白銀の花
Twitterでの企画「合作オリテイ」の作品です。既にロサ、アイリス、リバーブ、アラム、シャルヴィというパーティメンバーになっていますが、「ifルート」として読んでいただけましたら幸いです。
『───ル──待って──ねえ──』
まだ明けきらない早朝の薄闇に意識を取り戻す。白銀の髪がさらりと視界を隠す。彼女は今見た夢に思いを馳せる。
どこかで見た森の景色、自分は誰かを呼んでいる。自身の髪と同じ白銀の花───。
くすぶる焚き火が爆ぜる音で意識が戻される。眠っていたアイリスが彼女に声をかける。
「……──シャルヴィ、眠れないの?」
シャルヴィは微笑みながら言葉を返す。
「──少し目が覚めただけよ。また寝るわ。」
その言葉を聞き、アイリスは再び毛布にくるまり眠りにつく。
シャルヴィはデウスマキアの首都ギアノシュタットの騎士だ。未だ通じ合わぬアルカンシェルへの調査。そこで出会ったロサ、リバーブ、アイリス、アラム達と行動を共にしている。彼等に同行する事でアルカンシェルの内情を知る事が出来ると判断したからだ。
───それと、もう一つ。
シャルヴィは自身の左腕の義手を動かす。金属が軋む音がする。
この義手はシャルヴィの内の魔力を消費して動く。それはアルカンシェルの人間しか持たない力だ。
───つまり私はデウスマキアの人間では無いのだ。幼い頃、私の『ちから』を資源として搾取した際に左腕は無くなった。
そうして義兄が開発した義手を着けてデウスマキアで騎士をしている。
端から見ればちぐはぐな行動だが、シャルヴィにとって幼い頃、自分を受け入れ、義手を与えてくれた義兄は替え難い宝だ。彼の為ならば例えこの身が朽ちようとも構わない。
────だけど、記憶に浅い故郷への郷愁の念。
もしかしたら、親が、兄弟が居るのかもしれない。……まだ、私を覚えて、私の帰りを待っていたら?
今の環境が辛い訳ではない。事実、自分を引き取ったヴェルギウス家の人間は皆暖かく、「私」を受け入れてくれている。
アルカンシェルを巡っていたら、いずれ故郷を訪れる事もあるのかもしれない。───その時、私を待っている家族に会ったら。
この矛盾した思考が何なのか、自分でもよくわからない。
夜が明け、『仲間』達が目を覚まし出す。リバーブだけは手足を投げ出してまだ眠っていた。ロサがリバーブの頭を殴り起こすのをなんとなく眺めていた。ふとアラムがシャルヴィに声をかける。
「……どうした?」
「──いいえ?リバーブ君が何発殴られるか数えていただけよ?」
アラムは溜め息をつき、水を汲みに行った。
───いずれにせよ、『その時』は訪れる。私は、私の心の赴くままに行動するだろう。
白む空、白銀の髪、記憶の片隅の白銀の花。
──いつか見つけてみせる。
だから、『その時』までは。