第2話:魔人とは
side-アンナ-
アンナとして生活を始めてから1週間が経ち退院の日を迎えた。後から鏡で全身を確認したが、母親似のかなりの美人だったことに驚いた。ちなみに胸のサイズはCだった。(服を着替える際に見たから不可抗力)
蒼い髪はサイドで結んでポニーテールしている。
いまだに女性としての振る舞いに悩まされることはあるが、こればかりは仕方ないと割り切っている。
最初の一日目は学園の爆破事件について聞かれたが、まったく覚えてないのですぐに事情聴取から解放された。証言が正しいかを判断するために嘘発見器にはかけられた。てか、どうやって嘘か判断してるのか不明だから、あとで分解..もとい詳しく見せてほしい。
「母さん、退院の用意ができました」
「こっちも荷物をまとめ終わったわ、先生に挨拶して帰りましょうか」
「わかりました。それではまいりましょう」
先生に挨拶を済ませて、病院を出ると記者団に囲まれた。
「魔術学園の爆破の件で何か覚えてますか。」
「生存者の中であなただけ目覚めたみたいですが、他の学友にについてどう思われますか。」
などと皆思い思いの質問をなげかけてくる。なにもこういった事件に関わると記者団に囲まれるというのは日本だけでないらしい。このクレイドルではテレビはないが、新聞は存在しており俺が記憶喪失であることは
既に報じられている。にもかかわらず、こうやって待ち構えているのだから、記者魂は凄いとおもう。
「申し訳ございません。事件を含めて以前の記憶を思い出せないため、なにもお答えできません」
俺は頭を下げ、その場離れようとしたとき、一人の痩せた若い金髪の男性記者が質問してきた。
「魔術学園の爆破は魔人を作るための実験を行ったとは本当ですか?」
この質問を聞いた瞬間、母さんの顔色が変わった。
「そこのあなた、どこでそのような情報を得たのですか?」
「なぜだと思います?それはねー、爆破を起こした犯人のひとりだからさ」
そういって彼はいきなりファイヤーボールを俺に向けて打ってきた。
母さんがすぐさまウォータボールを当てて相殺させた。
記者団は我先にと逃げ出す。逃げながらカメラのシャッターをきっているのだからほんとに記者魂ってすごい。
「わざわざ犯人が会いに来てくれるとは思わなかったわ。大人しく捕まってくれないかしら?」
「わるいね~、俺はそっちのお嬢さんに用があるのさ。といっても伝言があるだけだよ」
「そう、捕まえた後にいくらでも聞いてあげるわ」
母さんの周りに氷でできた蛇が5体出てきて一斉に男を狙う。しかし男は逃げようともしない。
氷の蛇たちは男をすりに抜けた。
「ちっ、幻覚か」
「その通り~、さっきも言ったように俺は戦うために来たわけじゃないからね。さて続きを話してもいいかな。君はもうすぐどんな形であれ、魔人として覚醒するだろう。覚醒した暁にはぜひうちに来てほしい」
「誰がアンナを渡すものですか!」
「お前には言ってない、外野がうるさいから今度は邪魔が入らないときに会おうね~」
男の姿が霧のように消えた。
「アンナ、大丈夫?怪我はない?」
「ありがとう、母さん。母さんが守ってくれたから怪我一つしてないよ」
「そう、よかった。お父さんもきたみたいだし、移動しましょうか。」
そう言って母さんの視線を追うと、長身で赤い短髪でスポーツ万能といった雰囲気をもつイケメンを先頭に数人現れた。
「クレア、アンナ!二人とも大丈夫か?」
「大丈夫よ。アンナは初めて会うわね。あなたのお父さんのアイクよ。」
「初めまして、というのはおかしいですね。お久しぶりです。お父さん」
「本当に記憶がないんだな...無事だったことはうれしいが、少し悲しいな」
「あの失礼ですが、どうして記憶がないって信じられるんですか?何も確認してないですよね?」
「そりゃ簡単だ、俺とクレアを呼び方が違うからな」
「なんと呼んでいたんですか?」
「パパとママだ!!」
なんと18歳になってもパパとママと呼んでいたのか。今までパパとママなんて呼んだことねぇよ。
これは呼び方を変えるべきか?でも人前で話すのはなんか恥ずかしいな
「心の整理がつくまで、父さん、母さんと呼んでいいですか?」
「「もちろんだ(よ)」」
「あなた、それよりも学園爆破の犯人が接触してきたわ。アンナにも話したいことがあるから場所を移しましょう」
「わかった。近くに馬車を停めてあるからいこう。全員!!これより馬車に戻り移動する。襲撃があるかもしれないから気を抜くなよ!」
「「「「はっ」」」」