2.5:俺は元パパラッチ
おれの名前は松木 政治。少し前までしがないパパラッチをしていた男だ。
今は分け合ってとある有名事務所所属の諜報員兼カメラマンをやっている。
今日の仕事は俺の所属している事務所の代名詞と呼ぶべき子役が高校に通うので、それを嗅ぎつけたマスコミや雑誌記者、バカな同業者をチェックするためだ。
俺は人の心理を利用することで、影を薄くしたり、情報を引き出したりする。
それを利用して、最も効率よく監視するとしたら一番いいのは、やはり木の上である。
東京はみどりが少ないというが、それでも木は多く存在する。
そしてそんな木の上は意外と注意が薄い。
一方気づかれたときの違和感は多いが、それを感じさせないための格好と言うのがある。
それこそ顎にひげを伸ばし、ぼさぼさの髪。くたびれたジージャンをはおり、その下の服は少しくたびれてよれよれ。さらに少し色あせたジーパンを履いて顔にソフトハットを乗せるこの格好だ。
自分で言うのはなんだが、自分は渋面だ。
この顔で自分くらいの年の男が気の上で居眠りをする。
まあ、酔っ払いか、浮浪者か、格好つけのどれかでしかない。
どれであっても今の日本人では絡みづらいし、積極的関わろうと思わない人種だ。
まあ、一部の例外もいるが・・・。
また、そう言った人物を演じるために木の上にはまだ人どうりの少ない明け方にセットし、周囲を確認するのだ。
こんな時間でも探すと、いるいる同業者。
まあ、ほとんどがマンションやどこかの屋上にテントと張ったりしているが、カメラのレンズの反射やこの両目視力5.5(曇りメガネ又はコンタクトつけないと目が痛い)にははっきり見えますけどね。
とりあえず、持参したカメラを取り出し。(帽子から)
彼らの顔を賭取って本社のサーバーに送っておく。
とにかくこれで一時休憩。
後はもう少し彼らの対象が登校してくる時間になったら働くことにしようと思い、木の上で仮眠を取り始めるのであった。
※※※
・・・俺は幽霊でも見ているのか?
と、思わず思ってしまうほど意外な人物と遭遇した。
彼は仁。記者の界隈・・・と言うより裏社会ではかなり有名な人物である。
彼は元々日本の旧家の分家の跡取りで、天性のカリスマと特殊な何か、小学生にして博士号をいくつも取る学力を有し、彼の組織した諜報部、武装組織はアメリカの特殊場体と同等。いや、合同訓練が組まれるほどの練度と言われている。
そんな彼は最近、本家で御家騒動があり、分家を潰されて離縁されたと噂されている。
当主には彼の義理の弟が付き、彼の部下を使い瞬く間に本家の権力を手中に収めたに収めたとのうわさだ。
そんな弟を育てたのも兄である彼、仁である。
噂では、仁ではかなわないと思ったかの家の家老はその弟を当主にして、傀儡としようとしたらしいが見事に帰りうちにされたようだ。
かの家は膿を輩出したことで今も着々とその勢力を広げると同時に、何かを探しているという情報もあった。
もしかすると・・・彼なのかもしれない。
と、驚いているうちに俺は木から落ちそうになり、両足で枝をつかんだものの、かなりきつい姿勢だ。
そしてなにより、仁。あいつ、この状況を予測してそのうえで楽しんでやがる。
かつて対立したのが今で恨めしく思える・・・いいから助けて!
※※※
彼との出会いはまた今度として、彼は相変わらずだった。
身内に甘く、敵に厳しい。
受けた仇は一生忘れず、警戒は怠らない。
その人物をよく観察し、弱点は永遠に記憶している。
まるでシャーロック・ホームズだ。
実は彼、一度自分とパパラッチやったが彼の方が情報収集能力が高かった。
・・・まあ、あれは小学6年生と言う幼さを使った空の他ならないが、まるで中身が大人。記憶を持って前世の人物が転生しているのではないかと思ってしまうほどだ。
そうこうしているうちにうちの事務所の看板子役がやってきた。
名前は、井辻 千佳。赤ちゃんの頃からテレビに映り、彼女の短い人生の中でテレビに映らなかった年は無い。
小学4年生でハリウッドデビュー。
彼女は小学6年生のころに初恋をし、それを今でも引きずっている・・・というか、彼を追いかけているらしい。
彼女自身小さなころから大人の世界に身を投じているせいで、大人びており、演技と素が凡人には見分けがつかない領域に達している。
また護身+アクションの為にさまざまの武術を会得しており、気まぐれに出た柔道の世界大会では大会3位である。
俺は当時小学六年生の仁の報復を受けた後、当時、スタントマンなしの映画に出演していた仁に協力と言う名の命令を受けて共に千佳の問題を解決。
彼の口添えにより、彼女の事務所の諜報兼報道対策、カメラマンとしての起用が決まった。
自分のことながら、情けない話だと思う。
小学生にコテンパンにされた挙句、就職を紹介されるなど・・・。
それ以来、自分は仁には頭が上がらないが、馴れ馴れしい態度を取っている。
彼自身、その態度に最初は驚いたものやはり俺のような人物は珍しいのか自分と話すときは少しうれしそうにする。
・・・って、今はどうでもいいか。
俺は仁に脅かされたせいでろくにできていなかった報道陣観察、同業者確認などを急いでする。
すると、千佳がこちらを見ていることに気が付いた。
彼女は仕事柄視線に敏感だ。
それで気が付いたのだと思うが、仁は中々に驚いている。
そりゃあ、そうだろうよ。
やっこさんの思い人・・・『ジン』っていうらしいですからね。
俺がそう言うと仁は俺にメッセージ残していきやがった。
どう聞いても遠回しな拒絶のセリフ。
・・・けどな、彼女にとっては交換の一言入れてはいけないよ。
恋する乙女の脳内変換はおそろしいんだから・・・
そう思っていると電話がかかってくる。
「松木、千佳が登校した。仕事はきちんとしたのでしょうね?それと仁君と話していたわね?何かわかった?」
電話の主は先ほどまで校門にいた千佳だ。
「はい・・・わかってます。ああ、彼も7才天でしたよ。よかったですね。・・・はい。そうだ、お嬢。いいモノ手に入れたので後で送っておきます。・・・え?大丈夫ですよ、絶対喜びますから。それじゃあ、」
俺はそう言って電話を切る。
これ以上は面倒でしかない。
仁は大人びているが、女性をあまり知らない。
・・・いいや、ある種のツンデレ系の女性に対するスキルは高かったな。
けどお嬢は分類するなら、『ヤンデレ』だ。
フフ、覚悟しとくんだな。
俺はそう思いながらいながら音もなく地面に降りて、帰路に着こうと靴を取る。
すると中に、一枚のメモが入っていた。
「・・・はは、おいおい。まったくあいつは」
そう言ってその紙をライターで燃やす。
内容は頭に入っている。
「お仕事増えちゃったじゃん・・・」
そこに書かれていたのは名前と、テレビ局の役職と名前。
そして、メールアドレス。
俺はすぐさまそのメールアドレスに空メールを送る。
数十秒後、一つの画像ファイルとテキストファイルが送られてくる。
そこにあったのは生徒に金を渡し、密偵にした証拠と音声ファイル。他に、ヘリやドローンの受信場所と保有者名。
現地調査ではしにくいことをこうもたやすくやられると呆れた笑いしか出ない。
「さて…きょうも残業かな?」
けれどもそんなこと言いながら俺の心は躍っていた。
「今度は、どんなことに見きこまれるのかな、仁?」
そんなことを言いながら、俺はその場所を後にしていった・・・。