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身代わり男装令嬢の憂鬱  作者: 蒼月
高校一年生編
50/110

生徒会長との対決

 榊原との対決から数日経ったある日、私は高円寺から呼び出しを受け、朝のHR前に生徒会室に立ち寄った。


「失礼します」

「早崎君おはよう」

「あ、高円寺先輩おはようございます」


 生徒会室に入ると、高円寺が爽やかな笑顔で朝の挨拶をしてきたのだ。


「それにしても、こんな朝早くに呼び出しと言う事は・・・もしかして、これから対決ですか?」

「ああその通りだよ。ただそれを説明する前に、まずこれを渡しておこう」


 そう言って高円寺は、口を紐で閉められるシンプルな布の袋を手渡してきた。

 私はそれを不思議に思いながら受け取り、袋の中を覗いて見たが特に何も入っていなかったのだ。


「高円寺先輩・・・これは一体何ですか?」

「それは、これから始める対決に使う物だよ」

「これを対決に?」

「その使い方は・・・ああ、豊お帰り」


 高円寺は私との会話を中断し、入口から入ってきた桐林に声を掛ける。

 私もその声につられて入口の方を見ると、桐林に続いて他の生徒会メンバーもゾロゾロと生徒会室に入ってきたのだ。


「豊、準備はどう?」

「全て問題無く終わらせてきたぞ」

「そうか、ありがとう」


 そう高円寺と桐林が意味ありげに話しているが、私にはさっぱり意味が分からず困惑しながら二人を見る。


「あ、あの~」

「ああ早崎君、話の途中でごめんね。豊達には、これから始める対決の準備をお願いしてたんだ」

「はぁそうなんですか・・・それで、結局その対決って一体何をするんですか?」

「それはね・・・これから私と早崎君で、学園内の生徒からある物を貰っていく対決をするんだよ」

「ある物?」

「・・・それはこれだ」


 高円寺の説明に益々困惑し首を捻って尋ね返すと、唐突に桐林が私の前に立って胸元を指し示してきたのだ。

 その桐林が示している胸元をよく見てみると、そこには綺麗な赤いガラス玉の付いた小さな金色のピンズが付いている事に気が付いた。

 そこでふと他の生徒会メンバーの胸元も見てみると、皆同じ物を付けていたのだ。

 そして私はもう一度高円寺の方を見ると、高円寺の胸元にはそのピンズは付いていない事を確認する。


「・・・あのピンズを、皆から貰っていくと言う事ですか?」

「そうだよ。ちなみに他の生徒達には、この後のHRで先生から配られる事になっているんだ」

「そ、そうですか・・・しかし、私達の対決に他の生徒を巻き込むのは・・・」

「ああその心配なら問題無いよ。事前調査で生徒達からこの対決に協力して貰えるか確認し、早崎君を除いた全生徒から了承を得ているからさ。さらに対決内容を説明したら、皆凄く楽しそうにやる気を見せてくれたよ」

「・・・・・一体いつのまに」


 私は呆れた表情で高円寺に聞いたのだが、結局高円寺は楽しそうな笑顔を浮かべるだけで何も教えてくれなかったのだった。



「では詳しく対決の説明をするよ。まず対決時間は、今から放課後まで。ただし、授業中は除外とする。なので基本的にピンズ集めは、休み時間や昼休み中に各自行う事となるんだ。そしてその集めたピンズは、さっき渡したこの袋に入れていき制限時間の放課後に再びこの生徒会室に集まって、そこでピンズの数を数え最終的に多い方が勝利と言う事になる」

「・・・・」

「そして勿論そのピンズ集めは、自分でそれぞれの生徒と交渉し譲って貰う事になる。だからもし他の人に頼んで、貰ってきて貰った場合その分は無効だ。ましてや無理矢理奪ったりした場合は、即負けとなるので気を付けて欲しい」

「・・・さすがにそんな事しません!」

「まあ早崎君は、絶対そんな事しないのは分かっているが、一応決めておいた方が良いと思ったからだよ」

「そうなんですか・・・分かりました。とりあえず大体のルール分かりましたが、今から始めると言う事は朝のHRが始まるまでは、豊先輩達のピンズしか今は無いって事ですよね?なら豊先輩達のピンズは、今貰っても問題無いって認識で良いですか?」

「ああそれで合ってるよ」

「よしそれなら!・・・豊先輩!!」


 私はそう意気込み、桐林の方に向き直る。


「そのピンズ・・・」

「雅也、ほら受け取れ」

「ありがとう」

「ああ!!」


 私が最後まで言う前に、桐林が自らピンズを取り外し高円寺に手渡したのだ。


「ちょっ!豊先輩!!」

「何だ早崎君?」

「何だじゃ無いですよ!僕が先に、お願いしようとしてたんですけど!!」

「だがこのピンズをどちらに渡すかは、我々側の判断なんだぞ?」

「うっ!確かに・・・」


 桐林の言葉に渋々納得した私は、気を取り直して榊原に向き直る。


「誠先・・・」

「雅也~はい、上げる~!」

「くっ!なら、藤堂先輩!」

「ほれ、雅也やるよ」

「っ!日下部君!駒井君!」

「「高円寺先輩!どうぞ受け取って下さい!!」」


 榊原や藤堂も駄目だった為、日下部と駒井に声を掛けるが二人共揃って高円寺にピンズを渡したのだ。


「な、ならば!・・・委員長!!委員長なら僕にくれるよね?」

「早崎君・・・ごめんね。僕、やっぱり早崎君には生徒会へ入って貰いたいから・・・高円寺先輩どうぞ」

「そんな~!委員長・・・」


 最後の望みであった委員長からも、ピンズを得る事が出来なかったのだった。



 結局高円寺と五個差でスタートしたこの対決、確かに朝のHRで先生が私以外の生徒にピンズを配り、皆ワクワクした顔で胸元にピンズを付けていたのだ。

 早速HRが終わった後、授業が始まるまでの短い時間だが私は教室にいたクラスメイトへ声を掛けた。

 結果・・・数個は貰う事が出来たのだが、ほとんどが委員長達と同じ理由で、私に生徒会に入って欲しいから渡せないと断られてしまったのだ。


な、何故皆私を生徒会に入れたがるのーーー!?


