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第九話 宿敵現る! 謎の美少女の正体は!?

ビルの山脈の向こうには真紅のイデアが光り輝いている。実に買い物日和だ。

「お客様本当に良くお似合いですよぉ~ガタイいいですから何でも似合いますねぇ、あ、こっちのサーモンピンクも似合うと思いますよぉ」

「最新式グラディウス社製クォーク端末入りました~」

「書籍含めて13点で17万5823円になります」

「カット終わりましたーお疲れ様ですーこんな感じでいいっすかー」

「お客様の本日のお会計はフルコースで7万5000円になります」

久々に旧都心部に繰り出して買い物をしまくった…始めてこんなに買い物したな…我ながら金遣いが荒い。貧乏暮らしが長かったせいで金の使い方が分からない事も有るのかもしれない。

「しかし腹一杯になるには、安物の店だけをはしごしても、10店舗は行かなきゃとても腹が膨れないな。1食最低1万強か…」

力は便利だが、やはりエネルギーが大量に要るな。本屋で買った昆虫図鑑と蜘蛛図鑑に何かヒントが有れば良いな、昆虫の神秘の力を得たいものだ。

寂れた公園のベンチに腰掛け、新しく買った腕輪型端末の画面を立ち上げる。脳波パターンが未だ完全に同期していないらしく、ニューロネット画面を開こうとしてメールを開いてしまった。幾つか来てるな。

『金払え糞が鬼』

『黒田忍法帳でゴザル』

『あやまります』

『グラディウス社御案内』

色々来てるな、案内を見る。総文字数9000万文字以上の誰も読まないであろう書面を一気にスクロールして閲覧した。恐ろしい事に一瞬にして暗記できた。

「しかし社史が図版付きで100頁も有るのに補償請求についてのページは5頁だけか」

内容を照らし合わせてみると正確に記憶していると分かった。さて、増幅の力を得たのだろうか?この位は前から出来た気もする。それに柳沢のように体が強化されるわけでもない。もっと自分の能力を把握しておいてから能力を奪うとするか。

 参考に買った変身型として覚醒した男の自伝の頁を一気に捲って閲覧して記憶する。内容は人型のハキリアリに変身した男の話だ、彼の自伝にはこう書いてある。

『…すぐに分かりましたね。ええ、そうです。起きた途端に自分は大きなハキリアリだって分かったんです。ええ、調べてもらったら黄色型でした。ええ、そのお陰で今の地位を得たのです…』

やはり黄色の能力に分類されるものは瞬時に能力を把握できるのか。やはり俺は黄色ではないか、黄色の要素は薄いらしい。

彼はその能力を活かしてキノコを栽培して金持ちになった。結婚もしたらしいが子供は残せなかった、代わりに慈善事業に大きく貢献したらしい。

「俺は才能値が4しか計測出来ない事を考えると、カラー調査も意味無いだろうしな。あれは才能紙の詳細版みたいなものだしな。それに下手に調査すると情報が漏れる…それは拙い」

続けてメールをチェックする。メガネのは俺が買い物をするような場所に来ると自動的に買い物スポットやお買い得情報を教えるものなので、別に見なくてもいい。謝っているメールを開く。

『ごめんなさい わたしのせいで いやなおもいをさせてしまいました あした ほうかごあやまります』

ペリーだろうか?なんでアドレスを…大方豊臣が教えたんだろう。しかし下手なメールだ、どうも本格的に友達がいないらしい。別に嫌な思いなんてしていない、むしろ決意を口にした事で後戻りできない心積もりになったので、むしろ勇気が湧いた。俺は前向きなのだ。あまり人からはそう思われないが自分では前向きのつもりだ。了解したのでまた明日会って話そうと返した。

「その辺も伝えるかな、俺はよく誤解されるわけだしな」

もしや顔の所為だろうか、自分で言うのもなんだが美形と言えない事も…その所為でひどい目に有った事もあったな。さて最後の迷惑メールはどうするかな?

