第四十八章 同居生活十三日目 コロン=アズケイトVSフェリエス
今回もよろしくお願いします。
「行きます!双炎龍!」
私は刀に炎を纏わせ、フェイリスに繰り出しました。
「はは、甘い甘い!」
フェイリスはそう言いながら私の攻撃を防ぎます。彼女が持っているのは私が使っているものと同じ刀です。
「さぁ、今度はこっちの番だ!」
フェイリスの攻撃を防ぎつつ、私は次の武器を出します。
「状態・戦斧!」
刀が光となって消え、私の手には長い柄のついた斧が出現しました。
「やあああっ!」
私は戦斧を操り、フェイリスに横薙ぎの一撃を繰り出します。
「そんなものかい?」
フェイリスは私と同じ戦斧をいつの間にか手にしていて、それで私の攻撃を防いできます。
「くっ…。」
私は一度フェイリスと距離をとります。
「はは、私の模倣が早すぎて驚いているようだね?」
そんな私を見ながら、フェイリスは得意げにそう言ってきました。
「私の能力は相手の使っている能力を模倣できるものなんだよ。だから、あんたが自分を超えない限り、私には勝てないさ。」
そう言って、フェイリスは私に戦斧を繰り出してきます。私はその攻撃を防ぎつつ、次の武器を呼び出します。
「なら…状態・無限の短剣!」
戦斧は光となって消え、私の手には短剣が現れました。
そして、フェイリスの手元に目を向けるとやはり、私と同じ短剣が握られていました。
「一瞬で…。」
私の口から呟きが漏れます。彼女の能力は瞬時に相手の能力を模倣できるもののようです。
「はあああっ!」
私はそれを監察した上で無数の短剣をフェイリスに向けて投擲していきます。
「ほう…。何本も無限に使える短剣とは…。変わった能力だね。」
そう言いながらフェイリスも短剣を投擲してきます。
私とフェイリスの間で短剣が何本もぶつかり合い、落とされていきます。
「っ…。」
そして、落とせなかった短剣は私とフェイリスの身体をかすめ、赤い筋を地面に描いていきます。
このままでは消耗していくだけですね…。
そう判断した私は武器を切り替えます。
「状態・地を抉る回転槍!」
私の手にはいわゆるドリルに柄をつけたものが現れます。
「抉りぬけ!」
私は地を抉る回転槍をフェイリスに繰り出します。
「ははっ!愉快な武器のオンパレードだねえ!」
そう言いながらフェイリスも地を抉る回転槍を繰り出してきました。
両者の間で衝突した地を抉る回転槍はお互いを削り合い、消滅しました。
「はあ…はあ…。」
「ははっ、息が荒くなっているよ?メイドさん。もう体力の限界かい?」
「っ…。そんなことっ、ないですっ…!」
フェイリスの言葉に強がりを言うものの、私の体力がだいぶ消耗しているのは事実でした。
「さぁ、次はどんな武器を見せてくれるんだい?」
「状態・私のオリジナル!」
私が次に呼び出したのはモップでした。ですがこれには刃が仕込まれていて…。
「なんだい?これはモップじゃないか。」
そう言ったフェイリスに私はモップのブラシの部分を外して、薙刀の状態にしたものを繰り出しました。
「やあっ!」
「っ!」
フェイリスは私の薙刀が身体に触れる直前に自分の手に合ったモップの柄で私の攻撃を防ぎました。
「これは驚いた。仕込んでいたのかい。おっかないメイドさんだねえ。」
そう言いながら、フェイリスも私と同じようにモップのブラシの部分を外し、薙刀の状態にします。
そして、今までのやり取りでわかったことがありました。
まず、フェイリスは私の能力を模倣し、武器を手に持ったとき、私がそれを使うまでは一般的な武器以外の使い方がわからない、ということ。
刀や戦斧の使い方はわかっても、今のような特殊な武器の使い方は把握できないようです。
次に、私が武器を持ち替えると、フェイリスの武器も自動的に同じものに切り替わるということ。
これは、上手く利用できるかもしれませんね…。
私はそう考えつつ、フェイリスと薙刀で攻撃を交えていきます。
まだこの武器には秘密があって、この薙刀の柄の部分にさらに仕込み刀があるのです。
私はそれを出すタイミングを伺います。
「そこだよ、メイドさんっ!」
フェイリスが私の薙刀を自分の薙刀で押さえ込み、地面に突き刺してきました。
「ここですっ!」
私は瞬間的に薙刀の柄を引き抜きます。
「なにっ!」
フェイリスは私が仕込み刀を抜くのを見て驚きつつも、自分が持っていた薙刀を手放し、距離をとることで私の一撃をかわしました。
「ははっ、危ないじゃないか。」
そう言いながらフェイリスは私を見据えます。
私はフェイリスから目線を外さずに考えます。
ここで、賭けに出る価値があるかを。
先ほどまでの戦いでわかったことをもう一度頭の中で整理していきます。
フェイリスは私の武器と同じものが自動で装備される。
また、フェイリスが使い方を把握していないものであれば私が意表をつくことができる。
ここまで考えて、私の思考はまとまりました。
「次で…決めますっ!」
そして私はフェイリスから距離をとり、助走をつけてフェイリスの上空に跳躍しました。
「はは、なにをする気かな?」
「状態・空を走る円刃!」
私はフェイリスの真上でチャクラムを呼び出し、投擲します。
「それは届かないよっ!」
フェイリスは私が投擲したチャクラムを自分が模倣したチャクラムで撃ち落とします。
「状態・鎖に縛られし呪いの大剣!」
次に召喚したのは私が最も使いたくない武器でした。
「…!これは!」
フェイリスが驚くのも無理はありません。私が召喚した武器はただの大剣ではないのです。
大剣を持った瞬間、手に取った者の腕に大剣に繋がった鎖が巻きつき、その動きを制限します。
簡単に言えば、大剣が手放せなくなるのです。
そして、宙にいる私はフェイリスに向けて大剣を構えることができますが…。
「くそっ!なんだこの大剣は!動けないじゃないか!」
その重さゆえ、地に足をつけたフェイリスは身動きが取れなくなりました。
「これで…終わりですっ!」
私は重力の赴くままに、大剣をフェイリスに向けて自分ごと振り下ろしました。
「そんな…馬鹿なああああっ!」
フェイリスの身体は大剣に引き裂かれ、大地を赤い血の雨が濡らしていきました。
「はあ…はあ…。」
私も大剣の重さに耐え切れず、地面に座り込みながら、呪いの効力が消えるのを待ちます。
この大剣は一度呼び出すと一定時間私の手から離れてくれないのです。
だから、私は戦いではこの武器を使いたくなどなかったのですが…。
「今回はこの武器の特性が役に立ちましたね…。」
そう呟きながら、私は呼吸を整えます。
この大剣が私の手から離れるまで、おおよそ10分。戦場で10分も立ち止まっていることなど不可能です。ですが、今は大丈夫。フェイリスは倒れましたから。
「ご主人様…。」
私はロストと戦っているご主人様のほうを見ながら、呪いが解けるのを待つのでした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。次回も読んでくれると嬉しいです。




