第四十三章 同居生活十二日目 魔法の国・天界
今回もよろしくお願いします。
「はぁ…。帰ってきたくなんてなかったんだけどね。」
そんな風にぼやきながら私は魔法の国の土地を歩いていく。
私は雄我たちと別れて、一度魔法の国に戻り、解放していない魔術を回収してくるようにフィリに言われた。
「さて…久しぶり…ね。」
そして私はかつてレイスと過ごした場所に来ていた。
今はもう誰もいない大きなだけの屋敷。
「空っぽ…。寂しいものね。」
そんな風に呟きながら屋敷の中に入る。私の目的はこの屋敷の地下にある。
「…。」
ふと、レイスとよく過ごした部屋が目に留まった。彼とのたくさんの思い出が一瞬で湧き上がるように思い出される。
「ふふっ…。」
無意識に私の口から声が漏れていた。
「あははっ…。」
そして、頬を温かいものが伝わっていくのを感じる。
「だめね…。いろいろ思い出しちゃった。」
そんな風に呟いて、私は目元を拭う。
「今は、雄我のためにあれを回収しなきゃね。」
そして、自分に言い聞かせるようにそう声を出す。
思い出に浸ることなんていつだってできる。でも、ロスト達との戦いに勝てなければ、思い出に浸っていられる未来はないのだ。
だからこそ…。
「行かなきゃね。」
私は屋敷の階段を下りる。階段が終わって、目の前には扉がある。
私は扉を開けて中に入った。ここは地下の物置だ。扉を開けると同時にほこりくさい空気が出てくる。
「けほけほっ…。いくらなんでもほこり溜まりすぎでしょ…。」
そうぼやきながら、私は物置の中に入った。そして、物置の一番奥…魔方陣で守られているものがある。
「これを見るのは久しぶりね…。」
そこにあったのは先端に大きな琥珀の球がついた杖だった。柄は真っ直ぐで、魔法使いの曲がった木の杖のイメージとはまったく異なるものだった。
「レイスが丁寧に封印してくれたのよね。」
彼がこの杖を封印する時に言ってくれたことを思い出す。
『君はもう戦わなくていい。これからはただの可愛い女の子として、私の傍にいて欲しい。』
その時私は泣きながら彼に抱きしめてもらったのだった。
「懐かしいなぁ…。」
そんな風に呟きながら、私は杖の封印を解く。
「レイス、ごめんね。ありがとう。」
そして私は杖を手に取った。もうこの屋敷に戻ってくることはないかもしれない。でも、いつかはここに雄我たちをここに連れてくるのもいいかもしれない。
私は物置から出て、階段を上がる。そして、屋敷の玄関から外に出る。
「いってきます!」
誰にもいない屋敷に、そこでの思い出にそう別れを告げて…。
「雄我、待っててね。」
そして私が今一番大切に想っている人のところへ、私は駆け出した。
◇◆◇◆◇
「本当にいいのだな、凛?」
「はい、お父様。」
私は雄我さんたちと別れて、一人で天界に戻っていました。天界に戻った私はすぐにお父様…神王に会いました。フィリエスさんが言っていたことは本当だったようで、お父様も事情は全てわかっているようでした。
「なら、我は何も言わん。ただただお前に戦う力を授けよう。」
「ありがとうございます・・・!」
私は深々と頭を下げて、お父様にお礼を言います。
「うむ…。では…。」
お父様が私の手を取り、強く握ってきます。お父様の手の温もりが伝わるとともに、私の中に力が注がれていくのを感じました。
「よし、これでその力はお前のものだ、凛。」
「はい、本当にありがとうございます。」
「構わんさ…。それより…。」
「はい?なんですか?」
お父様は私の顔を見て微笑を浮かべながら
「彼にサインはしてもらったのか?」
そう聞いてきました。
「えっ、えっ…。えっと…。」
お父様が婚姻届の話をしているのだとわかった私は返答に困ってしまいました。頬が熱いです。
「はは、その様子だとまだのようだね。彼も罪な男だ。凛のように可愛い子が想ってくれているのにな。」
「おっ、お父様!」
私は声を出してこの話題を打ち切りました。
「はは、凛は相変わらず恥ずかしがり屋のようだ。」
そう言いながらお父様は私の頭を撫でてくれました。
「さて、すぐに戻る必要はないのだろう?彼らも訓練に時間をかけているという話だったし。」
「はい、まだ時間はあります。」
「よろしい。なら、天界の者たちと模擬戦をして、力の使い方に慣れていきなさい。神官に話は通しておく。」
「わかりました。」
そう言って私は神官たちが鍛錬に使う場所に向かおうとしました。するとお父様が
「凛。」
と私を呼び止めます。
「なんですか?」
私は足を止めてお父様のほうに振り向きます。
「無事に帰ってきてくれ。そしてその時は彼らを連れてくるといい。私は案外時間に余裕があってね。話し相手が欲しいのだよ。」
「わかりました。その時は、ぜひ。」
そう言って私はお父様に微笑み返し、歩き始めます。
「雄我さん、大丈夫でしょうか…。」
そんなことを呟いて、彼のことを考えながら私は鍛錬の場へ向かうのでした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。次回も読んでくれると嬉しいです。