「とりあえず開くか…ふん。要は金の無心か」

復讐相手に金をせびられるとはな、文面からして傲慢だ。払うつもりは無いが罪を自覚するなら考えてやるから死に装束の準備でもしておけ、白装束の金位なら貸してやると返信する。

「メールチェック終わりっと…さて、そろそろ出てきたらどうだ?独り言聞いててもつまらないだろうに」

「多少はできるみたいね。イデア能力が無いとは云え、流石は私と同じ『星の子供達』ね」

朝見た美少女だ。背は150、髪は燃えるような赤に瞳も赤、生意気そうな顔立ちの女の子だ。今朝と違い上はジャケットに下はズボン靴はブーツだ、動きやすい格好だな。いかにも元気がよさそうだ。乳が小さいので俺の好みではないが、こういう少女が趣味の人も居るらしいから需要はあると思う。

「なにそれ?」

「…『星の子供達』よ。教団に居たのなら知ってるでしょう?」

全く知らん。

「俺に当時の記憶は無い。覚えていないというよりは、記憶する機会が無かった。人とは会わなかったしな」

「その割にはあの方達の事を知ってる風な口ぶりだったわね。私に嘘は通じないからね」

どうやら知らないようだ。教団が崩壊した日に起こった事を、なら話す事も無い。俺より年下に見えるし、大方哀れな信者だろう。助ける気も復讐する気も無い。

「俺に何か用か?」

「だから『星の子供達』よ。知ってるでしょ!?」

何度も言わなくても分かるよ…だがどうしよう、知らないと拙いんだろうか…何かの役に立つかな。

「何なんだそれ?俺は虹とか呼ばれてたけど他にもいるのか?」

「あんた…私の事覚えてないの?」

「髪の色も違うから(みこと)じゃないな、なら他に同い年くらいの知り合いの女は殆どいない、同級生でもないみたいだしな」

「誰よ…命って?女?今朝部屋の外に居た女?」

なんか怒っているな、怒らせる様なこと言ったかな。礼儀を欠いているのはお互い様だが、俺の方が年上かもしれないから一応挨拶するか。

「今朝は挨拶しなくて申し訳ない。遅ればせながら始めまして、俺の名前は有馬田谷 廻だ。教団には酷い目に遭わされたが、教義自体は否定しな…」

「殺す…言うに事欠いて初めましてだ?殺す…ぜってぇ殺す」

なんか怒ってるな。周囲の温度が上昇している。パイロキネシスか、彼女の頭上に無数の火の玉が集まる。色が白いな、かなりの温度らしい。火というよりプラズマか。

「ちっとお灸をすえるわよ。108の火の玉を同時に放つ私の阿修羅流星郡を…」

石油糸(チャッカ)発射!』

解説しよう、要するに爆発する糸だ。それを掌から塊状にして火の玉の群れに向けて掌の力だけで投擲した。全く予備動作が無いので何かが突然飛んできたとしか思われないだろう。

「え?っきゃ!!」

彼女の頭上で大きな爆発が起こる。緑の男に舐めさせられた苦汁のお陰で、爆風は強いと分かった。公園の地面の沈み具合からして彼女の体重は50kg以下だ、簡単に空中に飛ぶだろう。耐えられるかどうかは分からないが衝撃はあるはずだ。彼女は殺す気は無いので救出するか。

釈迦衆生救済糸(カンダタネット)

解説しよう、カンダタという人は昔悪い事をしたが何やかんやあってお釈迦様に助けられ…いや助けを自ら拒否した様なものか、名前変えようかな、縁起悪い気がする。

「気絶しているが無事みたいだな。かなり戦闘力が低いが、何者なんだろうか?」

彼女は白い糸でぐるぐる巻きにしたが、爆発の音を聞きつけた人間が来るかもしれないので糸を解いて彼女を負ぶって退散する。面倒はごめんだ。余波で公園の遊具が融けているが、直すのにいくらかかるんだろうか。

