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身代わり男装令嬢の憂鬱  作者: 蒼月
高校一年生編
6/110

生徒会メンバーと私

 あまりの声の大きさに顔をしかめ思わず手で耳を塞ぐ。

 そして、その黄色い声の原因となった高円寺を伺い見ると、まだニコニコと微笑んだまま私を見ていたのだ。


・・・一体何なんだ?


 私はこの迷惑きわまりないこの状況に、険しい表情で見返しつつ耳から手を離す。


「・・・確かにこれは凄いな。雅也の微笑みを間近で見ても全く動じないとは。俺でさえ最初の頃は動揺してたぞ」

「豊・・・だから言っただろ。こんな子初めて見たんだ」

「確かに凄い!僕も雅也と初めて会った時は一瞬雅也に見とれたもん!」

「ああ俺もだ。まさか俺が男に見惚れる事があるなんて、あの時まで思いもよらなかったからな~」

「・・・正直あまり男からそう言われても、嬉しく無いんだけど・・・」

「雅也がその顔で生まれたのが悪い」

「私の顔が悪いって・・・豊、それはさすがにどうにもならないからさ」


 何故かまた私の目の前で言い合いを始めてしまった四人に、どうしようかと戸惑っていたその時、突然開いてた窓から突風が教室の中に吹き込んできたのだ。

 春一番の強い風が教室に吹き込んだ事で机の上の物は床に落ち、女子は小さな悲鳴を上げながら髪やスカートを必死に押さえていた。


「うわぁ!」


 私も窓際だった事で直風を受け、舞う髪の毛と持っている本が飛ばないように押さえたのだった。

 漸く風が収まりホッと息を吐いて前に立っている四人を見上げると、そんな突風があったのが嘘のように特にどこも乱れず平然と立っていたのだ。その姿にある意味さすがだと感心してしまった。


「凄い風だったね・・・ああ、早崎君。頭の上に舞い込んできた葉っぱが乗ってるよ」

「え?」


 高円寺の言葉に、私は慌てて頭の上を触ったが良くわからなかった。


「そのままじっとして。私が取ってあげるよ」


 そう言って高円寺は私の頭に手を伸ばしてくる。

 私はそれを素直に受け入れ大人しくしていたのだが、辺りからため息がいくつか聞こえてきたのでチラリと横目で周りを見ると、女子も男子もうっとりした表情でこちらを見ていたのだ。


「ああ、まるで絵画のようですわ・・・」


 その中の一人の女子が、ぽつりと呟いたのが聞こえてきたのだが、何故これがそんな風に見えるのか全く理解できなかった。


「はい。取れたよ」


 そんな周りの様子を気にしている内に、高円寺が頭から葉っぱを取ってくれていたのだ。

 葉っぱを持って微笑んでいる高円寺に、私は感謝の気持ちを込めて笑顔でお礼を言った。


「ありがとうございます!」

「「「「・・・っ!!」」」」


 笑顔でお礼を言ったその瞬間、一瞬にして教室中がシーンと静まり返る。

 前の四人は何故か驚愕に目を見開いてほんのり頬を染めて固まり、周りを見ると他の生徒も顔を赤らめてこちらを見たまま固まっていたのだった。


・・・よ、よく分からないけど、今この状況で一つだけハッキリしている事がある・・・さすがにこれは目立ち過ぎだーーーーー!!!


 それを実感したと同時に勢い良く席を立ち、持っていた本を脇に抱えて四人を見る。


「すみません先輩方!僕この本、図書館に返しに行かないといけなかったのでこれで失礼します!」

「あ!早崎君ちょっとま・・・」


 私の声にいち早く我に返った高円寺が、引き留めようと声を掛けてきていたが、それを無視し脱兎の如く教室から出ていったのであった。



     ◆◆◆◆◆


 早崎が逃げ出した事で教室に取り残されてしまった四人は、それぞれ我に返りお互いを見る。そして、まず最初に桐林が声を出した。


「・・・なんなのだ、あの笑顔の破壊力は!」

「僕も噂で笑顔が凄いと聞いてたけど・・・実際目にすると本当に凄いね!」

「まさか雅也に見慣れていた俺達を魅了する者が存在するとは・・・」

「確かに健司の言うと通り、雅也以上の笑顔の持ち主だった」

「豊の意見に僕同意!だって雅也本人もあの笑顔に魅了されてたよね?」

「・・・まあね。本当にあんな子初めてだ。出来ればちゃんと話がしたかったな」

「ああ、俺もそれは思った」

「僕も!」

「・・・俺も少しは話をしても言いと思った」

「豊、素直じゃ無いな~」

「黙れ!」


 そう言いながら、四人は早崎が出ていった方をじっと見つめていたのであった。



     ◆◆◆◆◆


 あの生徒会メンバーが教室に来た次の日から、私の目立たない事をモットーにした学園生活が崩されていったのだ。



 ある時私が移動教室で一人廊下を歩いていると、ひょっこり廊下の角から榊原が現れ声を掛けてきた。


「あ!響君!今度僕の部屋に遊びに来ない?僕の家から沢山サンプルの服送られて来たからさ~。きっと響君に良く似合うよ!」

「・・・いえ、結構です」

「え~遠慮しなくても」

「遠慮では無いです。では失礼します!」


 私はキッパリと断り、そそくさと榊原から離れていったのだ。



 別のある日には、私が中庭のベンチで座って本を読んでいた時藤堂が剣道着姿で現れた。


「おう!早崎!こんな所で本ばかり読まず、俺と剣道の稽古してみないか?」

「・・・剣道した事無いのでお断りします」

「なら俺が一から教えてやるよ!」

「興味が無いので結構です」


 そう言って私はパタリと読んでいた本を閉じ、すくっと立ち上がって校舎の中に入っていたのだ。



 そして今度は放課後寮に帰ろうと廊下を歩いている時、後ろから桐林が声を掛けてきたので振り返った。


「ああ、早崎君。この後俺は時間があるからなんだったら勉強を見てやろうか?」

「・・・いえ、自室で一人でやります」

「しかし君一人でやっている限りは・・・多分これ以上順位上がらないぞ?」

「・・・僕は今の順位で満足しているので大丈夫です」


 わざとその順位でいるので教えて貰う必要は無いと思い、まだ何か言いたそうな桐林をその場に残して私は寮に帰っていったのだ。



 さらに別の日、昼飯を食べるため教室を出て学園内のカフェテラスに向かっていると、廊下の壁に背中を付けて寄り掛かっていた高円寺が私を見付けて微笑んできた。


「やあ、早崎君。今から昼食かい?良かったら私と一緒に食べないか?」

「・・・僕、ご飯は一人でゆっくり食べたいので遠慮します」

「一人でなんて・・・二人で食べた方が楽しいよ?」

「いや、味わって食べたいので一人が良いです」


 そう言って高円寺の横をすり抜け、カフェテラスに向かっていったのだ。



 こんな事が連日続き私はどんどんストレスを溜めていた。

 私は何が切っ掛けで女とバレるか分からないので、極力目立たないよう心掛けているのに、ただでさえ存在自体が他の人より目立つ生徒会メンバーに近くを彷徨かれ、求めてないのに目立ってしまっているこの状況に正直うんざりしていたのだ。


一体あの人達は何がしたいんだ!生徒会は暇なのか!?仕事しろ!仕事!!!


 そう心の中で叫びながら寮への道を歩いている。しかしそこでふと足を止めある方向を見る。


・・・よし!今日はあそこ行こう!!


 私はそう思い立つと寮への道を外れ、ある場所に向かって歩き出したのだった。

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