表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
身代わり男装令嬢の憂鬱  作者: 蒼月
高校一年生編
35/110

姫と生徒会メンバー

 お母様にドレスを着せられた後、ハルにロングのカツラを被せられさらに化粧まで施されたのだ。

 そうして完成した姿を見たハルは、大興奮で持っていたカメラで私を撮りまくっている。

 私は姿見の鏡に自分の姿を映し、さすがプロのファッションデザイナーは凄いと感心したのだった。

 自分でも驚く程綺麗にして貰え、私は頬を緩めながら鏡の中の自分に満足していたのだ。

 そうしてある程度満足したので、私は元の王子の服装に戻そうと再び更衣室に向かったのだが、その前にお母様が私の腕を取りニッコリと微笑んでくる。

 私はその微笑みにまた嫌な予感を感じていると、お母様はこの姿のままお父様の所まで戻ろうと言い出したのだ。

 その言葉に、本当にこの姿を他の人にも見せる気であったお母様に、私はなんとか拒否しようとしたのだがそこにハルも加わってきて、お母様と二人掛かりで説得させられてしまったのだった。

 そうして衣装部屋からお父様の待っている教室前まで、お母様に手を引かれ向かったのだが、普段男の格好で学校にいるのでどうも女の格好で校内を歩くのがとても落ち着かない。

 さらにすれ違う人々の好奇の目が気になり、自然と視線を廊下に落とし恥ずかしさで頬が熱くなっていたのだった。

 そして私が歩いていると周りが騒然としていくので、もしかしたら全然似合っていないのではと、今更ながらさらに恥ずかしくなったのだ。

 そうこうしている内に目的の場所まで到着した。


「お待たせしてごめんなさいね~!どうかしら?この響ちゃんは?」

「「「「「・・・えっ!?」」」」」


 お母様がそう声を掛けると、すぐに複数の驚きの声が聞こえてきたのだ。

 私はその声に、下げていた視線を上げ前を見据える。

 そこには高円寺達二年生生徒会メンバーと委員長が、私を見つめ目を大きく瞠り驚きの表情で固まっていたのだ。

 さらに、委員長を除く四人は何故か胸に手を置いているので、驚き過ぎて胸でも痛くなってしまったのだろうかと心配になってしまった。

 ちなみに、高円寺達の横で感激の涙を流しているお父様は気にしないようにしている。


・・・そんな驚くほど似合っていないのかな?


 そう思うと気持ちが落ち込み、今すぐにでも引き返し着替えたくなったのだ。


「どうしたの皆~?あたしの力作に何も感想無いの~?」


 私の後ろに立って付いてきていたハルが、皆何も言わない事に不満気な声を出す。


「え・・・あ、やっぱり響君なんだ・・・す、凄い!綺麗!!」

「え?」


 ハルの言葉に正気に戻った榊原が、まだ信じられないと言った表情のまま私に近付き、称賛の言葉を言ってくれたのだ。

 まさかそんな事を言って貰えると思っていなかったので、私は驚きの声を上げた。


「・・・本当に早崎君だ・・・・・・美しい」

「マジか!どこからどう見ても、可憐で凄い綺麗な女の子にしか見えなかったぞ!」

「カツラとドレスだけでこれだけ変わるとは・・・俺が男に言うのも癪だが・・・・・・綺麗だ」


 榊原に続いて、高円寺、藤堂、桐林がそれぞれ称賛の言葉を言ってくれたのだ。


「あ、ありがとうございます・・・」


 そんなに誉められると思わなかったので、その皆の称賛の言葉に段々恥ずかしくなり俯いてしまう。頬もなんだか熱くなり目も少し潤んできてしまった。


「恥じらっている姿も可愛い・・・」


 高円寺のその呟きに思わず顔を上げると、私の顔を見た四人が途端に顔を赤らめ目を彷徨わせ始めたのだ。その様子を不思議に思い私は小首を傾げる。


「「「「「・・・っ!」」」」」


 私が小首を傾げた瞬間、四人は一斉に顔を背けどこか別の方を見出したのだ。ただ、皆耳まで真っ赤になっているのが不思議だった。

 その皆の様子に困惑していると、目の端にいつの間にか号泣しているお父様の近くに移動していたお母様が、それはそれは凄く楽しそうな笑みを浮かべこちらを見ている事に気が付いたのだ。


お母様・・・絶対この状況楽しんでいるでしょう!


