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身代わり男装令嬢の憂鬱  作者: 蒼月
高校一年生編
31/110

クラスの出し物

 体育祭も終わり、すぐに次なる学校行事の学園祭の時期がやってくる。

 そして今その学園祭でやるクラスの出し物を、HRの時間を使って話し合っているのだ。

 この学園の敷地内は、基本在校生と教師と学園関係者しか出入り出来ないようになっているのだが(一部業者等の例外有り)、学園祭に関しては唯一、生徒の親や親族、知合い等外部の人を招待する事が出来る為、当日は沢山の人で賑わうらしい。

 さらに生徒の親となると、殆どの人はこの学園の卒業生であり言わば大先輩にあたる方々になる為、皆この学園祭に力を入れていた。

 しかし、力を入れているのはそれだけが理由では無い。

 この学園祭では人気投票と言う物があり、気に入った出し物に票を入れて貰いそこで1位となった所には、学園からご褒美が出るのだ。ただしその票は、自分が関わっている出し物には投票出来ないようになっている。

 そして今年のご褒美は、どんなにお金を出してもそうそう泊まる事が出来ない、国賓や皇族方が泊まる超高級豪華温泉旅館に、二泊三日で泊まりに行くことが出来る物だった。

 勿論人数制限は無いので、もしクラスの出し物が1位を取った場合クラス全員で行くことが出来るのだ。

 その為、今やっているクラスの出し物を何にするかの話し合いも、皆積極的に参加し色んな意見が飛び交っているのだが、まだこれと言って決め手に欠けているのだった。

 正直私は、ご褒美の温泉旅行には特に興味は無いのだが、このクラスが一致団結し学園祭に望もうとしているこの雰囲気が好きで、ワクワクして楽しかったりしているのだ。

 今から学園祭を楽しみにしていると、ある女生徒が手を上げ出し物の提案をしようとしていたのだった。

 その女生徒は・・・春にあった初めての乗馬授業で、暴走した馬に乗っていた女生徒だった事に気付く。名前は確か、松原 恵梨香だったはず。

 松原は司会をしていた委員長に指名され、椅子から立ち上がった。


「私、クラスの出し物に喫茶店が良いと思います!」

「喫茶店~?ありきたりじゃねぇ?」

「多分、他にもやる所ありそうだよね?」


 松原の提案に、次々と否定的な意見が至るところから上がる。

しかし松原はそんな意見にも堪えず、むしろ自信満々の顔でさらに話を続けた。


「勿論、ただの喫茶店では無いです。私が皆とやりたいのは『仮装喫茶』です!」

「仮装喫茶!?」

「仮装って・・・様々な格好するあれの事ですの?」

「それさ~出し物が演劇でなら分かるけど・・・喫茶店でそれやっても、さすがに物珍しさで人は来るかもしれないが、票を得れるとは・・・」


 皆仮装と聞き驚くが、あまり反応は良く無かったのである。


「人気投票の事もしっかり考えてあります!その仮装喫茶で、皆は好きな仮装をして頂ければ良いのですが・・・早崎君には『王子様』の格好をして頂きたいんです!」

「へっ?」


 突然私の名が出て、素っ頓狂な声を上げてしまった。


「早崎君が王子様の格好したら、絶対沢山の人が集まるはず!さらにその王子様の早崎君に接客して貰えたら、人気投票の票を大量に得れるはずです!それに皆・・・早崎君の王子様姿見たく無いですか?ハッキリ言って、私は見たいです!その王子様に接客して貰いたいです!」


 そう松原が熱く力説すると、教室内はシーンと静まり返ったのだ。


・・・ま、まあ、なんで私が王子様の格好をすれば、人気投票の票を得れると思ったのか分からないけれど、この皆の反応からして同意は得られていないみたいだし、松原さんには悪いけどこの提案は却下だろうな~。と言うか、却下でお願いします!!


