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身代わり男装令嬢の憂鬱  作者: 蒼月
高校一年生編
13/110

両親との対面

 暫くしてお父様がお母様を伴って応接室に入ってきた。


「お待たせしてすみません。私は響の父、早崎 奏一です。そしてこちらが妻の・・・」

「早崎 咲子と申します。いつも響が大変お世話になっていますわ」

「「「「・・・・」」」」


 そうお父様とお母様はにこやかに挨拶をしたのだ。

 しかし今まで私と和やかに話していた四人は、お父様達の姿を見て一瞬息を飲み言葉を無くす。

 そこで改めてお父様とお母様は端から見ると、絶世の美男美女に見えるのだと実感した。どうも私は生まれた時から二人を見続けていたせいで、二人の容姿に見慣れてしまいその凄さを良く分からないでいたのだ。


「早崎夫妻の噂は聞いていたがここまでとは・・・」

「確かに凄い・・・」

「綺麗な物に見慣れている僕でもさすがにこれは・・・」

「なるほど・・・この夫婦から生まれたから早崎君もあの美貌なのか・・・」


 桐林、藤堂、榊原、高円寺の順に呆然と呟いているのが聞こえてきた。

 しかし、そこでハッと我に返った高円寺が真剣な表情で、一歩前に進み出てお父様に優雅に頭を下げる。


「早崎様、事前に連絡も無く突然の我々の訪問、大変申し訳御座いませんでした」


 その言葉にハッとした他の三人も慌てて頭を下げた。


「いやいや、顔を上げてください。それに様付けは必要無いですから。しかしさすがに少し驚きましたが、響のご学友の方が家に来て下さり大変嬉しく思いますよ」


 そう笑顔でお父様は答え、高円寺達も安心した表情で顔を上げる。


「そう言えば、しお・・・響、この方々を私に紹介して・・・くれないか?」


お父様!ちょっと名前間違えそうになったでしょ!!


 私は一瞬ギロリとお父様を睨み、そして笑顔を作って紹介を始めた。


「こちらの方々は、僕の学校の一年上の先輩方で全員生徒会役員をしてらっしゃっています」

「なんと!あの学園で生徒会をされているなど、皆さん凄く優秀な方々なのですね!」

「それ程でも無いですよ」


 お父様が驚きの声を上げるが、高円寺は苦笑を浮かべて謙遜する。


「それで今代表で話されている方が、高円寺 雅也さん。生徒会長をされています」

「高円寺 雅也です。早崎君とはいつも仲良くさせて頂いています」

「・・・仲良くはしてない・・・まあ今は良いや。そしてその後ろの眼鏡を掛けた方が桐林 豊さん。副会長をされています」

「桐林 豊です。早崎君のお父様の経営手腕をお噂でお聞きし、一度お会いしたいと思っていました」

「・・・まあ、確か一つ会社経営してますもんね。その隣が藤堂 健司さん。書記をされています」

「藤堂 健司です。ここは自然豊で、のびのびと体を動かせそうでとても良い所ですね」

「・・・本当に運動が好きなんですね。最後にその隣の可愛らしい顔の方が榊原 誠さん。会計をされています」

「榊原 豊です!僕ここ大好きです!暫くここに滞在したら駄目ですか?」

「駄目です!」

「え~!響君の意地悪~!」


 頬を膨らませて文句を言う榊原を無視しお父様に向き直る。


「紹介は以上です!」

「あ、ああ。ありがとう。しかし響はまだ入学して間もないのに、こんな凄い方々とお知り合いになったんだね?名前を聞く限りどの方々も凄い家柄の人達ばかりじゃないか」

「・・・別に好きで知り合いになった訳じゃないんだけど・・・」


 私はジトリと目を据わらせお父様を見た。するとお父様は、私のその表情で大体を察し慌てて私から視線を外す。

 そもそも響の身代わりをしていなければ、こんな事にならなかった事を分かったようである。


「そ、そう言えば、今日は皆さんどう言ったご用で我が家においで下さったのですか?見た所皆さん礼服を着てらっしゃるようですが・・・これからどこかのパーティーにご参加されるご予定ですか?」

「ああ、その事で早崎さんにご相談があります」

「ご相談?」

「はい。今日我々の知り合いから早崎君が誕生日だと伺いまして、それならばと思い皆で早崎君の誕生日をお祝いしたいと今日お伺いしたのです。もし宜しければこれから行われる誕生日パーティーに、我々も参加させて頂けないでしょうか?」

「え!?」


 高円寺の申し出にお父様は驚きの表情を見せ、そして困惑した表情で私を見てきた。


お父様!断って!!


 私はそう目で強く訴えかけると、お父様もその気持ちを察してくれたのか一つ頷きすまなそうな表情でもう一度高円寺を見る。

 そして言葉を発しようと口を開いたその時、別の方から声が上がったのだった。


「あら~それは是非とも参加して下さいな」

「お、お母様!?」


 今まで黙って成り行きを見守っていたお母様が、のんびりした口調で勝手に承諾してしまったのだ。


「お母様!何勝手に返事返しているの!!」

「そ、そうだぞ!それに今夜の誕生日パーティーは、家族だけで行うつもりだったから料理が全然足りない。今から手配しても間に合わないんだぞ?」

「あら~そう?・・・ふふ、だけどそんな事は皆さん予想済みなんでしょ?」


 全く悪びれた様子も見せず、お母様は微笑みながら高円寺達を見る。すると高円寺達も笑顔を見せて頷いてきた。


「ええ勿論・・・ああ、丁度到着したようですね」


 そう高円寺が言うと同時に窓が揺れ、外からプロペラの大きな音が聞こえてくる。私は慌てて窓に近付き外の様子を見ると、さっきまで愛馬に乗って駆けていた草原に何台もヘリが着陸しているのが見えたのだ。


「突然伺ってご迷惑を掛けると思いましたので、我々のお抱えシェフと数々の材料を乗せこちらに向かわせていました」

「「・・・・」」

「ふふふ、まあ~凄いですわね」


 私とお父様はあまりの事に驚き絶句していたが、お母様だけは予想していたのか楽しそうに含み笑いを溢していたのだった。


お母様・・・絶対この状況楽しんでいるでしょう・・・。


「これで料理の心配は無くなりましたが、これでも我々の誕生日パーティーの参加は認めて頂けませんか?」


 そうニッコリと高円寺が微笑んで問い掛けてきたので、お父様は私を一度すまなそうに見てから高円寺を見る。


「・・・分かりました。ここまでご配慮して頂いたのに断る訳にもいきませんからね。是非とも参加して下さい」

「「「「ありがとうございます」」」」


 四人は良い笑顔でお礼を言ってきたのだ。


・・・せっかく家族水入らずの(響を除く)、気楽な誕生日パーティー楽しみにしていたのにーーーーーー!!!


 私はここでも、響の振りをずっとしなければいけなくなった事に、頭を抱え心の中で嘆きの叫びを上げたのだった。

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