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2:校門にて

店を後にし、玲奈の言葉を思い出す。


『え?・・・ち、違いますよ!彼、幼馴染なんです。昔彼ともう一人男の子を含めてよく遊んでまして。遊ぶって言っても、ほとんど将棋なんですけどね』


 あの言葉に、その幼馴染が自分と気づいていないと僕は考えた。

 それと同時に昔、叡二が玲奈の事が好きだと言っていたことを思い出し、また彼女が出て行く叡二を惜しむように眺めていた姿に、相思相愛であること考えた。

 そして、自分は何かできないかと思ってしまう。


 かつて、ひどくつらい時でもあった幼少時。


 しかし、同時に今この目を最大限に活用する自分へとつながる大切な時間だと思っている。

 まだ家のしがらみも軽く、右目にも慣れてきたころだ。

 今となってはそこにいたはずの自分と言う存在は書類上から抹消され、東郷 仁と言う、偽りの過去を持つ一般人となっている。


 家から追い出せれたが、ここ最近は荷ほどきやバイトなどいろいろと忙しかったのでこうしてゆったりと登校していることに安らぎを感じる。


 小学校の高学年、中学の2年間は海外にいた。


 当時、とある理由ですでにあらゆる博士課程程度は常識の範囲内であった僕は本家の命令でレイナのいるヨーロッパ最大の学校へと留学していた。

 学校ではレイナの婚約者として、彼女のサポートや彼女に見合うだけの箔をつけるために奔走した。

 かなり忙しい毎日だったと思う。


 それでも多くの友人ができ、レイナの手助けができたことは今では良き思い出だ。


 ・・・そういえば、小さいころ無理やり子役やっていた時になった子に向こうであったんだ。しかもスタントマン兼俳優のバイトの撮影所で。

 そう言えばあの子、今どうしてるんだろう?


 ※※※


 しばらく通学路を歩いていると校門の前で妙な人だかりがあるのが見える。

 そして周囲の建物から遠距離でシャッターチャンスを狙う2流カメラマン。

 その中、文屋の中でとある見知った人物を見つけたので、気配を消して近づく。

 その人物は周囲とは違う位置に居り、そこらの素人とは一線を引く本職のパパラッチだ。


 彼がいたのは木の上。


 顎にひげを伸ばし、ぼさぼさの髪。くたびれたジージャンをはおり、その下の服は少しくたびれてよれよれ。さらに少し色あせたジーパンを履いて顔にソフトハットを乗せている。

 靴は脱いでおり、裸足で靴は頭の少し先に靴紐を結んでつるしてある。


 一見、浮浪者又は老け顔のヤクザに見えるその外見はいる場所と相まって人を寄せ付けない。


 僕はそんな彼のいる枝の一つ下まで音無く上ると、彼の耳元でこういった。


「すみませーん。警察なのですが、大丈夫ですか?ちょっと気の上で眠る酔っぱらいのおじさんがいて危なそうという通報を受けたのですが・・・」


 すると、彼は「ああ、すみませんね・・・ちょっと・・・!」と言って顔にかぶせていた帽子を取りこちらを見るなり驚き、そのまま後ろに倒れて僕の視界から姿を消す。


「・・・おいおい、仁さんよ。危ないじゃないか」


 しかし、彼の声は確かにしたからだが地面から10メートル離れているにもかかわらずかなり近いところから聞こえてくるように感じる。


「おいおい、無視するな。こっちみろ、こっち!」


 そういって彼が寝ていたところに視線を移すと・・・器用に枝をつかむ足が見えた。


「こんにちは、足さん。プルプルして大変そうですね。今楽にしてあげましょうか?」


「おい、その楽って枝切り落とすじゃねえだろうな!?おい、その手を手刀にするにやめろ!お前の手刀に切れ味知ってるから!このままだとあたまから落ちる!やめてくれ!?」


「・・・わかりました。では、これで」


「おいおい、ちょっと待て!え?、なんで帰るの!助けてよ!」


「え?」


「え?、じゃねえよ!驚いてんじゃねえ!なあ、俺とお前の仲だろ?」


「・・・そうですね、そうするとやっぱ枝切りましょうか?」


「いや、待て待て。なんでそうなる!?」


「え?だって、あなた僕を一度脅してきましたし・・・」


「そのあと、ものの見事に手下にされましたけどね!」


「と言うか、僕に足だけの友人はいませんし・・・」


「今、誰だかわかっていたよね!?わかっていて脅かしに来たよね!?ていうか、早く助けて!足がしびれ

 てもう力が!」


「そうですか。お、あなたの足元に芋虫が・・・っと、目がかゆいな(ごしごし)」


「え!?待って、とって!って本当に目こすってるし!・・・うう、本当にむずむずして、もう力が・・・あっ!」


 ついに力尽きた彼の足は枝につかまりきれなくなり、真っ逆さまに落ち・・・なかった。


「危ないですよ、松木さん」


「本当に、お前の怒りを買ったことを後悔しているよ・・・」


 彼の足を僕は掴み、彼は宙でぶらぶら揺れながら僕を見てそう言った。

 僕は彼を近くの枝につかまらせてぶら下げてあった靴を渡す。


「しかし、松木さん。あなたが取りに来るということは、大物ですか?」


 僕は彼にそう聞くと彼は意外と言わんばかりの表情を取り、「お前、何も知らないのか?」

 と聞いてくる。


「えっと、・・・なにを?」


「ッははは!こりゃあ、傑作だ。・・・っていうか、そういえばお前。あそこ抜けたらしいな?」


「さすが、バイトの俳優としてであったのに、そこまで調べているんですか」


 僕は最初に呆気にとられたような表情をして彼を誉める。

 しかし、彼は頭を書きながらため息をつく。


「・・・はぁ、おまえなあ。俺を測っただろ?最後に裏で最近有名になったとある会社の新進気鋭の諜報部の部長さん。しかも、あんな大物に合わせられたらお前には向かう気もなくなるよ。おかげでお前さんが俳優、声優、小説家、のアルバイトしているくらいしかつかめなかったよ。ああ、あとあそこの分家トップってことくらいか?」


