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身代わり男装令嬢の憂鬱  作者: 蒼月
高校一年生編
17/110

兄を探して・・・

※本日は11時と14時に1話づつ更新していますので、まだ読まれてない方はそちらからどうぞ。

 誕生日パーティーも無事に終わり、その後また女の姿に戻って平穏な日々を過ごしていた。

 夏休みも後半になり宿題も早々に終らして、部屋でソファに座りながらのんびり読書をしていたその時、突然部屋の扉が開きそこからお父様が慌てた様子で駆け込んできたのだ。


「お、お父様!?」

「詩音!響が見付かった!!」

「えっ!?」


 お父様のその言葉に、驚きながらソファから勢いよく立ち上がる。


「お父様!響は今どこに!?いつ帰ってくるの!?」

「い、いや・・・見付かったと言うか・・・正確には、響らしき人物を見掛けたと言う連絡が入っただけだったんだが・・・」


 私はもの凄い剣幕でお父様に詰め寄ると、お父様はその勢いに押されてかしどろもどろに声が小さくなっていく。


「だけど、お父様がそんなに慌てて来るって事は、その情報は信憑性が高いって事だよね?」

「そうなんだ!詳しい容姿を聞く限り響の可能性が高い!」

「・・・ちなみに、響がいるだろうと思われている場所はどこ?」

「国内の南の方にある小さな島だ」

「島!?」

「ああ、だが島と言っても島の面積に対して人口は多く空港もあり、島全体が南国風にリゾート開発されているから、今旅行先にと大人気の場所なんだ」

「・・・確かに響が好きそうね」

「それで今回、この情報を聞き信憑性が高いと思ったし、さらにそんな所なら暫く滞在している可能性が高いと思ったんだよ」

「なるほど・・・」

「だから今、すぐに確保して貰うよう捜索部隊に頼んである」

「・・・・」


・・・あの響の事だ、そう簡単に捕まらないような気がする。


 そう思い私はある決心を心の中でし、お父様を真剣な表情で見る。


「お父様・・・私もそこに行って響を探すよ!」

「ええ!?な、何を言っているんだ!!」

「だって、ここでじっと待っているなんて我慢出来ないから!少しでも響を見付けれる可能性を上げたい!」

「し、しかし、私は仕事があって一緒に行ってあげられないんだが・・・」

「大丈夫!私一人で行くから!それに大勢より一人の方が動きやすいし、響に見付かりにくいからさ」

「だけど、女の子が一人で行くなんて・・・それも場所的に日帰りは無理だし、それに響がすぐに見付かるとは限らないから、多分数日ホテルに一人で泊まる事になるんだよ?」

「それは全然平気だから問題無いよ。それに・・・お父様も私の実力知ってるでしょ?」

「まあ、詩音が強いのはよく知っているが・・・」


 昔から心配性のお父様だったので、幼い頃から様々な格闘技や護身術、武術等を世界的な実力者の人に頼んで響と共に習っていたのだ。そのお陰か、二人共全て師範代クラスの実力を身に付けている。


「それでもお父さんは心配なんだ!やはり詩音一人では・・・」

「あら~それでしたら奏一さんお抱えのSPの方に、詩音ちゃんを護衛して貰ったらどうかしら?」

「咲子!?」


 いつの間に部屋に入って来ていたのか、お母様が微笑みながら言ってきた。


「でもお母様・・・それじゃ目立ってしまって響に見付かってしまうんだけど?」

「う~ん、ならSPの方々には隠れて護衛して頂きましょうか~?奏一さん、SPの方々はそう言う事出来ますわよね?」

「・・・まあ、出来る筈だ。だがやはり女の子が・・・」

「ならお父様!私その間、男の格好で行動するよ!それなら女の子と思われて襲われる心配は無くなるからさ!」

「しかし・・・」

「ね?お願い、お父様!」

「・・・っ!」


 渋るお父様に笑顔を向けてお願いすると、お父様は耳まで真っ赤に染めて言葉を詰まらせる。


「ふふ、久しぶりに見たわ~。詩音ちゃんの『天然スマイルキラー』相変わらず凄いわね~」

「お母様?」

「詩音・・・お父さん、それをやられるともう何も言えないよ・・・」

「お父様?」

「・・・分かった。行くのを許可しよう。ただし、絶対危ない事はしない事!あと、変な男に付いていっては駄目だからな!」

「お父様ありがとう!!」


 二人の様子は私には理解出来なかったが、お父様が諦めた表情で認めてくれたので、私はそんな事気にならなくなり喜んでお父様に抱きついたのだった。


「はぁ~気を付けて行くんだよ」

「は~い!」


 お父様はため息を吐きながらも、微笑むと優しく頭を撫でてくる。


「詩音ちゃ~ん!お土産よろしくね~」

「は、は~い・・・」


 近くからは楽しそうに微笑みながら、いつもののんびりした声でお母様が言ってくるので、頬を引きつらせながら返事を返したのだった。




────国内、南の島の空港。


「う~ん!風が気持ちいい!!」


 私は空港から外に出て、ロータリーの所で大きく背伸びをし顔に当たるいつもと違う風に心地好さを感じる。


「さて、まずはお父様が手配してくれたホテルに行くかな」


 そう思い、ポケットからホテルの名前が書かれたメモを取り出し、ホテルの場所を確認している時に一人の男の人に声を掛けられた。


「失礼ですが、早崎様でいらっしゃいますでしょうか?」


 男は黒い燕尾服を着て恭しく確認してくる。


「・・・はい」

「突然お声をお掛けして大変失礼致しました。私、早崎 奏一様からホテルまで送迎を依頼されている者です」


 そう言って、男の人は懐から名刺を取り出し私に手渡してきた。私はそれを受取り、名刺に目を通すとこれから行くホテルの関係者だと分かったのだ。


「ああ、わざわざありがとうございます」

「いえいえ、これも仕事ですので。ではお荷物をお預かりしてホテルまでお送り致しますね」

「よろしくお願いします」


 そう言いながら私は周りをチラリと見た。実は男が私に近付いてきた時、周りにいた旅行客数人がピリリと緊張を走らせ、こちらに気が付かれないように様子を伺っていたのを知っていたのだ。

 私がチラリと目配せし軽く首を横に振ると、その旅行客達は一瞬驚いた表情になったが、すぐ元に戻り普通の旅行客になった。

 どうやらあの人達は、お父様が手配したSPの方々なんだろうと分かる。多分あの驚いた表情は、まさか私に気付かれているとは思っていなかったんだろう。


「早崎様?」

「ああ、ごめんなさい。では行きましょう」


 そうして私は、ホテルが用意してくれた黒い高級車に乗ってホテルに向かった。



 お父様が手配してくれたホテルは、この島で一番高級でサービスも行き届いているトップクラスのホテルだったのだ。

 私はこのホテルの中でも最上位クラスの部屋に案内され、部屋の説明を簡単に受けた後、漸く一人になりホッと大きなベッドに腰かけた。

 そうして一息入れた後、荷物からさらに動きやすそうな服を取り出して着替える。

 勿論ホテルに付くまでも男の格好をしていたが、飛行機に乗ったりする為少し堅めの服を着ていたのだ。

 なので、今度は半袖Tシャツにサラシを巻いた胸が隠せる上着を羽織って前のファスナーを閉め、膝下まであるラフなズボンを履き短めのソックスとスニーカーを履いて、小さなリュックに財布等の貴重品を入れて背負いその格好を鏡で確認する。


よし!これなら観光客に紛れて響を探せる!


 そうして私は気合いを入れた後、ホテルから響を探しに出掛けていたのだった。

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