表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
身代わり男装令嬢の憂鬱  作者: 蒼月
高校一年生編
12/110

帰省中

※本日15時に1話更新してありますので、読まれてない方は一つ前からどうぞ。

 怒濤の毎日をなんとか過ごし、漸く先程終業式が終わった所である。

 私はウキウキした足取りで、寮に帰る為学園の玄関から外に足を踏み出した。すると目の前に生徒会メンバーが勢揃いしていたのだ。それを見て私は一気に気持ちが急降下し、げんなりした表情で四人を見る。


「さすがに今日ぐらいは勘弁して欲しいんですけど・・・」

「いや、今日はそう言う訳ではないから。明日から夏休みだし、暫く早崎君と会えなくなるから皆で挨拶をと思っただけだよ」

「高円寺先輩・・・別に今生の別れでも無いんですから、わざわざ挨拶しに来なくても良いですよ」

「え~僕はちょっとでも、響君に会えなくなるの寂しいのにな~」

「僕は全く寂しく無いです」

「響君~!」

「こら誠!あまり早崎君を困らせるんじゃ無い!」

「え~豊は響君と会えなくて寂しく無いの?」

「・・・俺は・・・別に」

「豊、こう言う時は素直になれば良いのに~」

「健司!」

「お前達・・・早崎君が困惑してるからそれぐらいにしなよ」

「でも雅也も寂しいよね?」

「誠・・・まあ、確かに寂しいな」

「そうだよね~!・・・って、響君行かないで!」


 いつもの私を無視した言い合いが始まってしまったので、私はその隙にそっと帰ろうとしたのだが、目ざとく榊原に見付かり行く手を塞がれてしまう。


「・・・はぁ~結局挨拶がしたいだけなんですよね?僕、帰省の準備があるので早く帰りたいんです。ですので僕から簡潔に言わせて頂きます!では良い夏休みを!さようなら!」


 そう捲し立てて言ってから、今度こそ四人の横をすり抜け寮への道を走り出したのだ。


「あ!響君!・・・仕方がないな~またすぐに会おうね~!」

「またな~!」

「まあ、どうせすぐ会う事になりますけどね」

「早崎君!次会う時を楽しみにしておいてね!」


 榊原、藤堂、桐林、高円寺の順に走り去る私の後ろから声が聞こえたが、私は振り返らず手だけ上げて振っておいたのだった。



────早崎邸近くの草原。


 私は今愛馬のシリウスに跨がり、気の向くまま草原を疾走している。


 夏休みに入ってすぐに実家へ帰り、大喜びで私に抱き付こうとしてきたお父様を手で制し、まず響の行方を確認したが依然として行方は分からないと言う回答に大きくため息を吐いて項垂れたのだった。