 私は皆のその気持ちが理解出来ず、頭を抱え席に座りながら心の中で唸り声を上げる。


これはさすがに不味いな・・・一体どうしよう。


「・・・君」

「う~ん」

「・・・崎君」

「このままでは・・・」

「・・・・・・早崎君!!」

「へっ?あ!はい!!」


 大きな声で名前を呼ばれ、私は今授業中だった事を思い出しさらに私を呼んだのが先生だと気が付き、急いで返事をして席を立った。


「早崎君・・・さっきから、何度も呼んでいたのだが?」

「す、すみません」

「まあ、今日は一日落ち着かない気持ちは分かるが、授業中は集中するように!」

「・・・はい」


 しかし私はやはり勝負の事が気になって、先生の注意もほとんど上の空で聞いていたのだ。


「・・・はぁ~では気持ちを引き締めて貰う為に・・・この問題解いてみなさい」


 そう言って先生は、黒板にささっと数式をチョークで書き私に解くよう要求してくる。

 私はその言葉に無意識に反応し、ボーと黒板の数式を見つめた。


「え~と、答えは・・・」


 その数式を頭の中で瞬時に解き、無意識のままその出た答えを言ったのだ。


「せ、正解だ・・・座って宜しい。・・・しかしこれは、超高学力の大学で出るとても難しい問題だったのだがな・・・」


 私は先生の許しが出た事で着席したのだが、その時先生が何かブツブツ言ってた事には気が付いていなかったのだった。



 そうして私は休み時間になる毎に、各教室を廻ってピンズ集めに奮闘したのだが、成果はあまり良いとは言えなかったのだ。

 さらに時間が経つ程に、ピンズを胸元に付けている人が少なくなっている。

 それはつまり、高円寺が先にどんどん手に入れている事を意味していた。


ヤ、ヤバい!本当にマジでヤバい!!


 刻々と放課後に近付いていっている事に、内心酷く焦りつつ昼食を手早く終わらせ、この昼休み中になんとか多く集めようと構内を駆け回る。

 すると行く手に見覚えのある後ろ姿を見付け、私は急いでその人物に駆け寄った。


「明石君~!!」


 明石は突然呼ばれた事に驚いたのか、肩をビクッと震わせゆっくりとこちらに振り向く。


「は、早崎・・・」

「あ!まだピンズ付いてるね!良かった~!」

「・・・ああそう言えば、今このピンズで対決してるんだったな」

「そうなんだよ・・・でも、なかなか集まらなくて困っているんだ」

「なんか大変そうだな・・・しかし早崎、お前俺の事覚えててくれたんだな」

「へっ?何言ってるんだよ、そんなの当たり前に決まってるだろ?それに明石君、あれから凄く勉強頑張っているみたいだし、試験の順位も常に上位にいるの知ってるよ?本当に凄いね!」

「そ、そうか・・・早崎は、俺の事気にしてくれていたのか・・・」


 何故か明石は、ニヤニヤ嬉しそうに照れ始めてしまった。


・・・私が順位知ってるだけで、どうしてそんなに嬉しそうなんだろう?


 明石のその態度に私は困惑していたのだが、すぐにハッとし声を掛けた本来の目的を思い出したのだ。


「そんな事よりも明石君!お願いだ!そのピンズ僕にくれないか?」

「そんな事って・・・ま、まあべつに良いけどさ・・・え~と、このピンズが欲しいんだっけ?」

「うん!そう!!お願い!!!」


 明石は何故か、一瞬凄くショックを受けた顔をしたがすぐに気を取り直し、胸元のピンズを外して手に持った。

 そして、手の平に乗せたピンズをじっと見つめたかと思ったら、おもむろに私の方へ差し出してきたのだ。


「ほら、やるよ」

「明石君!ありがとう!!」


 私は嬉しさのあまり、明石に笑顔を向けながらピンズを持った手をギュット両手で包み込むように握りしめた。


「・・・っっ!!」

「本当にありがとうね!!」


 ブンブンと感謝を込め、握った手を上下に振る事に一生懸命になり、明石が顔を真っ赤にさせて硬直している事など気が付いていなかったのだ。

 そうして明石から受け取ったピンズを、ポケットに入れておいた袋の中に入れる。


「は、早崎・・・あ、あのさ・・・良かったらこの後・・・二人で図書館に・・・」

「あ!松原さん!足立さん!菊地さん!ちょっと待ってーーー!・・・ごめん、明石君もう僕行くね!本当に本当にありがとうね!!」

「え?ちょっ早崎!!」


 硬直から解けた明石が、小さな声で何か言っていたようだったが、明石の後ろの方に松原達が歩いている姿を発見し、私はその三人の下に向かう為もう一度明石にお礼を言ってその場を後にしたのだ。

 ただ去り際に明石の酷く戸惑った声が聞こえたが、今はそれ所では無かったので再び振り向く事はしなかったのだった。

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