第4話 温暖化対策
「ねぇ〜ねぇ〜、まーちゃん。地球温暖化って大変な問題だよね?」
「そうだな。」
「やっぱり、個人個人がしっかり自覚して変えていかないといけないんだよ!」
「確かにそうだな。」
「でしょう?まずは自分で出来ることから始めようよ。」
「そうだな。」
「洋服1枚減らすだけで、まだエアコンは使わないで済むんじゃない?」
「Tシャツ1枚しか着ていない俺に、これ以上どうしろと言うんだ?」
「だからさ〜、まーちゃんも私みたいに裸族になろうよ〜。慣れると快適だよ。開放的というか、気持ちまで軽くなって、宙を浮いてる気分になるんだから。」
「嫌だ!宙を浮いてるのは、お前が幽霊だからだろ?」
「ひどい!今まで私をそんな風に見てたのね?うぇ〜ん……」
だって、実際そうだろう?
お前、本当は死んでるんだから!
でも、最近は、お前がただの裸族に思えてきた。
だって、死んだ人にしては、妙に明るくて元気なんだもん。
見ているこっちまで元気になってくる。
「分かったよ。俺も脱げばいいんだろ?」
「うゎ〜い!」
うゎ〜いって子供みたいに、両手を挙げて喜ぶなよ。
お前、最後の日って脇の手入れが甘かっただろ?剃り残しがあるんだよ。
言うと気にするから黙ってるけど…。
それに、その方が何となく面白いからね。
「言っておくけど、お前の目からは、涙なんか一滴も出てないぞ。ウソ泣きだろ?」
「違うもん!死んでから涙が出なくなっただけだもん。本当に泣いてるんだよ〜信じて〜」
「ふーん、そんなものか?」
「そんなものだよ!だから、まーちゃん早く!」
急かされるように、俺はTシャツとズボンを脱ぎ、パンツ1枚になった。
「ねぇ〜、前から思ってたけど、まーちゃんて下着の趣味悪いよね?
その鯉の柄ってどうだろ?何か違和感があるよね?だって鯉ってほど立派じゃないし……この前の金魚の方がぴったりだよね?」
「俺の物をバカにしたな?こいつはこいつなりに頑張ってきたんだ!今まで一生懸命仕事してきたし…。
お前だって、こいつの恩恵を受けてきたんだろ?少しは認めてくれてると思ってたのに、寂しいねー。
俺の男としてのプライドも、今のこいつのように小さくなっちまった。」
「だって、今はただの飾り物じゃない。」
「何を言ってるんだ。こいつだって外に行けば、ちゃんと……」
「ちゃんと何?ちゃんと仕事出来るって言いたいの?
うぇ〜ん……まーちゃん、今、私泣いてるよ…」
「あー、分かった分かった!一々解説しなくていいから。
全部脱ぐよ、脱げばいいんだろ?」
「うゎ〜い!」
子供みたいに、また両手を挙げてる。バカだなぁー、剃り残しがあるのに…。
でも、そんな間抜けな姿も何となく可愛い。
面倒な事と女の涙に弱い俺は、彼女の涙の出ない泣き落としにかかって、ついに裸族になってしまった。
勿論、家の中だけ。
「まーちゃん、最近お腹出てきたね?メタボ?」
「誰のせいだよ!自分が太らないからって、毎日甘い物ばかり食ってるからだろう?もう、体なんか貸さないからな!」
「あれ?よく見たら、そのお腹って結構イケてるよ!格好いいかも?」
「そうか?…ってわけないだろう!」
「フフフ……」
腹筋しよう!
彼女の為に……。
俺の大好きな、あの笑顔の為に……。