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Alioth memorial  作者: 星畑ゆすら
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目を覚ます

 …まだ柔らかくて暖かい布団で微睡んでいたい。


 朝、窓から差し込む太陽の光で瞼の裏が少し眩しくて、布団を頭まで被ろうとして、海鳥達の鳴き声に混じって風の音が聞こえてくる。


 風の音が聞こえて来たところでパチッと目が覚めた。


 風の音がいつもより少し音が高めで強い。

 …口笛にも似た音が届く。


 これは前兆だ。年に数回しか訪れない、島と外を繋ぐ道が開く。


 急いで布団から飛び出して部屋の窓を開け少し身を乗り出して空気を確認した。


目の前に広がる海は、波が寄せては風に煽られては、水面が歪にゆれて朝日の光が飛び散っている。その風の強さにボクの髪が攫われる。耳が甲高い風の音を拾い上げる。


「やっぱりだ…間違いなんかじゃない!」


 三階建ての家の1番上にある自分の部屋を出て2階へと駆け下りる。

 台所の簾をばっと捲ると目に入るのはいつも食事をする流木でつくられた大きなテーブル。既にテーブルの上にはサラダを盛り付けた皿、切る前の大きめのパンが乗ったまな板。

 少し奥にはスープの入った鍋を掻き回して朝食の準備をする母さんがいた。


「母さん、おはよう!…前兆だよ、母さん!風の音確かめたんだ!たぶん…後1週間ぐらいで開く!間違いないよ!」

「おはよう。アルネ。わかってる、わかってるてば…ふふっだって、私、あなたより早く起きてるもの。」


 悪戯っ子みたいに微笑む母さんに告げる。


「ボク、17歳になったんだ!旅の準備もしっかりしてるし、外にそろそろ出ていってもいいでしょう?」


 母さんとボクは朝食が置いてある机を挟んで話す。ボクは興奮からか、バンバンと片手は机を叩いていた。


「そうね。アルネは小さい頃から島の外に出たがってあまりにも大騒ぎするもんだから17歳になったらねって約束だったわ。」


その言葉を待っていたとばかりに今度は両手で机を叩いた。


「そう!約束だったんだ!だから、17歳まで家出もせずに待ったんだよ!?…他の子達は17歳より小さくても行けたのに…」


 そう、待った。


 今まで道が開き、大陸に渡れる。幼い子は保護者同伴の元、タノラ鷹(この島に生息する白と茶色の大きな鷹型の魔鳥)に乗るか、海が引き割れて出来た星珊瑚の橋道を通り小島を経由しながら数日かけて大陸を目指す二通りどちらかの方法をとった。


道は20日間、開いているからその間に往復する。


ボクもいこうとしたけれど、

 何故か、頑なに母さんがお許しを出さなかったのだ。


 理由はよく分からないけけど父さんとの約束らしい。当時は…7歳ぐらいだっただろう、周りの子はいけるのにボクだけは行けなかった。


  駄々を捏ねて、大きな声で泣いて、目を真っ赤に晴らして母さんを困らせて。


『じゃあ、約束しましょう。アルネ、貴方が17歳になって道が開く時は旅をしてもいいわ。』

 

  約束を取り付けたんだ。17歳になった旅をしても良いよ。って泣きながら母さんと約束した。


 そして、ボクは17歳なった。


 「ーー、アルネがずっと、ずぅっと」


「旅をする為に、本を呼んで土地の名前、食べ物の知識を付けたり。槍、ナイフとか魔法の訓練に人一倍、熱心だった事も。」


「もちろん、父さんの部屋に忍び込んでは、色んなモノをもちだしたりしてるのもね。」


やっぱりバレてたか…

魔法の訓練は母さんに付けて貰っていたから当たり前なんだけど、父さんの部屋は内緒だったんだけどな。


うん、今更か…上手く忍び込んだつもりだったんだけどな…


母さんの言葉を聞きながら、少し恥ずかしくなって俯く。俯いたボクに凛としてるけど、優しい声がかけられた。


「えぇ、約束を果たしましょう。貴方が旅立つ事を許します。」


顔をあげる。


その声は、ボクが待ち望んだ言葉を告げた。

ようやく、扉の入口、スタートラインに立ったんだ。

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