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第八話 明かされる過去! 怪物蜘蛛の謎多き生涯!(後編)

「やはり最強はムエボーランでゴザルよ、ムエタイの源流でゴザルよ?キックはパンチの三倍の威力というし、キックの見えないムエタイのさらに源流こそ最強でゴザルよ」

「いややっぱり柔術だね、世界中に技術が散らばって再構築されて今の総合格闘系に大きな貢献したんだから、ムエタイより競技人口も多いから必然的に強いのもいるだろ」

真昼の教室でメガネと豊臣がそんな話をしている。何でもいいけどムエタイにも柔術にも流派とかあるんだろうから、どう比較するんだ?

「ふ~む、廻殿はどうお考えでゴザルか?」

「そうだな…今の世界最強は総合格闘系だというのは確かだと思う。最強は最新の技術にこそ有ると思うんだ」

まぁてきとうな会話だから別に好きなこと話すがな。

「何だよ面白くねー意見だな」

「まぁまぁ秀世士殿、未だ続きがある様でゴザルし、廻殿続けてくだされ」

「あんがと、とにかく最強は最新に有ると俺は思う。だが零れ落ちた技術とか忘れられた技術も有ると思うんだ」

2人とも確かにと頷く。

「つまり最強という言葉を持つ可能性が在るのは最古の格闘技とも云われるヨガだと思う。格闘技としてはカラリヤパットとも云うらしいが。人口も多いからやった事のある人も多そうだしな。中には強いのも居るだろう」

「でもよ~ムエタイとか柔術と違って代名詞的な必殺技が無いじゃないか?」

「確かに、歴史が長いだけでは最強とは云えないでゴザルよ」

他愛の無い話を続ける。これも高校生活だ、俺は人生を謳歌するのだ。たとえここがほぼ男子校でも彼女を作るのだ。


「では…朝の話の続きを話してもらいましょうか?有馬田谷 廻君…そもそも本名なのですか?」

真のチームの車の中は結構広いな、中に5人も居るのに広々としている。椅子も液体になって邪魔にならないタイプか、これは高いらしい。ブルジョア層め、いつか見返してやる。

「本名ですよ、免許証見ますか?ところで何の話でしたっけ?」

朝の話の続きをこんな所でする事になるとは思わなかったな、今日は彼女達に指令は来なかったらしく最後まで授業を受けて居た。ペリーと黒船は授業に困惑していたようだが、8の段なんてやらされたらそうなるよな、俺も入学当初はそうだった。

「貴方の話を聞きたいだけです。今日の来客達とどんな関係なんですか?」

「分かりました。お答えしましょう。その前に1ついいですか?」

「構いません」

「恐らく傷痕に吃驚した事でしょうが、傷痕も黒い髪も目つきの悪い黒い眼も、それから背の高さ…これら全部が俺の個性です。変えられるものも在りますが変えられないものも在ります。それに付いて御理解願います」

ハゲにハゲと言ったら怒るようなものだ。俺にとっては傷がそれに相当しない事も無い。恋人にからかわれるくらいなら構わないが、それでも友人やただのクラスメイトに言われたら場合によっては殺したくなるかもしれない。

4人とも頷いたので分かってくれたようだ。もしも下らない事を言い触らしたら全員殺すとしよう。頷くとはそう云うことだ。

「それでは…第三次世界大戦は御存知かな?」

「第三って!?そんな!?」

藤田が驚いた。そうなると思ったよ。

「ではそこから話そうかな。50年ほど前にイデアは出現したとされる。最初のイデア能力者は諸説有るが、有力なのが最終大統領とゼロだ」

ゼロ…俺の憧れにして命の恩人…

「この2人の対決こそ…」

「ちょ、ちょっと待って、第三次って!?」

「別名ラスト・ウォー、最終大統領が世界統一を成し遂げた後に起こった戦争だ。詳しくは教科書でも読め、概要くらいは載ってるから。とにかくその戦争はゼロ個人が統一世界に勝利した事で終わった」

藤田は狼狽しているが他の3人は怪訝な表情だ。何の話か分からないんだろう。この話は中学校で習うレベルの話だから当然か。

「そしてