モテ期到来!?
私の両手を握ってきたのは、ニコニコと笑顔を浮かべ私と桐林の間に割り込んできた榊原だったのだ。
「え?」
「それにしても良かった~!僕、女の子が好きな筈だったのに、何で男の響君がずっと気になるんだろうと思っていたんだよね~」
「誠・・・先輩?」
「でも、詩音ちゃんが響君と入れ替わったぐらいからかな?何故だか、全く響君が気にならなくなったんだよね~!あ!べつに今の響君が嫌いとかじゃ無いから安心して良いよ!」
「大丈夫、分かってますよ」
榊原のフォローに響は笑顔で応える。
「・・・今の響君、凄く察しが良い子だから助かるな~。それに、性格的にもなんだか気が合いそうで友達になれそうだ~!・・・あ!話逸れてごめんね!それでね、詩音ちゃんが復学して僕が初めてその姿を見た時、前の響君・・・いや、それ以上に君にドキドキしたんだ~!」
「・・・はぁ」
「・・・やっぱり詩音ちゃんには、ストレートに言わないと分からないか~」
榊原が何を言いたいのかさっぱり分からず、気の抜けた返事を返したら、榊原はそんな私を見て苦笑を浮かべたのだ。
「ハッキリ言うね。僕は・・・詩音ちゃんが好きなんだ」
「・・・・・・へっ?・・・え~と、その好きって・・・」
「勿論友達としての好きでは無く、愛しいと言う意味の好きね!だから・・・僕の彼女になってくれないかな?」
「・・・っ!」
急に榊原が真剣な表情になりそう告げてきたので、私は思わずドキッと心臓が跳ねた。
そしてその榊原の真剣な眼差しに、私は目を反らす事が出来ないでいると、突然私の横髪が一房浮き上がる。
私はそれに驚き、その浮き上がった髪の方に視線を向けると、いつの間に来ていたのか桐林が私の左斜め前に立ち、私の髪を一房片手で持って指でその髪の感触を確かめていた。
「ゆ、豊先輩!?」
「・・・誠に先を越されてしまったが、俺も自分の気持ちを伝えよう」
「え?」
「・・・俺も詩音さん、君の事が好きだ」
「え?ええ!!じょ、冗談ですよね!?」
「・・・俺が冗談言うような男に見えるか?」
「・・・見えません」
「俺も君が、響君の振りをしていた時から気にはなっていたのだが、君達の入れ替わりに気付いたと同時に君への思いにも気が付いた。・・・あの温泉での事は、勿論責任を取るつもりだ。だから・・・俺と付き合って欲しい」
「せ、責任って!何も無かった・・・っ!!」
私が全部を言い切る前に、桐林は真剣な眼差しを私に向けたまま持っていた私の髪に軽くキスしてきたのだ。
その仕草を目の当たりにして、私は続きの言葉が出なくなってしまった。
するとそんな私の右肩に大きな手で乗せられる。
私は凄く嫌な予感を感じながらゆっくり右に顔を向けると、そこには爽やかな笑顔で私の右肩に手を置いている藤堂がいたのだ。
「よし!俺もこの流れで言うよ!詩音さん・・・俺、君の事が好きなんだ!」
「け、健司先輩まで!?」
「俺、詩音さんの強い所や優しい所とか、響の振りをしていた時から気に入っていたんだ。きっと詩音さんなら、俺の両親も気に入ると思うし健斗も詩音さんに懐いているから・・・俺の嫁にピッタリなんだよ!」
「よ、嫁ーーー!?」
「まあ、まだお互い高校生だから結婚までは早いとしても、婚約はしておいても良いと思うんだ。だから、俺の婚約者になって欲しい」
「ちょ!話が飛躍し過ぎ!!」
藤堂が爽やかな笑顔をしながらその瞳が真剣だった事に、私は激しく動揺してしまう。
すると急に私の腰に手が回り、誰かがぎゅっと抱きついてきた。
今度は誰だとうんざりしながら左を向くと、そこには微笑みを浮かべたまま、私を熱い眼差しで見つめてくる高円寺が立っていたのだ。
「・・・やっと、この気持ちを伝える事が出来る。私はずっと響君への思いに戸惑っていたのだが、その気になっていた響君が詩音さんだったと分かり、漸く自分の気持ちがハッキリしたんだ」
「こ、高円寺先輩・・・」
「詩音さん・・・君が好きだ」
「・・・っ!!」
高円寺のその真剣な告白に、私は一気に顔へ熱が集り心臓が痛いほど早鐘を打ち始めた。
「私の恋人に、なって貰えないだろうか?」
「っっ!!」
その高円寺の真剣な眼差しに、私の動悸はどんどん早くなっていく。
しかしその時、私の首横から両腕が伸びてきて、私をぎゅっと後ろから抱きしめてくる人物がいたのだ。
「詩音は誰にも渡さない!」
「カ、カル!?」
頭上から聞こえてきたカルの声に、私は驚いて上を見上げた。
すると私を後ろから抱きしめているカルが、眉間に皺を寄せながら四人を威嚇するように睨み付けていたのだ。
しかし私の視線に気が付いたカルは、私を抱きしめたままとても真剣な表情になって私を見つめてくる。
そのいつもと違う様子に、何故か心臓がさらにドキドキしてしまう。
「詩音・・・いい加減、オレの気持ちに気が付いて欲しい」
「カル?」
「オレ、昔からずっと言い続けているだろ?・・・詩音が好きだって」
「え?でもそれは、友達としてでしょ?」
「違う!!本当に心から詩音の事が好きなんだ!・・・愛しているんだ!!」
「あ、愛してって・・・」
「オレは本気だよ!・・・本当は、詩音が気が付いてくれるまで待つつもりだったけど・・・そんな事してたら、詩音が他の誰かに取られてしまうと思ったんだ!だからもう、オレは遠慮しない事に決めた!」
「え?え?カル?」
「詩音・・・オレの思いを受け入れて!!」
そう真剣に言ってくるカルに、私は戸惑ってしまった。
私はカルから視線を外し、自分の回りの状況を確認して激しく動揺する。
な、何でこんな事になってるのーーーー!!!