「十分じゃないですか」


 僕がにこやかにそういうと彼は僕の写真を一枚撮る。


「お前さんのこの笑顔。・・・相変わらず憎いほどさわやかだな」


「目元を苦しているので、口元で感情表現しないといけないのですよ」


「・・・まあ、いいか。それで今日学園に誰が来るのかだったな。まあ、簡単いい言えばハリウッドにも出てる女優っていうか子役?だ」


「なるほど・・・もしかしてニュースにでも?」


「いいや。でも彼女仕事量を半分にして本気で学業に励むみたいなんだよな。・・・ていってもその仕事量半分も日本の有名俳優・女優以上だがな。そこでVR授業と言うわけさ」


「なるほど、それで名前は?」


「名前か・・・あ、ちょうど来たからご尊顔を拝見しようじゃん」


 彼はそう言ってカメラを構える。

 その先にはたくさんの報道陣に囲まれた一台の黒塗りの車。

 僕は髪を上げ、黄金色の右目をよく凝らして、視界を車のドアへとズームさせる。


「なっ!」



「あら?・・・気づかれたんじゃない?」


 車から降りてきた人物は校門をくぐろとしたその瞬間、ぐるりと後ろを向き顔をこっちを凝視している。

 ・・・わかる。彼女には僕らが、いいや、僕が見えている。

 彼女とは顔見知りだ。・・・そして、彼女のすごさはよく知っている。

 その見知った顔に僕は肩をおとした。

 まさか、彼女と同じ学校に通うことになるとは思わなかった。

 唯一の救いは聞くに、VR授業の着く特別クラスであることくらいか?


「松木・・・彼女はなぜ日本に?」


「まあ、表向きは故郷でガス抜き。まあ実態は大好きな人を探してかな?」


「・・・意外だ。と言うかそれは大問題では?」


「まあ、・・・彼女に関しては数年前から片思いしていることは有名だからな。むしろその思いによいて完成した作品の完成度に全世界のファンが彼女の恋に応援モードだ。ちなみに名前は・・・ジンと言うらしいぞ?」


 彼はそう言ってこちらを見てくる。


「へぇー、僕と同じ名前の人か。羨ましい物だな」


「・・・」


「なんだい、その目は?」


 松木は白い目でこちらを見つめ、ため息をつく。


「ちなみに、俺いま彼女を後ろ盾にした情報屋やっているんだ。・・・って、知っているか」


「情報屋やっているのはな。後ろ盾は興味がなかったから・・・な。まあ、報酬が払えるかわからないが覚えておくよ」


「あいかわらず、子供らしくないね」


「ほっといてください。わかってますから・・・」


 僕はそう言って木から降りて校門へと向かってゆく。

 仁を見送った松木の滑ポケットの電話が鳴る。


「はい・・・わかってます。ああ、彼も7才天でしたよ。よかったですね。・・・はい。そうだ、()()。いいモノ手に入れたので後で送っておきます。・・・え?大丈夫ですよ、絶対喜びますから。それじゃあ、」


 そう言って松木は携帯の入っていた胸ポケットから長細いICレコーダーを取り出す。


「・・・まあ、これはある種のメッセージかもしれないな。だがな、お嬢はおそらくいい方のとらえるからな?・・・覚悟しておいた方がいいと思うぞ」


 そこに吹き込まれた彼のセリフに松木はもういない彼に向けて苦笑いするのであった。




 ※※※





 その道中、多くの報道陣とすれ違う。

 どうやら彼女へのインタビューが終わったようで帰っていくようだ。

 未だ少数ではあるがこの学校の生徒にインタビューをしているところもあるようだ。

 僕は周囲の生徒に隠れながらカメラに映らないように学校へと向かう。

 校門入ってすぐの新入生受付で封筒を貰い、一回の多目的室に設置された教材引換所にて教科カリキュラム、部活動の入部と届けなど書類が入った封筒を受け取る。

 そして、僕はある一枚の目当ての書類を見つけ、…苦笑いになる。


 ・・・まあ、7才天となった時に予想はしていた。


 僕は多目的室に行き、教材と引き換えるための書類を提出すると、受付の女性はそれを見てお泥いたように目を見開き、「お名前をお願いします」と言う。

 僕は内心驚いたものの、自分の名前を言う。

 すると彼女は携帯でどこかに連絡を取ると胸元のポケットから鍵を取り出し、デスクの引き出しの鍵を開ける。


 そこにはやわらかそうな底の上に11のくぼみと一枚のカードが入っていた。


「あなたが特別クラス、最後の東郷 仁さんですね。確認取れましたのでこちらをお受け取りください」


 そう言って彼女は僕に最後の薄緑のカードを渡してくる


「そしてさらにこちらが生徒証と7才天専用腕時計。そしてメガネです」


 生徒証は顔写真に学年とクラス、それに学則の乗った簡単な手帳。


 腕時計は携帯と連動する最新機種の改良型。

 そしてメガネはその黒い縁に白で書かれた004の文字。

 ()()()()()()()と言う事だとすぐに分かった。

 僕はそれらの内、時計は腕に。学生書とメガネ、それに最初にもらったカードを内ポケットにしまう。


「ここでの配布物は以上です」


 彼女はそう言って次には入ってきた生徒の相手をする。

 僕は何を問うわけでもなく彼女を一瞥し、そのままその場を後にして教室へと向かうのであった。



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