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愛に飢えた俺と愛を振りまくメイド  作者: 読書家
平和な日常とリルとの遭遇
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第十二章 同居生活五日目 朝(五)

今回もよろしくお願いします。

 「レイス!…なのよね?」


 「ああ、その通りだリル。君と会うのはかなり久しぶりな気がするが、どのくらいになるのかな、君の前から消えたのは。」


 「そうねぇ…あなたは時間の感じ方が他人と違うからね…。あなたの体感時間で一年よ。」


 「ふむ、では普通の人間で言うと、4日と言ったところかな?やれやれ、私の特殊な体質にも困ったものだね。」


 「ふふっ、そうね。でも今はそんなことはどうでもいいの。とにかくおかえりなさい。もう絶対に私から離れないで…。」


 そういいつつリルは雄我の身体に抱きつく。それを見たコロンは唇をかみ締めながら、二人を睨んだ。


 「ご主人様の身体を…返してください…。」


 「それは無理な話よ。ねぇ、レイス?」


 コロンに対してリルはそう答えつつ、雄我…レイスに聞いた。


 「いや、この身体は本人に返すよ。それが自然のことわりというものだろう、リル?」


 だが、レイスはリルの言葉をあっさりと切り捨てる。リルの顔が歪んだ。


 「え…待ってよ、どうしてそんなことを言うのかしら?意味がわからないのだけれど…。」


 リルは震えながらレイスから離れる。まるでそれは恐ろしいものを見ているかのように。


 「ふむ、まぁそこまで引くことでもないと思うのだがね…。」


 レイスはそう溜め息をつきながらコロンの方に向き直る。


 「すまないね、そこのお嬢さん。もう少し待っててくれるかな?君の大切なご主人様にこの身体を返すためにリルと話をさせてほしいんだ。」


 コロンは雄我…レイスを見つめる。彼の目は雄我のものとは違う雰囲気を持っていて、それが悪いものではないとコロンは判断した。


 「わかりました。私はここでご主人様の帰りを待ちますね。」


 「ふむ、話が早くて助かる。本当にありがとう。」


 そう言いつつ、レイスはリルに話しかける。


 「さて、リル。私は君の行いを責めたいわけではないし、責める資格はない。君がこんなことを行うに至ったのは私が君の前から消えたせいでもあるからね。」


 「………別に、レイスが悪いわけじゃないわ。私はただ、貴方を呼び戻しただけに過ぎないもの。」


 「ふむ、それには感謝しているよ。そこのお嬢さんと雄我君には申し訳ないが、おかげで君ともう一度言葉を交わすことができる。私は本当に幸せ者だ。」


 「感謝しているなら…だったらいいじゃない!私の傍にいてよ!どうして身体を返すなんていうのよ!」


 リルはレイスに向かって叫んだ。彼が身体を返すといったのが相当ショックなのだろう。


 「さっきも言ったが、私が消えるのは自然のことわりだからね。一度死んだものはたとえどんなことがあっても生き返ることはない。仮に生き返ったとしても、それは『偽者』だと私は思うんだ。人の生涯というのは一度しかないからこそ価値があるし、意義があって意味がある。君だってわかっているはずだよ。」


 リルが叫んでもレイスは落ち着いたままだ。同様することもなく、リルに言葉を返した。


 「それは……それでも、例え『偽者』といわれようと、私は貴方に傍にいてほしいの!どうして、どうしてわかってくれないの?貴方はいつもそんな風だったわ。そうやって理屈を並べて、私から離れようとする。どうしてわかってくれないの…。」


 「…そうだね。確かに私は君を遠ざけるような素振りをしてしまったかもしれない。でもね、リル。これだけはわかってほしい。私だってもっと君の傍にいたい。もっと君と愛し合っていたいよ。」


 「だったらなおさらよ。せっかく戻ってきたのに…。どうしてまた私から離れようとするの…どうしてなのよ…うぅ…。」


 リルの目から雫が落ちた。レイスはそれを見て、悲しそうな顔をする。だがそれはすぐに愛しい者を見る目へと変わった。


 「リル、わかってくれ。私と君が愛し合うために雄我とそこのお嬢さんとの愛を引き裂くことは私たちには許されない。そんな資格は私たちにはないだろう?」


 「嫌、嫌よ…。どうしてなの…。どうしてそんなことをいうのよ…。私は…私はただ…貴方とずっと一緒に過ごしていたいのに…。」


 「そうだね。私もできることならそうしたい。君に悲しい思いや、寂しい思い、辛い思いなんてさせたくない。ずっと二人でいたいよ…。だが、それは叶わないんだ。たとえどんなに残酷なことだとしても、これは受け入れければならない現実なんだよ。」


 「………だったら…だったら私が…私がここで死ぬわ…貴方と同じ場所に行きたいから…!」


 「…そんな悲しいこと言わないでおくれ。君を死なせたくない。」


 そう言いながらレイスはリルを抱きしめる。たとえ雄我の身体だとしても、リルはレイスの確かな温もりを感じることができて、それがとても愛おしくて、リルは泣きながらレイスを抱きしめる。


