第5話:新しい友達ができました
side-アイク-
俺はアンナの言葉を信じて、森の奥に向かっていた。
俺がアンナを抱いて飛ぼう思っていたが、アンナから拒否られてしまった。
記憶がないとはいえ、以前のように拒否られてしまうのは正直悲しい。
世のお父さんはみな、娘から冷たくされてしまうのだろうか。それともうちだけだろうか。
そんなことを考えているうちに
「あそこ!あの大きな狼がいるところ」
どうやら目的地に着いたらしい。そこで目にしたのは大きな狼が2匹いた。
ただの狼なら、気にしなかったが、遠くからみてわかる魔力にこの圧力感じたことがある。
魔人であるクレイドルと会ったときと同じ感覚だ。
つまり
「「災害級!?」」
どうやらクレアも同じことを考えたらしい。つまり俺の見立ては間違っていないのだろう。
これは早く戻って、報告し対策を立てなければと思って声をかけようとしたら
「あの子が助けをもとめている。降りて」
「まてまて、これはやばい、引き返すぞ」
「いいから早く降りる!!時間がない」
そしてアンナ自ら狼達に向かって落ちていった。
おいまて、どれだけ高いと思ってるんだ!
急いで追いつこうとしたが、小柄な方の狼が娘をキャッチした。
食われると一瞬想像したが、もう1匹の傍に連れて行った。
そして大きい方はどうやら傷ついているらしくぐったりしており動かないでいる。
どうやら助けを呼んでいたのは、あの狼らしい。
しかし、離れてもわかるくらいにとても助かるようにはみえない。
俺は娘に近づこうとすると
「ガゥラッァァァァァァァアア--------!」
と小さい方の狼に吠えられた。それだけで凄い圧力で動けなくなり、逃げ出したくなる。
アンナはなぜ平気なんだ!?
更にアンナは驚くことを言った。
「ちびっこ!ちょっと触らせて!魔力流すから体全体に巡らせて。それを頼りに心臓の位置を割り出すから」
ちびっこ!?いやいや、どう考えてもでかいよね!?そしてなんというか態度が男前だ。
しかも言うこと聞いてるし!どゆこと?
これは成り行きを見守るしかないかと思い、クレアの方を見ると目が合った。
同じことを考えてるらしい。
そのままアンナを見守っていると、二体の狼に大量の魔力を流しつづけている結果、限界が近づいていることが分かった。これはやばいと思い、決死の覚悟で向かおうとした瞬間、アンナに変化が起きた。体中から魔力あふれ、右腕が白く濁ったような腕になった。
さらに異変が続く。アンナから魔力の光が消え狼に寄りかかるように倒れたあと、助かりようがないと思っていた狼の傷が癒えており、目を覚ましたのだ。
二匹の狼は感動再会を果たしているのだろう。しかし、どうしたものか悩んでいると向こうから声をかけてきた。
『お前たちは何者だ、この娘の関係者か』
足が震える。でもアンナを取り返さねば。
「俺たちは、アンナの両親だ。アンナをここまで連れてきた」
『そうか、礼を言う。彼女は眠っているだけだ。魔人になってまで我を助けてくれた。もうしばらくすれば目も覚めるだろう。しばらくこのままにしてもよいだろうか?』
「わかった。こっちも応援を呼んでもいいだろうか?流石にあなたたち災害級の魔物がいることを報告しなければならない。危害は決して与えないと誓おう」
『好きにするがいい』
「ありがとう」
そして俺はクレアに念話で部隊に連絡を取ってもらい、応援よんだ。
頼むからそちらの小さい狼さん、威嚇するのをやめてください、怖いです。
そして、応援がくるまで生きた心地がしなかった。
side-アンナ-
もふもふして気持ちいい。まだこのまま寝ていたい気分だ。
そう思って目が覚めつつ寝返りをうつと声が聞こえてきた。
『目が覚めたかい』
「え」
声が聞こえたので目を開けると、大きい方の狼と目があった。
そして、自分が意識が失う前のことを思いだした。
「あ、生きてる!怪我は大丈夫?」
『おかげさまで怪我は治ったよ。助けてくれてありがとう。それから両親がお前を待っているぞ』
そういって顔向けた方向を見ると、両親だけでなく、かなり人がいた。
え、どういうこと。しかも、魔力が一人だけ桁違いの人が混じってる。
その人がこちらに気づいて歩みよってきた
「目が覚めたかい?私はジーク=ロベルトだ。一応クレイドルの王をしているよ」
王様?てことはこの人魔人か!やばい人が出てきた!
「えと、あの、お初にお目にかかります。アンナと申します。よろしくお願いいたします、ジーク様」
頭を思いっきり下げると、
「いやいや、そこまでかしこまらなくていいよ。同じ魔人同士対等に話してくれるとうれしいな」
「魔人?私が?」
すると大きい方の狼が声を挟んできた。
『覚えていないのか?お前は魔人になって、我を助けてくれたんだぞ』
あー、思いだしてきた。そういや、魔人になったんだっけ。
そう思って右腕を見ると白く濁った色ではなく、ちゃんと前のように肌色だった。
あれ、右腕は確か対価として払ったような?
「まぁ、目覚めたばかりだし、記憶が混濁しているのだろう。ところで狼さんのほうはなんてお呼びした方がいいかな?できれば二人とも名前を聞かせてくれると嬉しいんだけど」
ジークさん、普通に話しかけてる。しかもどちらも人のように対等に話してる。
物腰も柔らかいし、とても気さくな人のようだ。
『我らに名前はない。アンナよ。我と妹に名前をつけてくれないか?』
俺がつけるの?しかもちっびこは期待するような眼でみてるし!
「えと、じゃあ、お姉ちゃんはアヤで、妹はアイでどうでしょうか?」
『承知した。我の名前はアヤ、妹の名前はアイだ。』
「アヤにアイだね。なかなかいい名前じゃないか。それでこれからどうするんだい?」
『我らはアンナにお礼がしたい。アンナよ。我らに何を望む?』
これはチャンスだ。今までできなかったものをお願いしよう!!
「私と友達になってください!!」
そして俺は、初めての友達が二人できたのだ。