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激怒なるもの

前話:「それにねアレスができることはみんなでできる、だから大丈夫」と言われました。

 一瞬、目の前が真っ白になった。

 みんなでできる……ミンナデキル……。


 ……い、言いやがる……言いやがった。

 連携などと言わせもしてくれなかった。およそ追い打ちとしては完璧だ。体勢が崩れた人間に対して、無慈悲に致命の一撃を食らわせてくれた。


「ハハ、ハハハっ……それなら……それなら、ネロとやらと俺のどちらが強いのか試そうじゃないか」

「え?」


「奴と剣を合わせるんだよ。言っておくが記憶喪失だとかって言い訳は通用しないぞ。いまから仲間にするやつなんだ、それを考慮に入れても強くなければ話にならん」


 そう言った直後、俺は部屋の扉を無造作に開け放った。

 頭が熱い、脳が怒りで沸騰しているような感覚だ。


 部屋ではエリアスが男の傍にある椅子に座っており、ドロシーは立ったまま壁にもたれかかっていた。

 ドロシーは俺が部屋に入ると顔を上げてこちらを見た。エリアスは視線だけをこちらにくれた。トリスは俺を追うように後ろから部屋へ入る。


 俺は無言のまま、黒髪の男が寝ているベッド前までズカズカと乱暴な足取りで向かう。


「ネロさん、お気づきになられたようでなによりです」

「……?」


「失礼、アレス・ブラウニーと申します」

「私はコンラッド・ネロだ……なにか?」


「起きがけに失礼を承知で申し上げます。私……いや、俺と戦ってもらいたい」


「なっ……!?」


 俺の発言に反応したのは男ではなく、壁にもたれかかっていたドロシーだった。


「なにを言うておる!」


「おかしな話ではないだろう、トリスは俺とネロさんが入れ替わることによる戦力増強を図ろうとしているんだ。本当にそうなのか試す場は必要だと思うが?」


「しかし、性急すぎぬか」


「そうは思わん、トリスはネロさんをパーティーに入れたい。ネロさんもその申し出に対してやぶさかではない。だが、俺は率直に言って、ネロさんの戦力を疑っている。この俺の疑問を解決する術は、現在交代を迫られている俺とネロさんを比べ合わせるしかない」

 

 トリスは俺とネロという男に交互に顔を向けている。自身の発言がこのような事態を招くとは思ってもいなかったのか。自分がどう行動すべきか決めあぐねている様子だ。


「そりゃ誰の案だ?」

「俺だ」

「……悪かぁない案だな」


 椅子に座して沈黙していたエリアスが口を開いた。それも剣を合わせるという俺の提案に理解を示してくれた発言だ。


「論点は戦力としての強弱だろ、だったらアレスの言うように競い合わせたほうがはっきりする。後衛職からしても強い前衛がいることに反論の余地はない。その方がゴルドーも今後この件に関して変な気を使わなくて済むようになるんじゃないか?」


「それは……」


 エリアスには後で礼を言わねばならないな。慎重派であるドロシーを自身と同じ後衛職という括りにまとめて、事を進めようとしてくれている。後は…。


「で、ネロさんは如何でしょうか?」

「……こちらに同意する必要があるなら、受けよう。その上で処遇の是非を見極めてくれた方が後腐れはない」


「よし決まったな。いつやるんだ? いまからか?」


 エリアスは血の気が多いのか、事を急かそうとする。


「まだ日が暮れて浅い。むやみに衆目に晒すようなことでもないだろう」

「そんじゃ夜半に執り行うとしよう、異論は?」

「「ない」」


 アレスとネロ、2人の声が重なる。


「待て……勝手に話を進めおって……」


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