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身代わり男装令嬢の憂鬱  作者: 蒼月
高校一年生編
38/110

クリスマスパーティー

 私は息を切らせながら控えの教室に駆け込んだ。


「早崎君!?そんなに慌ててどうかしたの?」


 教室の中で作業していた委員長が、私のあまりの様子に驚きそして心配そうに側に寄ってくる。


「べ、べつに何でも無いよ!」

「でも、只事じゃ無い様子だけど?」

「ほ、本当に何でも無いから!!それよりも僕、委員長にお願いがあるんだ!」

「お願い?」

「うん!悪いんだけど、この後の仕事は全部王子衣装でやらせてくれないかな?」

「え?だけど、姫の方も人気があるから・・・」

「頼むよ!今日だけで良いからさ!お願い!!」

「・・・分かったよ。良いよ王子様で。まあ、休憩時間に何があったのか知らないけど、男なのに女の格好無理矢理させているこっちも悪いからね。ただ悪いけど、明日はどうしても最後の追い込みしたいから、少しでも姫の格好はして貰う事になるけど良いかな?」

「それで良いよ!ありがとう委員長!!」

「それじゃ時間無いから、急いで王子衣装に着替えてきてくれるかな?」

「ああそうだね!急ぐよ!」


 私はそう言って、またドレスの裾を上げ今度は衣装が置かれている教室に駆け出したのだった。



 王子衣装に着替え身支度を整えた後、私は姿見の鏡の前に立ち自分の姿をじっと見る。

 男の姿に戻った事でスッと気持ちが落ち着き、冷静に考える事が出来るようになった。


・・・男の衣装で落ち着くって言うのも変な感じだけど、男の格好をすれば私は今男の振りをしているんだ!としっかり認識出来るよ!しかし・・・改めてさっきまでの私の様子を考えると・・・やっぱり女の格好をしていたせいで気が緩み、変な高揚感があったからあんなに動悸が激しく酷く動揺しちゃってたんだろうな~。だって今の格好で、さっきまでの姫の格好の自分と置き換えて想像してみると・・・やっぱり無い!!


 男の格好の自分が高円寺に手を引いて貰ったり、後ろから抱きしめられている状況を想像し、顔を引きつらせ乾いた笑いを溢しながら一人で首を振って否定する。


そんな想像しても、さっきのように変な動悸が起こらない事を考えると・・・やっぱり、女の格好をしていたせいだったんだろうな~。よし!今度女の格好をした時も、自分は今男だと言い聞かせ気を引き締めよう!


 そう心の中で誓い、私の良く分からない変な動悸を全て女の格好をしたせいだと自分を納得させたのであった。

 その後王子姿で仕事に戻り、その日はそのまま無事に終わったのだ。

 ちなみに高円寺はあの後、私の仕事中に様子を見に教室に来たのだが、私は王子の格好だった事もあり特に動揺する事も無く、むしろあんな事をしてきた高円寺に沸々と怒りが沸いてきて、口では謝りの言葉を言っているが目が怒っているのが自分でも分かっていた。

 そんな私の様子を察し、高円寺は困った表情のままそのまま去ってくれたのだ。

 そうして三日目最終日の学園祭は、特にこれと言った出来事は起こらずに終了した。

 そして人気投票の結果は大差で私のクラスが勝ち、クラスの皆は歓喜に沸いたのだ。



 怒濤の学園祭も終わり、すぐに皆期末試験に向け気持ちを切り替え勉強を始めた。

 そして期末試験が行われ、私は今回も程ほどの実力を出し順位発表では問題無く中間の順位を取る事が出来たのだ。

 その結果を見に来た桐林は、目を据わらせて私を見てきたが私はそれを完全に無視しする事にしたのだった。

 そうして期末試験も終わって数週間が経ち、最近では雪が降りそうな程寒い日が続くようになってきたこの時期に、本日学校行事のクリスマスパーティーが行われる事となったのだ。

