第四十五章 同居生活十三日目 開戦
今回もよろしくお願いします。
「あ、ご主人様!食事の用意ができてますよ!」
リルと話を終えて、リルと共に食堂に入ると、食事のいい匂いがしていた。
「おう、ありがとな。」
俺は駆け寄ってきたコロンの頭を撫でつつ、礼を言った。
「話はまとまったのかい?少年。」
そうフィリエスが俺に聞いてくる。
「ああ。大丈夫だ。」
「私と雄我なんだから、当然でしょう?」
俺がフィリエスに答えると、続けてリルがそう言った。
「それはよかったさね。さぁ、食事にしようじゃないか。」
フィリエスがそう言うと、全員が大きなテーブルに着いた。
「「「「「「「いただきます。」」」」」」」
俺とコロン、リル、凛、メア、フィリエス、シェゾが声を揃えてそう言って食事を始める。
「やっぱりコロンの作る料理はいつも通り美味しいな。」
「えへへ、ありがとうございます。」
俺がいつものようにコロンの料理を褒めると、コロンは嬉しそうに顔を赤らめた。
「ははっ、本当にメイドちゃんは料理がうまいねぇ。」
フィリエスもコロンの料理を褒める。
「この美味い食事をまた食べるためにも、奴らに勝たなきゃならんさね。」
続けてフィリエスはそう言った。
俺たちの顔に一瞬、緊張が走る。もうすぐ、ロスト達のと戦いが始まるのだ。
「おいおい、雄我ぁ、緊張してんのかよ?」
そんな俺にシェゾが声をかけてくる。
「お前は確実に強くなったんだ。今更緊張するこたぁねぇぜ?」
「ああ、そうだな。」
シェゾの言葉で緊張が解けていく。俺は…俺たちは確かに強くなったはずだ。だから、不安になったり、緊張する必要はない。
「さて、食事が終わって、少し休んだら招集をかけるさね。」
この場の全員が食事を続けながらフィリエスの言葉を聞く。
「そして、私たち『観測者』が責任を持って少年たちをロスト達の元に送り届けるさね。そこからは、君たちの戦いさ。」
「ああ、わかった。」
「さぁ、話は終わりだ。今は食事を楽しもう。またあとで呼び出すさね。」
そして、フィリエスの言葉を最後に、俺たちは食事に集中し、それぞれが『観測者』の拠点内に借りている部屋で休息をとることにした。
◇◆◇◆◇
『観測者』の施設内で、黒く、禍々しい槍をもった赤髪の女性が槍に語りかけていた。
『なぁ、黒竜。』
『なんだ?』
『お前の主は十分な実力を身に付けたはずだ。どうさね?』
『………。ああ、確かに己の主は強くなった。それで?なにが言いたいのだ?』
『もし、少年が窮地に陥ったとき、お前はあれを解放できるのかい?』
『その話はしない約束のはずだ。お前が己を回収したときにした。』
『そうだったね、悪かった。』
『だが…。』
『だが?』
『覚悟はしているさ。主のためだ。』
『ははっ、期待しておくさね。』
そう言って、女性は槍との会話を打ち切り、彼らを招集しに向かう。
◇◆◇◆◇
「いよいよか。」
フィリエスに召集をかけられた俺たちは拠点内の訓練場に集合していた。
「ああ、いよいよさね。」
俺の言葉にフィリエスが返してくる。
「ああ、少年。黒竜を返そう。」
そう言って、フィリエスは俺に呪槍・黒竜を渡した。
「ありがとう。本当に世話になったな。」
「何度も言うが、気にしなくていいね。」
「雄我ぁ、しくじるんじゃねぇぞ?」
「ああ、わかってるさ。」
フィリエスとシェゾと会話を交わした。
「さぁ、用意はいいね?」
フィリエスが俺たち全員に向けてそう言った。
「もちろんだ。」
「準備万端です!」
「当然でしょう?」
「用意も覚悟もできています。」
「…準備できてる。」
俺たちはそれぞれフィリエスに返事をした。
「ははっ!よろしい。なら、いってこい!」
そして、フィリエスの言葉が聞こえると共に、俺たちは光に包まれた。
◇◆◇◆◇
「着いたか。」
フィリエスの魔術の光が消えると同時に、視界が晴れる。
そこは広大な大地だった。正確には、森の中にある大きな空き地だろう。
周りをぐるりと回せば、大きな木が薄っすらと見える。
「さて、奴らは…。」
俺は周囲を見回しながら、ロスト達の姿を探す。もうここは敵の本拠地も当然だ。コロンたちも警戒しながら周囲を見回した。
「やはり、来ましたか。」
そんな声がふと、響いた。
「ロスト!どこだ!」
俺は呪槍・黒竜を構えつつ、叫ぶ。
「慌てずとも、今姿を見せますよ。」
そう声が聞こえると同時に、俺たちの正面の空間が歪む。
そして、歪みが消えるとそこにはロスト達の姿があった。奴らとの距離は声が届く程度で、かなり離れている。