「おいスゲー音がしたぞ」

「呪いじゃ~将軍様の呪いじゃ~」

「おお天よ…雨の恵みによってこの火を消してくだされぉ」

この辺変な人多いな、さすが繁華街の近くだ。


「うぅん…ここは?あれ何して…」

「気が付いたか、此処は喫茶店だ。外傷も無かったんで此処に運んだ」

店には迷惑だが別にいいだろう。

「あんた…助けてくれたの?というか何があったの?」

「その前に名前教えてくれないか?何か思い出すかもしれないから」

「う…うん。火野宮 ルナ だけど…思い出せない?」

打って変わってしおらしい態度だな。しかし火野宮か、確か教団のスポンサーの中にその名前があった。だが彼女個人は知らないので首を振るしかない。

「なんで?何で覚えててくれなかったの?結婚しようって言ったじゃない!?」

初耳だ。

「何時の話だ?ちなみに俺が喋れるようになったのは…大体6~7才の頃だ。その後の事は大体記憶しているが、君に会った事はないと思う」

「…!?そんなはず無い…だって…」

「言いたか無いが、教団には心を操るA級催眠能力者が居た」

青ざめた顔をしている。心当たりが有るのか、催眠に気付かれるとは二流だな。

「ところで…俺に何か用があったのは…その…結婚についてか?俺は未だ結婚できる年齢でもないし、まだ高校も卒業していないんだが」

「違うの…うんそうじゃなくて、違うの。結婚は…いやそうじゃなくて本気で…いや…」

大分慌てているな。家が火事になった栗鼠みたいだ。そんなのいるのか知らないが。

「どうだろうか、お互い考える時間が必要だと思うんだが」

「えっと、うん。そうだよね。うん流石だと思う」

かなり混乱しているな。まぁ放っとこう。俺には催眠を解く能力とかは無いので出来ることが無い。

「勘定は俺が持つから、ではお先に失礼。また会えると良いな火野宮さん」

社交辞令を言ってレジに1万円を置いて店を出る。今日は出費が多いな、金を使ってみて分かったが俺は破産するタイプだな。それが分かったのは、まぁ収穫だ。


「うん、筋がいいな君は、うん実に良いよぉ」

実力派のサラリーヒーローにそう言われるとちょっと嬉しくなる。ミットに向かってグローブ付けて殴っているだけだが、まさか道場主に直接指導してもらえるとは思わなかった。大きな体育館並みの大きさの道場の中にはコーチだけで10人以上居るから幸運だな。

「ありがとうございます、アクシリアさん」

ミットにも上手い下手があるのか、何というか殴りやすい。殴っていて気分がいい。

「いいってことよ、才能値が低くたって頑張れるって一緒に証明しよう。オー!」

「オー!」

挨拶したときに才能値を聞かれたが特に笑われはしなかった、ちなみに彼の才能値はサラリーヒーロー協会発表によると99だ。一般人としては充分だが、職業ヒーローとしてはかなり低いしイデア能力も持って無い。何せ生命が関わる仕事だ、高いにこした事は無い。二桁の上にイデア能力を持たず一線で活躍するのはこの人ぐらいだ。割と尊敬している。見た目はさえない中年だが格好よく見える。純日本人なので、アクシリアはヒーローネームなのだ。

「アクシリアさんは憧れでしたから、直接指導して貰えて嬉しいです。貴方なら三桁の壁もいつか超えてくれると思います」

三桁の壁とはBCの間の壁だ。C級ヒーローやC級ハザードは才能値1から始まって大勢いるが、B級の下限は公式に言われているわけでは無いが100である。これが三桁の壁だ、ある種の判断基準にもなっている。この壁を越えた人間は今のところ居ない、A級にはさらに高い壁もある。ちなみに普通才能値は一生上がらないとされる。

「はは、そうだね。いや実はね。そのために今日は道場にいるんだよ」

普段は居ないのか、最近やはり運がいいな、もしや幸運操作能力も得たのか?

ミットを仕舞ったので休憩らしい。なんだかんだで20分くらい続けていたので当然か。

「ありがとうございました」

礼は大事だ。サイコメトリー能力…正確には残留情報収集復元再構成能力によって、彼の24年に及ぶ戦闘経験を貰えたのだからお礼は幾ら言っても足りない。この能力は変身したての時には使えたがしばらくは使えなかった。

どうやら発動条件が在るらしく、探査糸に関わらず俺の体の一部を相手に接触し続けると発動するらしい。どうもPSY能力というよりは、感覚の強化と情報処理に因る能力らしい。相手の情報を連続的に得る事で相手の生涯や能力を立体的に把握する力らしい。

