表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/12

その2

 さて、文芸部というものが、どの高校にも必ずあるかというとそうではない。例えば文化部の王道の1つ、軽音楽部がこの気良にないことからも推測できよう。

 因みに、わたしは高校の願書提出の締切前日にようやく気良に決めた。候補はもう一つあった。

 ”久羅くら高校”。選択の基準は偏差値ではない。


「お前、ケラクラか」


と語感もあって常にセットの固有名詞として扱われる2校は、近隣で”五十歩百歩”の代名詞に使われるくらいで、学力はどっこいどっこいだ。ついでに、”平凡”、の意味でも使われる。

 では、気良高校の制服がかわいいから?

 いいえ。服を替えたところで見栄えがよくなるような顔ではないって自覚あります。

 では、何が気良高校受験の決断を促したのか。

 それは、気良には文芸部があり久羅にはなかったってこと。

 いや、正確に言おう。

 久羅には軽音楽部があるが文芸部はなかった。逆に、気良には軽音楽部は無いが文芸部があった。

 

 ややこしいね。


 そもそもわたしが本を読むようになったきっかけは大好きなとあるロックバンドの存在にある。

 仮に、”EK”、というそのバンドの曲の中に、「散らかすように本を読んだ」という感じの歌があった。そして、EKのヴォーカルは凄まじい読書家だったのだ。


「そっか、読書だよね!」


と、中2だったわたしは文字通り病にかかった。ただ、さすがに、「ナガイカフウって誰?」という状態だったので、種類構わずつらつらと読み重ねた。

 その結果、”急性文学少女”、となったのだ。


 けれども、本当の野望は別にあった。


「女子だけでEKのカバーバンドやろう!」


と、わたしと趣味を同じくする3人の女子に夢を語った。

 最初の内は「いいね!」とみんな乗り気だったが、冷静になってはたと気付いたのだ。


「誰がヴォーカルやるの?」


 EKのヴォーカルを誰かにたとえようとしても、現代の中では見当たらない。過去も含めて無理矢理に挙げるとすれば、ヴェートーベンしか思い浮かばない。

 つまり、よく言えば、”天才”で”純粋”。悪く言えば、”変人”で”偏屈”。

 わたしたちはEKの曲だけでなく、その生き様に憧れていた。

 ステージ上で髪をかきむしり、ある曲の中では客に向かって、「死ね!」とまで怒鳴りつけるヴォーカル。

 病にかかったわたしたちは当然そのスタイルまでカバーするつもりだったが、一応は女子、である。


「ごめん、無理・・・」


全員諦め、軽音楽部の無い高校にめいめい願書を出した。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