまった。
その後もタレ目か吊り目かとか貧乳か巨乳か等で会議は紛糾し、元老院は場外乱闘の場になり果てた――
結局容姿に関してはコアさんに一任することになり、金髪長髪吊り目の胸はやや巨乳寄りという所に落ち着いた。
別にこれが最後ではないし、今後も多種多様なケモミミ美女を生み出していけばいいだろう。
後、譲れないこだわりとしてしっぽだけは通年でもふもふしているように変更した。
服装に関しては最初は木の実の採取とかをしてもらうつもりだったので、作業着とかを考えていたのだが――
コアさんに却下されてしまった。
「ダンジョンモンスターとしてよばれた時の服装はいわば戦闘服だよ。女性として召喚するならもう少しかわいい感じにしてほしい所だね」と、
なんでも戦闘服や装備に関しては、DPと引き換えで多少時間はかかるが修復できるらしい。
そういう事なら神絵師のデザインを真似たファンタジー和装な妖狐さんになってもらおう。その方が俺の目の保養にもいい。
コアさんから服装の合格点が貰えたので最後に能力を決める。
熊から変換したDPは全部つぎ込んでコアさんに強くなってもらう。
妖狐は基本ステータスの時点で身体能力は俺を上回り、能力として「妖術、幻術」を持っていた。
知識としての魔法と何が違うのかと気になって聞いてみたところ、能力として持っておくと魔力を現実に引きだす時の効率が段違いに良くなるらしい。
簡単に言うと必要魔力が減るという事である。
さらに近接向けの能力として「刀術」をつけてもらおう。
この世界の魔法は実質無詠唱なので、妖術や幻術で惑わしつつ刀で攻める戦闘スタイルを確立してもらうことになる。
能力に刀術を付けたので、装備に打刀をつけてカスタマイズは完了となる。
さぁ、準備は整った! 後は召喚するだけだ!