第三十七章 同居生活十日目 朝(四)
お久しぶりです。今回もよろしくお願いします。
「さてっと…。リーダーは戦い始めちゃったけど、僕たちは誰を相手にしよっか~?」
そう言いながらピエロのような服を着た男…クローズがこちらを見てくる。
「フン。誰が誰と闘ろうが関係ねぇだろ。ただ潰すだけだ。」
クローズに答えつつ、ロードがこちらを睨んできた。
「まあ、俺は楽そうだからあの女にするがなっ!」
そう言うと同時にロードは私に突進してくる。
「コロン、凛、それから…。」
私の目線に気付いた死神の少女が名前を名乗る。
「メア…。」
「ん…、じゃあ、三人とも負けないようにね?」
「余裕こいてんじゃねぇぞ!オラァッ!」
三人に声をかけた私にロードが叫ぶ。瞬間、私がいた位置にロードがたどり着いていた。
「空を駆ける足。直線的な動きなんて、防ぐまでもないわよね?」
私はロードと距離をとりながら彼の背後に着地する。
「チッ。」
ロードは舌打ちをしつつ、私の方に向き直る。
「かわすだけじゃあ、勝てないぜ?」
「知ってる。穿つ氷」
ロードの言葉に答えつつ、私は次の魔術を放つ。
ロードの足元から氷の棘が突き出す。
「フン!」
ロードはそれを足で踏み潰した。
「そんなもんかよ?」
「なら…交差・氷炎槍!」
私は自分の左右に魔方陣を展開し、そこから氷と炎の槍を出現させ、同時にロードに放った。
「効かんな!」
ロードは両腕を交差し、それを振り広げる動作で私の魔術を砕いた。
「今度はこっちの番だ。来い、全てを砕く刃。」
ロードの声に応えるように、地面に魔法陣が広がり、そこから刀を長く、太くしたような剣が現れた。
「俺の一撃は…重いぜッ!」
剣を掴むと同時にロードが私に向かってくる。大柄なロードには不釣合いな、ものすごく早い動きだった。
「ッラァ!」
ロードは剣を横薙ぎに私に向かって振る。空を駆ける足では回避が間に合わないだろう。
「守護」
ロードの剣が私に対して向かってくる方向に私は魔術を展開する。
「なっ!」
だが、私の体には重い衝撃が走った。私はロードが剣を振り切った方向に吹き飛ばされる。
「ふん…。この刃は斬るんじゃねぇ、砕くんだよ。」
ロードが私を見ながらそう言い放つ。
私の意識はロードの言葉を聞き終わると同時に途絶えた。
◇◆◇◆◇
「あれれ~?意外と決着が早いね!まだこっちは誰と当たるか決めてないのにね~!」
そう言いながら目の前の男は楽しそうに笑います。
「そんな…リルが負けるなんて…。」
「あはは~!僕たちは強いからね!ね?フェイリス?」
「そうだね、じゃあ、私も出ようかね…。」
「では、私も参りましょう…。」
「来ます…。メア!お願いしますよ。」
「…わかった。」
「影華、私があっちのメイドをやる。あんたは死神のほうな。」
「御意。」
フェイリスという女性が私に、影華と呼ばれた男がメアに向かってきます。
「行きます!」
私はフェイリスに向かって刀を振ります。
「無駄だね。」
フェイリスは私の刀をいつの間にか持っていた刀で弾きました。
「え…。」
その刀を見た私は動揺します…、なぜなら、その刀は…。
「あんたと同じ物さ、メイドさん。」
フェイリスはそう言いながら不気味に笑いました。
「あんたは私に勝てない、でも、私もあんたに勝てない。そう言うことだよ。」
フェイリスはそう続け、私に刀を振ってきます。
「ふふ、あんたは自分を超えられるか…。見せてもらおうかね。」
私はフェイリスの刀を弾き、攻撃を加えていきます。
そうして私は、フェイリスと攻撃を交え続けるのでした…。
◇◆◇◆◇
「最初に申しておきますが、降参してくださいませんか?」
影華という男は私の前に立ちながらそう言った。
「それは…ない!」
私は答えると同時に愛用の鎌を彼に向けて振るう。
「そうですか…。残念です。」
影華は私の鎌を自分の刀の鞘で弾いた。
「では、参ります…。」
そう言った瞬間、影華の姿が私の前から消えた。
「…!」
そして…
「こちらですよ?」
影華の声が聞こえると同時に、私は背中に衝撃を受ける。後ろから影華が刀の柄で私を突き飛ばしたのだ。
「…。」
私はすぐに立ち上がり、鎌を構える。
「どうして後ろに…という顔ですね?」
私を見つつ。影華はそう言った。
「まだ、貴方にいうようなことではありません。主はただ、無力化しろとおっしゃっただけ…。ならばロードのように気絶させるのもありでしょう。フェイリスのように足止めするのもよいでしょう。」
すらすらと影華はそう語る。
「ですが私はどちらもできません…。ですので…。」
そう言いながら影華は私をしっかりと見つつ、
「私は貴方の背後を取り続けましょう。」
そう言い放った瞬間、また影華の姿が消える。
私はすぐに自分の背後を見るが、影華はいない。
「っ!」
そしてまた、刀の柄で突かれる。
「貴方は私を捕らえられませんよ。」
◇◆◇◆◇
「さてっと…。僕の相手は君なのかな~?」
そう言いながらピエロ服の男…クローズが私をにやにやした笑みで、楽しそうに見てきます。
「そ、そうです!」
私は威勢を張って、大きな声でそう返します。でも、私にはそれしかできません。それは私が一番よく知っていることです。
「あはは!それは虚勢だね?君は戦う力がないんだ!」
そんな私の心の内を知ってか、クローズは笑います。
「ダイジョーブ!僕は闘えない子には何もしないよ?なら僕は周りの片がつくのを見てればいいんだもん!楽でよかった~!」
心の底からそう思っているとでも言うように、彼はそう言います。
私は自分の周りを見回しました。リルは気絶してしまって、コロンも苦戦を強いられています。メアと名乗った死神の子も、コロンと同じようでした。
「あはっ!あとはリーダーとあの男の子だけだね。まあ、もうすぐ片はつくと思うな~。」
クローズも同じように周りの状況を見て、そう言いました。
「雄我さん…。」
私の口から、そう言葉が漏れます。彼は…大丈夫なのでしょうか。
でも、戦う力のない私には、彼の戦いを見守ることしかできないのでした。
最後まで読んでいただきありがとうございました。次回もいつになるかわかりませんが、読んでくれると嬉しいです。