 しかしそんな私の思いとは裏腹に、すぐに教室内で盛り上がりの声が上がった。


「きゃぁぁ!わたくしも早崎君の王子様姿見たいですわ!」

「私も私も!!」

「おお!それ良いんじゃないか!それなら絶対票取れるな!」

「学園中にビラで早崎の事宣伝すれば、さらに効果ありじゃね?」

「確かに!!」


・・・おい!こら!本人の意思聞かずに勝手に盛り上がるな!!


「ちょっと待て!僕の意思も聞かず、勝手に話進めないでくれよ!!」

「早崎すまん!クラスの為に犠牲になってくれ!と言うか、正直俺も早崎の王子姿見たい!」

「な、なんだそれはーーーー!!!」


 まさか男子からも、私の王子様姿が見たいとか言われるとは思ってなく、思わず絶叫してしまったのだ。


「あ~早崎君落ち着いて。でもこの皆の様子だと、クラスの出し物は仮装喫茶で決定かな?」

「決定じゃない!!」


 そう反対している私を無視し委員長が回りを見回すと、私以外のクラス全員が賛成したのだった。

 委員長はその皆(私を除く)の賛成を確認し、黒板にクラスの出し物『仮装喫茶(早崎の王子様仮装必須)』と書いて、その上に大きな花丸を書いていたのだ。

 私はその文字に絶望の表情で頭を抱え、机に突っぷしたのだった。



 そうして出し物が決まってから、皆の行動はとても早かったのだ。

 元々このクラスには親が会社を経営している人が多い為、その親に頼み喫茶店で必要な物を手配したのだった。

 例えば、親が紅茶を輸入している人はそこから紅茶を手に入れたり、高級食器を取り扱っている親がいる人には茶器や食器を手配して貰ったりと着実に準備が進んでいく。

 ただ、喫茶店で出すお菓子は手作りにしようと言う事となったので、お菓子作りに自信のある人達が集まり当日に出すお菓子を作ってくれる事となった。

 そして、この喫茶店の最大の売りである仮装用の衣装は、親が演劇や舞台等に衣装を貸し出すレンタル衣装店を経営している人がいた為、その人が親に頼んで大量に仮装用の衣装を送って貰ったのだ。

 そうして教室内に大量の衣装が用意され、皆ワイワイと当日自分が着る衣装を選んでいる。

 私もその賑わいに混じり、コッソリ無難で目立たなさそうな衣装を探そうとしたのだが、その前に松原に腕を取られニコニコとこちらを見ながら、衣装を提供してくれた菊地 智美と何故か足立も混じった三人の女子に連れられ、一際きらびやかな衣装が置かれている一角に連れていかれたのだった。


「早崎君ならこれが似合いそう!」

「いえいえ!こっちの方が!」

「私はこっちが良いと思うよ?」


 松原、菊地、足立が順に、それぞれ気になった王子の衣装を手に持ち、私に合わせながら楽しそうに意見を言い合っていたのだが、私はやっぱりそれを着なくてはいけないのかと思い、その様子にげんなりしていたのだ。

 途中、カボチャパンツで白タイツの王子様・・・いや、馬鹿王子様風の衣装を持ってこられた時は、全力で拒否したのだった。

 そうして最終的に、マントを肩で留め飾り紐の付いた華美な白い正装に決まったので、私はやっと終わったとホッとしていたのだが、三人はその衣装を一度試着して欲しいと興奮気味に詰め寄ってきたのだ。

 その三人の迫力に押され渋々承諾したのだが、さらにこの場で着替えを手伝おうとしてきたので、私は断固として断り急いで用意されていた個室の試着室に衣装を持って駆け込んだのだった。

 そして手早く衣装に着替え試着室を出ると、その瞬間教室内にどよめきが走る。


「きゃぁぁ!!素敵ですわ!!」

「すげえーー!早崎、良く似合ってるぞ!!」

「これなら人気投票絶対1位取れるな!!」


 そのクラス中の歓喜の声に、衣装を選んだ三人はとても満足そうな笑顔で頷いていたのだった。

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