そう心の中で叫ぶがこの現状が変わる訳でも無く、正直泣きたくなってきた。
そしてこの五人から、お互いに火花が散っているような感じがひしひしと伝わってくるのだ。
「あ~お互い牽制しあってる所すみませんが、多分恋敵はそのメンバーだけじゃ無いと思いますよ?」
突然遠巻きに三浦と一緒に私の状況を見ていた響が、そんな事を言い出してくる。
「響君・・・それはどう言う事かな?」
響の発言に、高円寺が怪訝な表情で響を見る。
チラリと他の四人を見ると、四人共高円寺と同じように怪訝な表情で響の方に顔を向けていた。ただし、私の体から手は離さずに・・・。
離せ!!
「・・・お母様からの情報なんですけど、どうも詩音が復学した辺りから、詩音に沢山のお見合いの申し込みが来てるらしいんです」
「え!?私聞いてないよ!?」
「う~ん、どうもお父様が握り潰してるらしいよ」
「お父様が!?」
「うん。あ、ちなみに多分今回の学園祭での詩音を見て、さらに増えてると思うけどね」
そう言って楽しそうにしている響に、私は頬を引きつらせながら目を据わらせていたのだった。
しかしその響の言葉を聞いた五人が、私を掴んでいる手に力を込めてきたのだ。
「い、いい加減に離して下さい!!」
「「「「「嫌だ!!」」」」」
・・・こんな時だけ息ピッタリにならないでよ!・・・仕方がない。
そう心の中でうんざりしながら、私は大きく一度ため息を吐く。
「・・・ちょっと痛いかもしれませんが、文句は受け付けませんので!!」
そう私が言うな否や、目の前にいる榊原の脚を蹴りあげる。
「っ!!」
榊原は苦悶の表情で呻き、私の両手を握っていた手が緩むとその隙を見逃さす、サッと榊原の手から自分の手を解放する。
そしてその勢いのまま、私の髪を掴んでいる桐林の手を強く叩いて払い除け、その手から髪の毛を離させた。
そうして間髪入れず、右隣と後ろにいる藤堂とカルに肘鉄を食らわせてその手を離させ、最後に左隣にいる高円寺の脇腹に拳を撃ち込み、痛みで腰に回っていた手の力が緩んだ隙にその拘束から逃げ出したのだ。
私は響の隣まで駆け込むと、チラリと五人の様子を伺い見る。
そしてある程度は予想していたが、五人共私が当てた部分を押さえ痛みに呻いていた。
さすがに少しやり過ぎたかと思っていると、隣にいる響が突然腹を抱え大声で笑いだしたのだ。
「あはははは!さ、さすが詩音!愛の告白をしてきた相手に対してあんな事が出来るなんて!っ・・・お、お腹痛い!!」
「あ、愛の告白って!」
響の言葉に先程の皆の言葉が甦り、私は一気に顔が熱くなる。
「さすがに、鈍感な詩音でも分かったよ・・・っ!!」
「うるさい響!!」
私は面白がりながら言ってくる響の脇腹に、強烈な一撃を食らわすと、痛みでうずくまる響を無視し急いで教室の入口に向かう。
その途中三浦が、呆れた表情で私を見ている事に気が付いたが、私は敢えて気が付かない振りをしたのだ。
そうして扉に手を掛け開け放つと、教室を出る前に顔だけ皆の方に向ける。
「私・・・これで失礼します!さようなら!!」
それだけ言い放つと、私は教室から逃げるように去って行ったのだ。
本当はあんな告白を受け、何かしらの返事をしないといけないと頭では分かっているのだが、こんな経験初めてなのでどうすれば良いのか分からなくなってた私は、とりあえずあの場から逃げ出す事を優先したのだった。
◆◆◆◆◆
「・・・っう~!相変わらず詩音のパンチはよく効くな~」
「・・・響君、大丈夫?」
「うん。いつもの事だから平気だよ。三浦君、心配してくれてありがとうね」
響は詩音に殴られた脇腹を押さえながら、心配そうに近付いてきた三浦に苦笑いを溢す。
そして次に響は、詩音の攻撃による痛みはもう治まっているみたいだが、お互いを牽制して睨み合っている高円寺達の方に顔を向けた。
「・・・先輩方・・・僕が言うのも何ですが、あんな行動をしてくる詩音で・・・本当に良いんですか?」
「「「「「むしろあれが良い!!!」」」」」
響の問い掛けに、五人は全く一緒のタイミングで同じ言葉を発し、再びお互いを睨み付ける。
「あははは・・・っててて!」
「響君・・・」
高円寺達の様子を見て、また痛がりながら笑いだした響を、三浦は呆れた表情で見ていたのだ。
しかし響は、込み上げてくる笑いと脇腹の痛みに耐えながら、こんな面白い状況は後でお母様に報告してあげようと心の中で思っていたのだった。
やっと・・・恋愛方面に話が書ける!




