1.5:初恋再始動
私の名前は高阪 玲奈。
お父さんはこのカフェでマスターをやっていてお母さんは・・・よくわかんない。
海外を飛び回っているようで、よく外国の人から電話が来る。
そのためか、私はすでに日本語、英語のほかに、中国語、ロシア語、ドイツ語の五か国語が使える。
ちなみにお父さんはもっと多くの言語が使える。
この店こじんまりとしているけど、なんだかんだで客足は途絶えないし、海外のお客さんがお父さんの料理目当てで来るんだよね・・・。
そんな事とはさておき、最近新たな常連さんができた。
常連さんと言っても・・・あってまだ1週間だけど。
その人の名前は東郷 仁さん。
・・・実は、私。あの人と幼馴染なんです。
どうやら、彼は忘れているようですけど・・・((´・ω・`)しょぼん)。
私と彼が出会ったのは数十年前。まだ私が小学生に上がったころ。
同じく幼馴染である八龍 叡二君。大の将棋好きで、頭のいい子だった。
ただそのせいか友達が少なく、孤独で寂しそうだった。
私も将棋をお父さんやカフェによく来るおじいちゃん達になっており、叡二君お相手もしていた。
もちろん叡二君は私なんか目に無いくらい強くかった。
でも試合以外で誰かと将棋させることがうれしいようで、そのうち私に将棋の指し方を教えてくれた。
彼はまだ子供で手加減の仕方が苦手だったが、私は記憶力が良く幼いのもあって本気の挿しをぐんぐん吸収していった。
今の私の視野が広く、全体をよくみわたせるのはこの時将棋に出会ったからかもしれない。
そんなある時、叡二君が学校のお友達を連れてカフェにやってきた。
彼の名前は仁君。名字は覚えていないが、叡二君がジン、ジンと呼んでいたので私もジン君と呼んでいた。
彼はいつも自分のことを僕と呼び、少し長い前髪で目元を隠している。
けど、歩き方に、座り方。座る時に少しだけ足を組む癖。
呼吸のタイミング、匂い、耳の形、指紋の形、立ち上がる時に片手をつく癖・・・etc。
些細だけど彼には癖があり、私は一目見たときから彼から目が離せなくてよく観察してしまった。
彼はいろいろと隠し事が多く見られた。
叡二君が言うには彼はthe・平均。
全てに置いて可もなく不可でもない結果を出すらしい。
けど、それが嘘なのはわかる。
どうやら叡二君も同じように思っているようでひどく憤りを感じているようだ。
彼の言葉、言い方、返答の仕方からわかる。ジン君は頭がいいと。
叡二君も頭はいいけど、それは子供としては。
ジン君はおそらく今大人の世界に出ても通用するような・・・知識ではなく、経験による頭の良さ。
知恵の使い方を知っているという意味の頭がいいという意味だ。まあ簡単に言えば要領がいい。
そんな彼は叡二君と将棋を指していた。彼は初めて将棋を指すようで初めはぼろ負けした。
けど、嬉しそうに次の勝負に挑んでいた。
そして一年もしないうちに叡二君と互角に渡り合うようになった。
叡二君は思わに好敵手に、そして将棋のできる友人に心から喜んだ。
そしてわたしが小学校4年生に上がったころ。
「・・・悪いな二人とも、ドイツに転校することになった」
ジン君は急にそう言った。
もちろんその事に私たちは驚き、・・・そして怒った。
叡二君は「絶交だ!」と言って涙を流しながら去ってゆき、私は彼が去ってゆく背中を見ながら私は彼に恋していたことに気づいた。
今まではただ、そばに入れるだけでよかった。
けど、今は私は彼の隣に立ちたいと言った。
その事を電話でお母さんに言うと苦笑いで「がんばりな」と応援してくれた。
私は彼が転校することを私に告げる数日前になぜ意実力を隠すのか聞いた。
彼は困ったような顔をしてなんだ後、何かを決したように私に話してくれた。
思えばその決意こそこの転校の事ではなかったのだろうか?
そうして話してくれた真実に私は喜びを言葉にした。賞賛を送った。可能性を語った。
彼はなぜ意外そうな顔をし、顔を真っ赤にして「ありがとう」と言ってくれた。
その事がうれしくてその日は夢の中でジン君に最後にありがとうと言われる夢をたくさん見た。
そして、その中に彼がその異質さゆえに孤独になっている中私が理解者になってあげる夢を見た。その夢はかなり現実味を帯びていて、正直最後に至るまではかなりつらい夢だった。
故に私は別れの日に決めた。彼の隣に立てるように『今から』頑張ると。
だから私はまた会う彼にこう言った。
「また会おうね、ジン君」
そして、ほっぺにキスをした。
仁君は妹を見るような目で私の頭を撫で、「そうだね、また・・・ね」と言って去って行った。
私は今川上学園に入り、7才天の座をつかみ取った。
そして彼も一つ上として川上学園に入り、同じ7才天としている。
こうして再び会えたのだから・・・私は成長した私を見てほしい。
これは、再び動き始めた初恋。
私は次こそ・・・ジン君の隣に立ち、ともに歩みたい。