 私は男性用の礼服に身を包み、同じくキッチリと礼服を着込んだ委員長と一緒に会場に入った。

 パーティー会場となっている場所は、入学式でも使った大きな講堂で、そこには全校生徒がそれぞれ自慢の礼服を着て集まっている。

 このクリスマスパーティーは学園主催なので、学園側が一流の料理人を呼び豪華な料理を作って貰い、それをビュッフェ形式で食べる立食パーティーとなっていた。

 私は色とりどりの礼服に身を包んだ生徒を見回し、その気合いの入った服装に感心したのだ。


「皆、凄い綺麗な礼服着てるな~」

「まあそうだろうね。多分一年の行事の中で、これが皆一番力を入れる行事だから」

「そうなの?」

「あれ?早崎君知らないの?このクリスマスパーティーの伝説を」

「伝説?何それ?」

「えっと・・・ならまず説明する前に、この胸に付けているコサージュは全校生徒全員が付けているの知ってるよね?」

「うん」


 そう返事をし私は左胸に付けてある、黄色い薔薇のコサージュを見た。

 このコサージュは学年毎で色が決まっており、一年生は黄色、二年生は青色、三年生は赤色のコサージュを男女共に付ける決まりとなっている。

 しかし造花ではあるが花の種類は指定されていないので、皆それぞれ自分の好みの花を選び指定の色に染め胸に付けているのだ。

 だから、目の前にいる委員長のコサージュは黄色いダリアとなっていた。


「昔から学園に伝わっていた伝説らしいんだけど、このコサージュをこのクリスマスパーティー中に男女で交換すると、その二人は幸せに結ばれると言う伝説があるんだよ」

「ふ~ん、そうなんだ。・・・だけど所詮伝説だよね?ただの伝説だけでこんなに皆必死になるもんなのかな?」

「う~ん、僕もハッキリとは知らないんだけど、何年か昔の先輩がこの伝説を実践して有名にしたらしいよ。どうやらその時のクリスマスパーティーで、伝説の通りにコサージュを交換して結ばれたらしいんだけど、どうもその時の交換時に何かあったらしく、今でも語り継がれる程の伝説になったらしい」

「へぇ~一体その時に何があったんだろうね?」

「さぁ~?ただその時は、学園を巻き込む程の大騒動だったと言われているみたいだよ」

「ふ~ん。まあだからと言って、僕には特に関係の無い伝説だけどね」

「・・・そうかな?相手はそう思っていないみたいだけど・・・」

「委員長?」


 委員長が呆れた表情でどこかに視線を向けていたので、私はその視線の先を追って見てみる。

 その視線の先には女子の集団がいて、皆こちらをチラチラと見ている事に気が付いた。

 ただどうもその瞳が、獲物を狙うような目をしてギラついているように見え、私は何故か背筋に悪寒が走ったのだ。

 私はその集団がちょっと怖くなり、視線を別の方に外すとその先で黒山の人集りが出来ている事に気が付く。


「あれは・・・」

「あれは?・・・ああ、高円寺先輩達だね」


 私の声につられ同じ方向を見た委員長が、その集団を見て合点のいった声を出したのだ。

 確かにその人集りをよくよく目を凝らして見てみると、ほぼ女生徒の人集りの中で頭一つ抜きでた高円寺達四人の顔が見えた。

 榊原は相変わらずのニコニコ笑顔、藤堂は爽やかな笑顔、桐林に至っては笑顔は無く若干迷惑そうな様子だがあくまでクールな表情、高円寺はいつもの甘い微笑みを振り撒いていたのだ。


「相変わらず凄い人気だよね」

「確かに・・・だけど今日は特別だから、いつもは遠巻きで見ているだけの女子がグイグイ迫って行ってるよな~」

「・・・本当女の子ってこう言う時凄いよね」

「特に恋が絡むと、女の子って強くなるからな~」

「・・・・」


う~ん。私も女だけど、いまいち恋する女の子の気持ちって良く分からないんだよね~。だからか何であそこまで必死になれるのか、私にはさっぱり分からないんだよな~。


 必死な様子で、高円寺達に自分をアピールしている女生徒達を見つめ、私には絶対あんな真似出来ないと思ったのだった。

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