『恐らく入手した情報を俺の中に取り込む際に多少のズレも在るだろうが、追々修正すれば良い』

要は役に立てば良いのだ。道場の鏡の有る場所に走って行き、鏡に向かって拳を振るう…くくっ、我ながら隙の無いパンチだ。今のテクニックなら緑の巨人も完封できる。

「皆聞いてくれーそのままでも良いけど耳だけ貸してくれ」

アクリシアさんが道場に響き渡る声で皆に呼びかけた。

「みんなも知っていると思うが、今週の月曜日に核爆発が有った」

 周囲がざわめく。そう云えばさっきニュースに流れていたな、公式発表は随分遅かったな。

「無牢組の記録によると、核爆弾を所持していたのはフレアコンドル…元0級だ」

「焼き鳥か、まさかヤクザにまで落ちるなんてな」

「あぁ降格された人か」

「核爆弾なんて何に使うつもりだったんだ?自爆事故だってニュースで言ってたぞ」

 そんな評価か、巨大隕石から地球を救ったりした人なのにな。そんなに悪評は目立つか、彼の功績を誰ももう口にしない。やはり正義の味方などやるものじゃない。俺を殺そうとした人間だが、少し同情する。

「そしてつい昨日A級ハザード認定を受けた男がゲヘナ高校の近くで暴れまわったらしい」

「あのバカ高校の近くか」

「昔教団の基地が近くにあったよな」

「呪われてるんじゃないか?」

 俺はそこに住んでいたのだが…言われてみれば呪われていたのかもしれない。呪いを使う能力者も居ると云う話だ。魔女たちに復讐するつもりはなかったが、一応調査しておくか。

「A級ハザードの体は焼かれていた、能力の痕跡がフレアコンドルと一致した。情報からいって彼はゲヘナの近くに居る」

 そう云えば柳沢を蹴った痕から俺の正体に結びつく事はあるんだろうか?やはり考えなしに行動するのはまずいな。

「元0級のハザードを倒せれば最低でもAになれる。彼を見つけて止めるつもりだ、俺の機動武器体系でな。みんなも何か気が付いたら教えてくれ。くれぐれもフレアコンドルを見つけてもおかしなことは考えない方がいい、彼は不幸な出来事で0級から転落したがとても強い。話は終わりだ。みんな練習再開してくれ」

 俺のした事が大体フレアコンドルの所為になっているな、まぁいいか。

「…へっ、C級如きに倒せるかよ」

「俺らでやっちまうか?」

「あぁ、貯め込んでるだろうしな、ヘルコンドルの資産は幾ら位だろうな」

「0級だったのはたった1週間位だけどよ、A級としては長かったから…1000億は下らないだろうぜ」

「へへっ…やっちまうか」

 そんな事を道場の隅で話しているのは、C級のヒーロー2人組だ。ニューロで検索してみると無名な連中だが能力と自意識は強いらしいと彼等のホームサイトから推測した。よく居る手合いだ。中途半端に高い能力を持っているせいで自分が強いと誤解する。

「ゼロに比べれば力に意味など無いと分かりそうなものだがな、年からいって会話した事はあるだろうし、その時に分からなかったのかな?鈍い連中だ」

 そう小声で呟いて鏡に向かって緩慢な動きで型稽古をする。アクリシアさんが復活させ再現した剛柔流の壱百零八手の型である。C級の力でもB級を倒せる事を証明した技の型である。今では彼より俺の方がうまい。ふふっ…我ながら凄い能力だ。

「あの新顔なにやってんだ?」

「ほっとこうぜ…みんな入門した時は鏡の前で自分の思う格好いいポーズをとりたいものだからな」

「そうだな、今日の処は放っておこう」

「からかうネタが出来たな、ハッハハ」

 外野の声など無~視虫。笑われようがお前のは努力じゃなくてズルだと言われようが、核爆弾をオモチャの兵器にした反物質爆弾よりも強い奴に勝つには何をしても許されるのだ。少なくとも俺は何でもするつもりだ。努力して勝利を掴み本当の人生を手に入れるのだ。

怪人図鑑No.9

名前─赤の巫女

本名─火野宮 ルナ

発火能力─現在の精度は低いが太陽コロナと同等の熱を扱える潜在能力が有る

戦闘能力─彼女自身にイデア能力者との戦闘経験が少ないが能力は高い。しかしC級ハザードに敗北した事もある

特殊能力─オーソドックスな火焔操作能力だが極意を習得したいと主張している

成長性─修行によりいつか完成すると主張

カラー分類─赤と思われるが青の可能性もある。若しくは両方を兼ね備えたハイブリットの可能性あり。検査においても正式なカラーを把握できなかった

総合評価─世界を恐怖に陥れた『教団』の残党の一人。洗脳を受けたが、有る事情により洗脳が解かれたためチームに加わる。A級相当の能力を持つが戦闘能力は低い

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