 そう思いジト目でお母様を見るが、お母様はそれを全く気にする様子を見せず、隣のお父様の涙を拭いて上げていた。


「ふふふ。響ちゃん凄いでしょ~?化粧とかしている時凄く楽しかったわ~!」

「確かに凄い・・・しかし・・・」


 漸く皆落ち着いたのか平常の顔に戻り私を見てきたのだが、藤堂が何か気になったのかジッと私を見つめてきたのだ。正確には・・・私の胸元辺りを。

 私はその視線を受けすぐに自分の胸元を確かめる。

 ドレスを着るのでどうしても胸を隠していた物を取ってあるのだ。なので今私の胸は何も押さえられていない。

 ちなみに最初胸を隠していたのはサラシだったが、夏休みに実家へ帰った時、胸を隠す用にと専用の通気性の良いベストを作って貰っていたのだった。

 しかしそれもドレスを着ると見えてしまう為、仕方が無く脱いでいるのだ。

 なのでその変わり、胸の谷間が見えないよう大きな薔薇の飾りで胸元を隠しているのだった。

 私は胸元を見て、どう見ても胸の谷間が見えていない事を確認する。

 そうなると藤堂が何を言いたいのか分からず、もう一度顔を上げ藤堂を伺い見た。


「藤堂先輩?」

「早崎・・・どうせ胸詰めるなら、もう少し大きくすれば良かったんじゃ無いか?」

「・・・・」


小さくて悪かったなーーーー!!!


 私は無言の笑顔で藤堂に近付くと、物凄い速さで藤堂の脇腹を打ったのだ。


「うっ・・・な、何で殴るんだよ?」

「・・・何となくです。気にしないで下さい」

「気にするなって、これ相当痛いぞ?」

「気のせいです!」


 私の迫力に藤堂は、腑に落ちない様子ながらもそれ以上何も言わなくなった。回りをチラリと見ると、胸が禁句なのを察したのか苦笑いを浮かべながら誰も何も言わなくなったのだ。

 その時、小走りで近付いてくる委員長の存在に気が付く。


「本当に早崎君だ!ビックリした!凄く綺麗で可愛いよ!!」


私の下に来た委員長がそう言って、笑顔で誉めてくれたのだ。


「委員長ありがとう!それにしても、長い事仕事抜けてごめんね。すぐに着替えてくるから、あともう少しだけ待っててくれないかな?」

「あ~その事なんだけど・・・出来ればその格好のまま仕事してくれないかな?」

「へっ?」

「早崎君のその姿を見たクラスの皆・・・特に男子が、その姿なら男子の集客もイケる!と言い出していてね・・・その~早崎君には悪いんだけど、時間制で王子様とそのお姫様の格好を入れ換えて呼び込み兼案内係やって欲しいんだ」

「えぇぇーーーー!!!」


 委員長の申し出に驚きつつチラリと教室の方を見ると、クラスの皆がキラキラした期待する目で私を見ている事に気付き、これは断る事など絶対出来ないと実感し大きなため息を吐いて項垂れたのだ。



 あの後大勢の人集りを生徒会メンバーが解散させてくれ、二年生生徒会メンバーは見回りに向かい、私はそのまま姫の格好で仕事をさせられた。

 漸くお落ち着いたお父様とお母様とハルを、席まで案内しお茶を楽しんで貰ったのだ。

 そうして、その日の学園祭はそのまま姫の格好で過ごす事になったのだった。



 学園祭は三日間あり、二日目の午前中は王子様の格好で仕事をし、午後から姫の格好で仕事をしている。

 昨日ハルが、私の王子と姫の格好をカメラで撮っていたので、その写真のデーターを貰い新たな案内のチラシを作成したらしく、それを構内中に貼り出していた。そのお陰か一日目より仮装喫茶は大盛況となったのだ。

 私は午後の姫時間の仕事を終え、控え室として用意してある教室で椅子に座り、ぐったりと机に突っぷしている。

 するとその机にコトっとコップが置かれる音が聞こえ、私はゆっくりと顔を上げると委員長が側に立っていたのだ。


「早崎君お疲れ様~」

「ありがとう」


 私はそう言い、委員長が持ってきてくれた紅茶を一口飲みホッと息を吐く。


「本当に早崎君のお陰で凄い大盛況だよ。ありがとうね!ただ、予想以上の大盛況でお菓子が間に合ってないから、とりあえず次のお菓子が出来るまで、ちょっと時間掛かるから暫く休憩してて良いよ」

「本当に!助かるよ!」

「それなら、ちょっと他の所の出し物見てきたら?早崎君忙しくて見れて無いよね?」

「うん、まだ全然見てないんだ。そうだね、ならお言葉に甘えてちょっと見てこようかな~」

「そうしなよ。僕はまだやる事があるから一緒に行けないけど、楽しんできなよ」

「ありがとう!ならちょっと着替えて行ってくるよ!」


 委員長の提案に乗り、私は制服に着替えて学園祭を見て回ろうと席を立った。するとその時突然入口の扉が開いたのだ。


「早崎君、学園祭を一人で見て回るのなら良かったら私と一緒に行かないかい?」

「高円寺先輩!?」


 そこに現れた笑顔の高円寺に、私は驚きの声を上げたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