 「嫌…私のこと、離さないでよ…好き…貴方のことが好きで、好きで、こんなに愛しているのに…。」


 「私もだ。私も愛している。君が愛おしくておかしくなりそうなほどにね…。だからこそ、君とこうして話すことができてよかった。もう思い残すことはない。本当にありがとう。」


 「嫌よ…待ってよ…お願いだから…私の傍にいてよ…私を守ってくれるのは、愛してくれるのは貴方だけじゃない…。」


 「そうだね、でもだからこそ言おう。私はもうこの身体に居られない。この身体は本人の魂があってこそ意味があるんだ。人間っていうのはそういうものなんだよ。身体がただの器だなんて、そんなことは君も言わないだろう?」


 「それは…そうだけれど…。」


 「それとね、君を守ってあげられる人がここに居るんだ。雄我君だよ。彼なら、私に代わって君を守ってあげられる筈だ。彼にはその力がある。私が保障するよ。だから、私が消えたら、彼に頼りなさい。彼なら君を支えてくれる。」


 「そんな…でも私は…貴方じゃなきゃ、嫌なのに…。」


 「わかっているよ。君がそう簡単に受け入れられないことも。だから最後に君にこれを託そう。」


 そう言いながらレイスはリルの手を開かせて、そこに自分の手を重ねる。彼が手を離すとそこにはレイスの目と同じ琥珀色の石がはめ込まれたネックレスがあった。


 「これはお守りだよ。このネックレスには私の魔力が込められている。君がいつでも私を感じられるように、君がいつでも私のことを思い出せるように、ね。」


 「………あったかいわね…このネックレスから貴方の温もりが、優しさが伝わってくる…。本当にいいの?もう会えないのよ?」


 「私が君を守れるのはここまでだ。だから最後に、本当に最期に言わせてくれ。」


 そう言いながら彼はより強くリルを抱きしめて、リルの心に届くようにしっかりとリルに告げた。


 「君を心の底から、この世界の誰よりも、本当に本当に愛しているよ。」


 そう言い終わると同時に雄我の身体から力が抜けた。


              ◆◇◆◇◆


 「やぁ、待たせてしまったね。」


 「あぁ、終わったのか。本当にいいのか?あんたは俺さえ消せばこの世に残れるんだぜ?」


 「ふっ…今、そんなことを言われるとそうしたくなってしまうよ?だがね、リルは理解してくれたよ。彼女はとても強くて、そして弱い。だから最期に君にお願いがある。おこがましいと思うが、どうだい?聞いてくれるかな?」


 「ああ、なんだよ?この際だから聞いてやるぜ?俺にできることならやってやるよ。人の最期の頼みだ。聞かせてくれ。」


 「ありがとう。君は本当に優しいんだね。だからこそ、君だからこそこれを頼めるよ。私の願いはただ一つだ。彼女を、リルを私の代わりに守ってあげてくれないか?彼女を傍においてあげてほしいんだ。もう彼女には帰る場所がないからね。」


 「それだけか?」


 「ああ、それだけだ。」


 「いいぜ。わかったよ。あんたの最期の頼み、確かに聞き届けた。俺に任せてくれ。」


 「ありがとう、本当に。最期に君のような少年に出会えてよかった。では、私はここでさよならだ。リルを、よろしく頼む。」


 そう言って、レイスの魂が消えていく。俺は自分の身体へと戻っていく。


 『任せてくれよ、レイス。お前の願いは、俺が確かに受け取ったよ。』


 俺は心の中でレイスにそう告げた。



               ◆◇◆◇◆


 「ん…、戻ってこれたかな?」


 俺は目を開けた。目の前にはコロンの顔がある。


 「ご主人様!よかった!戻って来れたんですね。私は、私は…うぅ…」


 「ああ、心配かけてごめんよ。助けに来てくれてありがとな。愛してるぞ、コロン。」


 そう言いながら俺はコロンを抱きしめた。


 「ん…ご主人様…あったかいです…」


 そして俺はコロンを離してリルを見る。


 「『彼』…レイスが最期に俺に頼んだんだ。お前を守ってくれって。お前、帰る場所がないんだろ?だったら、俺の家に来いよ。今から俺がお前を守ってやる。お前が寂しくないように、辛くないようにな。」


 「…レイスったら…余計なお世話を焼いていくのね…。本当に、貴方を信じていいのね?」


 リルは俺に問いかける。俺はリルの目を見つめ返して、はっきりと答えた。


 「もちろんだ。俺を信じろ。俺がお前を、守ってやるよ。」


 それは、リルにとってレイスがリルを守ると、愛すると言ってくれたときと同じ表情だった。


 「ふふっ…、ありがとう。じゃあ、私は今から、貴方の傍にいるわ。」


 そう言って、涙を流しながら笑ったリルの首にはレイスの目と同じ琥珀色の石がはめ込まれたネックレスが光っていた。

最後まで読んでいただきありがとうございました。次回も読んでくれると嬉しいです。

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