 最初は気落ちしていたのだが、久し振りの実家と久し振りの女の子の格好にすぐ気持ちは浮上する。

 そして久し振りの大自然に心は癒され、毎日のようにシリウスに乗って草原を駆け巡っていたのだ。

 そんな毎日を過ごし、今日もシリウスに乗って草原を気持ち良く駆けている。しかし、今日はいつもよりも楽しい気持ちで乗っていた。何故なら今日は私の誕生日だからだ。

 今日の夜にはお父様達が誕生日パーティーを開いてくれるので、昼食を取ってからウキウキしながら乗馬を楽しんでいた。


ただ、今年は響だけがいない誕生日パーティーになるんだよね・・・。さすがにちょっと寂しいな~。だけどあの馬鹿響は本当に今どこにいるんだか・・・。


 そんな事を考えて少し気分が落ち込みそうになったが、頭を振ってその考えを追いやる。

 ちなみに今日の午前中に、約束通り委員長から響と詩音宛に誕生日プレゼントが送られて来ていた。

 プレゼントの中身は、響には高級万年筆で詩音には宝石の散りばめられた綺麗な音色のオルゴールだったのだ。

 そこそこ値の張る物だったので苦笑しつつありがたく受取り、夏休み前にアドレス交換をしておいた委員長に、メールで感謝を伝えておいた。



 そろそろ家に戻って誕生日パーティーの身仕度をしないと、と思い手綱を操って家の方に向かったのだ。

 そうして家に近付いた時、そちらから酷く慌てた様子で私の家で長年勤めているメイド頭の珠子がこちらに向かって走ってきた。


「し、詩音お嬢様!大変です!」

「珠子さんどうしたの!?」

「と、とりあえず大変なんです!旦那様がお呼びですので急いでお戻り下さい!」

「何だか良く分からないけど急を要するんだね。分かったすぐに戻るよ」

「シリウスは私が厩舎にお連れしておきます。あ!旦那様から言付けでお嬢様は玄関に向かわれず、裏口から目立たないよう入って来るようにだそうです」

「裏口から?何で?」

「説明は旦那様がされますので、今はお急ぎ下さい」

「・・・分かったわ」


 何だか腑に落ちなかったが、珠子の酷く焦った様子に何か大変な事が起こったのだと思い、私はシリウスから降り手綱を珠子に渡すと急いで裏口に向かう。

 裏口に向かう途中でチラリと玄関が見えたので、走りながら何気にそちらを見ると見た事の無い高級車が数台止まっているのが見え、私は何だか凄く嫌な予感がしたのだった。



 私はお父様の言う通り、目立たないように裏口から家の中に入りお父様の部屋に向かったのだ。

 そしてノックをした後部屋に入ると、お父様が困った表情で私を出迎えてくれた。


「お父様、一体何があったの?」

「ああ、詩音・・・実はお前に来客が来ているのだ」

「私に来客?」

「正確には、お前が振りをしている・・・にだ」

「・・・・」


 お父様のこの言葉と玄関で見掛けた高級車で、この来客が学園の誰かだと察する事が出来たのだ。私は一つため息を溢すと意を決した表情でお父様を見た。


「お父様、お客様は今どこに?」

「ああ、今は応接室でお待ち頂いている」

「・・・分かりました。すぐに響の服を着てお会いします」

「詩音・・・すまないな」

「お父様は気にしないで、こんな事になったのも全て響が悪いんだから。帰ってきたら・・・絶対一発殴る!」

「し、詩音・・・程々にな」


 私は目を据わらせ拳を握りしめる。お父様はそれを青ざめた顔で見ていたのだ。



 急いで胸にサラシを巻き、響の服を着て来客者が待つ応接室に向かった。お父様は後でお母様を連れて挨拶に来るらしい。

 一体誰が何の目的でここに来たのか分からず、緊張した面持ちで応接室の扉の前に立った。

 軽くノックした後ゆっくりと扉を開け、中にいる人物を確認しそして大きく目を見開いて驚く。


「な、何であなた方がここにいるんですかーーー!!!」


 私は思わず大声を上げてしまったのだった。


「あ!響君~!終業式ぶり~!」

「相変わらず元気そうだな」

「夏休み中もちゃんと体動かしてるか?」

「そんなに日は経ってないが会えて嬉しいよ」


 応接室のソファに座っていた榊原、桐林、藤堂、高円寺の順に立ち上がり私に声を掛けてくる。

 しかし、私はまさかこんな所に生徒会メンバーが来るなど思ってもいなかった為、唖然としながら四人を見つめていた。

 だがそこで私はある事に気が付く。四人の服装がどう見ても礼服だったからだ。


「先輩達・・・どうしてここが分かったんですか?それにその服・・・この後どこかのパーティーに行くんですか?」

「ああ、ここの住所は三浦君に教えて貰ったんだ。それに今日君が誕生日な事も」


委員長ーーーーーー!!!


「正直突然で申し訳ないと思っていたのだが、多分事前に君に言うと断られそうだと思ったから、皆と相談し当日黙って来る事にしたんだ。・・・もし良かったら君の誕生日パーティーに参加させて貰えないだろうか?勿論誕生日プレゼントは全員、君と君の妹の分用意してあるよ」


 高円寺は言葉では参加して良いか伺う言葉を言っているが、プレゼントまで用意してある事を伝えてくる辺り参加する気満々なんだと伺い知れる。


「・・・はぁ~とりあえずこれからお父様が来るので、参加して良いかお父様に判断して貰うで良いですか?」

「ああ、それで構わない」


 そうしてお父様が来るまで四人から、普段家での私の様子を質問攻めされたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