すぐに突っ込むのは愚作か…。おれはそう考えつつ、ロストを見据えた。
「さて、ここに来たと言うことは、死ぬ覚悟があってのことですね?」
「俺たちはもう、負けない。」
「いい目になりましたね、浜崎雄我。ですが、これを見ても動じずにいられますか?」
そう言いながら、ロストは自分たちの背後を手で示した。
俺が目をそこに向けるとそこには…。
「来実…?どうして…。」
ロストの後ろにはかつては俺の恋人だった少女がいた。正確には十字架のようなものに鎖で拘束されている。
「簡単なことですよ。」
俺はロストに視線を向けなおした。
「彼女は私の目的のために必要なのです。貴方もそこの少女に誰かの器にされそうになったのではないですか?」
そう言いながらロストはリルを示してきた。
「まさか…。」
「ええ、私はこの少女を器にある人を蘇らせたいのです。」
そう言いながら、ロストは冥界王から奪った水晶を見せてきた。水晶の中には淡く光る丸いものがある。あれが彼の目的の魂なのだろう。
「どうしてだ!どうして来実を!」
「言ったでしょう?私の目的のためです。それに、この子が貴方に別れようと言ったのは、私たちの計画の一部だったのですよ。」
「な、なにを、言っている?」
「ふふ、動揺していますね?こちらには人間の精神を操れる優秀な部下がいるのですよ。純粋に君が邪魔だったので、少し操らせてもらったのです。」
「その優秀な部下って言うのは、僕のことだよ~!」
そう言いながら得意げにクローズがそう言っている。
「雄我、落ち着きなさい。」
そんな声が聞こえて、俺は背中を叩かれた。
「うぐっ。リル!なにするんだ!」
「相手のペースに飲まれないで。ロストが今更誰を器にしようが問題ないでしょう?大事なのは私たちが彼らを止めること。彼らを止めれば、貴方の大切なあの子も守れるんだから。」
「ああ、確かにそうだな…。ありがとう、リル。」
「わかればいいのよ。」
「ふふ、動揺を誘う作戦は、失敗のようですね。」
俺とリルの様子を見ながら、ロストはそう言ってきた。
「私も、貴方たちを完全に排除するまでは、儀式を進めるつもりはありません。ですから…。」
そう言いながら、ロストは一歩下がった。
「クローズ、お願いしますよ。」
「オッケー!いっくよー!」
そして、クローズがロストと入れ替わるように一歩前に出てそう返事をする。瞬間、彼と俺たちの間に無数の魔法陣が展開した。
「な、なんだ?」
「ゴーレム召喚!やっちゃって~!」
魔方陣の中から土でできた兵士が現れる。
「おいおい…。いくらなんでも多すぎだろ。」
その数はロスト達が見えなくなるほどの多さだった。俺たちとロストの間にゴーレムの大軍が現れる。
「雄我、下がって。」
「雄我さん、ここは私が。」
数の多さに驚く俺の前にリルと凛が立った。
「凛、どのくらいいけるの?」
「半分はお任せください。」
「そう。じゃあ、一瞬で済ませるわよ!」
リルは魔法の国で回収してきた杖を構え、凛は祈るような動作をとる。
「術式解放…拡散する光の刃!」
リルが杖をとこ向きに薙ぎ払う。よく見れば、リルの杖は柄の部分が短くなり、剣の柄のようになっていた。そして、琥珀の球が薄く伸び、光の刃になっている。
宣言どおり、一瞬でゴーレムの大軍の半分が切り崩されてしまった。
「すげぇ…。」
俺の口から、そう言葉が漏れる。
「ふふっ、当然よ。」
リルは得意げに俺にそう返した。
一方、凛も天界で受け取って来た力を発動していく。
「いきます!神力結界・囲い槍!」
凛がそう叫ぶと、残っていたゴーレムたちを透明な光の壁が囲い、閉じ込めた。瞬間、壁の全ての面から無数の光の槍が壁の内側に放たれる。
光の壁が消えると、そこにはゴーレムの砕け散った残骸しかなかった。
「あははっ!君、強くなったんだね!」
ゴーレムが崩れ去り、ロスト達の姿が見える。クローズは凛の方を見ながら楽しそうに笑っていた。
「さぁ、みなさん。今回は全力で構いません。殺しなさい。」
「オッケー!」
「御意…!」
「了解さ。」
「応ッ!」
ロスト達はそう会話を交わし、俺たちに向かってくる。
「こっちもいくわよ!」
「いきます!」
「はい!」
「…任せて。」
リルが声を上げ、コロン、凛、メアがそれに応える。
「さぁ、今回も楽しませてくださいね?」
ロストはそう言いながら、俺に突っ込んでくる。
「いくぞ!黒竜!」
『任せろ。』
俺は黒竜を持つ手に力を込め、ロストと衝突した。
最後まで読んで頂ありがとうございました。完結まで突っ走っていく所存です。よければ最後まで、お付き合いください。




