表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

突っ走りさま

突っ走りさま

作者: pupuriko

楽しんで頂けたら幸いです!

「どうか、どうか素敵な恋が出来るようにお願いします‼」


1人の若い男性が汗を流して一生懸命祈っている。


ここは町中にぽつんとある古びた神社。他の神社と比べて大した違いはない。

しかし…


「おーけー、おーけー!ちょっと待ってて!」


賽銭箱の後ろからぬっと何かが出てきた。


「うゎっ!?出た!」


男性の目が見開く。


その影はそんな男性の前をあっという間に通りすぎ、神社の外へと消える。


と思えば3分後、何かを持って戻って来た。


状況が分からず、ボーとしている男性の前に手のひらを差しだし


「はいっ!これね‼」


ニコッと笑う。


手のひらにあるものは恋愛成就のお守りだ。


やっとのことで我にかえった男性は


「お守り?あの~ここで願えば必ず願いが叶うって聞いたんですけど…」


なかなかいい恋愛が出来ない、だからわらにすがる思いで祈ったのに…目の前にいるのは巫女の姿をした高校生くらいの女の子。どう見ても普通の人間だ。


すると彼女は


「のー、のー!だめね。」


首をフリフリし、


「恋愛は自分で叶えるもの。というか願いは自分で叶えるものね!私はそのお手伝いをするだけ!」


ピースサインをぐっと突きだした。


「これ、この町の神社の中で一番効き目のある所から買ってきたから持ってて損はないよ~‼」


あえて、自分の神社ではなく他の所のお守りを薦めるのはさておき(さらに買ったとは…)


「えっ、わざわざ…すみません。」


戸惑いながら気迫に負けて男性はお守りを受け取った。


「いーの、いーの。でもどうせならお賽銭もっと入れてくれると嬉しいね!」


またニコッと笑った。


「あっ…そうします。」


男性の手から500円玉が飛んだ。


「せんきゅー!」


この神社の神はぴょんぴょんと跳び跳ねていた。


「もう、自分で頑張ろう…」


男性はあきれてそう力強く決意した。


―――――――――――――――


「あそこの神社には願いを叶えてくれる神様がいるんでしょ?」


「神様って、かよのことでしょ?」


二人の高校生が例の神社について話していた。


「まぁ、かよのことだから突っ走ってるんでしょ。」


髪を一つにくぐった女子が苦笑いする。


「それがかよのいいところじゃん。それにある意味``願いを叶えてる´´じゃん?」


ストレートの女子が笑い飛ばす。


するとそこに


「おやおやどうしたのかね?」


温和そうなお婆ちゃんがゆっくりと現れた。


「あっ!おばあちゃんこんにちは!かよのことについて話していたんですよ。」


一つくくりが答える。


「あー、かよちゃんかい。」


スッと遠くを眺め、


「お父さんの神社を盛り上げようといつも頑張っているねぇ。」


とクスッと笑い、


「そう言えば前、私の孫がねぇ娘とケンカをして家を飛び出したのさ。すると5分後、孫をおぶったかよちゃんが現れて…あの時はびっくりしたねぇ。」


懐かしそうに言った。


「さすが、かよ‼」


ストレートが嬉しそうに叫ぶ。

そんな彼女達をそっと遮り


「孫によるとねぇ、かよちゃんとこの神社に行ってお母さんと仲直りしたいって願ったらしいんだよ。そしたらかよちゃん、今から謝りに行こうっておぶって家まで走って来てくれたのさ。」


ふと思い出したように一つくくりが


「かよ、陸上部だもんね。」


と言い

それにストレートがうなずき、


「異様に速いし…」


と言った。


お婆ちゃんは確かに速いねぇ、と笑い


「それでね、帰って来た孫が、素直に謝ったのさ。もちろん仲直りできたさ。」



「へぇ~、謝ったんだ。」


二人の少女が驚く。


「どうやらねぇ、かよちゃんが『仲直りしたかったら自分で頑張らないと‼私は手伝うだけだよって』って言ったみたいでねぇ。」


「なるほど、それでおぶったわけね。」


「さすが『突っ走りさま』だね‼」


二人の友達がニヤニヤしながら彼女を褒め称える。


「そう言えばさぁ、他に泥棒を捕まえたって話もあったよね?」


一つくくりが新たな話題を出す。

残りの二名はあぁ~‼あの事件ねと言うようにうんうんとうなずいた。


「それ有名だよ。泥棒に入られた家の主人がかよの所の神社で『泥棒を取っ捕まえてくれ』て願ったんでしょ?」


ストレートの発言に一つくくりが軽くうなずく。


「そう、そしたらかよ…『のー、のー、ご主人!ネズミを捕まえたかったら、自分で努力しなくちゃね‼私はそのお手伝いをさしてもらうね‼』て言ったらしい。」


当時の真似をノリノリでしながら


「そこのご主人まず泥棒の特徴を書いたチラシを作って、貼るのをかよに手伝ってもらったみたいだけど…彼女あーでしょ?次の日、チラシが路地の裏から屋根の上、更には隣町まで目撃されたらしいよ。」


でねっと一つくくりの話はまだ続く。


「可哀想なことになんとね、その泥棒…隣町に潜んでいたらしく、貼っていたチラシを見たご近所さんがあっ‼と気づいて通報。御用になったみたいだよ。」


話を聞き終えたお婆ちゃんが手で口を覆い、


「その泥棒も災難だねえ。」


と言い


「さすが!突っ走ってるね‼」


とストレートが嬉しそうに笑う。


「この事件、ある意味かよが捕まえったって言っても過言じゃないでしょ。」


一つくくりが得意気に言うが


それに反論するように


「でもねぇ、捕まえたのはご主人であってかよちゃんは手伝っただけさ。」




 


だけどねぇとお婆ちゃんは


「かよちゃんがご主人を立ち直らせ願いを叶えたのは間違いないさ。」


と優しく微笑んだ。


「あそこの神社は、自分で願いを叶えないといけないっていう気にさせてくれるよね。」


「そうそう。皆、かよの気迫に負けて一生懸命頑張るから…いつの間にか叶ってるていう感じかな。」


すると急にストレートが声を潜めて


「でもね、かよったらついでにお賽銭も求めるみたい…」


その話題にお婆ちゃんがはっとする。


「そう言えば孫がかよちゃんにお礼を言ったらねぇ、『毎日お賽銭いれに来てね‼』と言ってたねぇ。」


「さすが、そこも突っ走ってるわ…」


三人は顔を見合せ、ハハハと笑いあったのだった。


―――――――――――――――


この町にぽつんとある神社には願いを叶えてくれる『突っ走りさま』がいる。


でもあくまで、力を貸してくれるだけ。あとは自らの努力次第。


だが、願いを叶えてくれるために突っ走る姿を見ると不思議とその気になる。


ある時は子どもの小さい願いを叶え、またある時は悔しい思いを晴らす。そして新たに恋愛成就という願いも叶えたそうな。


しかし、その神社で願う時はお賽銭をこってり絞られぬよう気をつけて…


読んで頂きありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