プロローグ
はじめましてO-村と申します。
この度、初めて小説……というのも恐れ多いですが、投稿させていただきました。誤字脱字、適切な表現文体など未熟な部分は多々あると思います。それでもがんばっていきますので、どうぞよろしくお願いします!
鉄のように重苦しい雨雲から大粒の雨が降り注いでいる。
活気溢れていた町とは思えない光景が、目の前に広がっている。家屋は崩れ、整備されていた橋は跡形もない。町の人達の笑い声をいつも聞いていたであろう噴水の女神像が、雨に打たれ泣いているように見えた。
「オルフェス様、ご無事でなによりです!」
王国の若い兵士達が駆け寄ってくる。
「あぁ、ワシは問題ない……しかしこの町の有り様が悲しくてのぅ」
フードを深く被り直し細目で辺りを見回す。そこにあったはずの日常が全て失われ、焼け焦げた匂いが目を閉じていても現実を知らせてくる。
「民間人の救出、及び後処理は我々にお任せください。オルフェス様は一刻も早く、国王陛下の下へ……」
「……うむ。すまぬがよろしくたのむ」
若い兵士の肩をポンと叩き、ゆっくりと風穴を通している城壁門に向かう。雨脚が強くなり自然と険しい顔になったその時……。
「オギャア……」
この雨の中、到底聞こえるはずのない赤子の泣き声が耳に入った。すぐさま魔力探知を開始し近場を調べる。――が、いっこうに引っかからない。
「一体どこにおるんじゃ?!」
首を傾げ、何気なく見た街路樹の脇に精霊の気配を感じ駆け寄る。
「おじいさんだぁれ?この子の親??」
しっかりとした樹木の下に、木の籠が置かれている。中には生まれて間もない赤子が白い布に覆われ、寝息を立てている。そしてその子を守るように体長20センチ程の女の子が飛んでいた。
「お主は……妖精?いや、しかしこの魔力の性質は……」
「ちがうよーーーっっ!私は四大精霊の風の調律神だよ~」
「――シ、シルフ様じゃと?!」
たしかに見た目は妖精と同等という知識はあった。しかし人間の前には滅多に姿を現さず、世界の均衡を保つ存在が目の前にいるという事態に驚きを隠せないでいた。
「で、おじいさんはこの子の家族??」
「あ、いやワシは通りすがりのじいさんじゃ」
「ほふーん」
ゆっくりと籠から赤子を抱き上げ、雨に濡れないようマントに包み温める。
「シルフ様、安心してください。この子の親を見つけるように、兵士達に預けますゆえ」
赤い頬を撫で、その人差し指を赤子がギュっと握り返す。いつの間にか優しい顔になっている自分がいた。それと同時に自分の存在を肯定してくれている気がして心が和らいだ。
「ときにシルフ様、なぜこの赤子の下へ?」
「さぁ?なんでだろう……わっかんないや」
きょとんとした顔で答えるシルフに、なぜか人間臭さを感じて笑ってしまう。
「では、失礼します」
「あ!アタシも付いてくよぉ~」
どうかこの子の未来が明るい世界でありますように。
そう願いながら止む気配のない雨の中歩き出した。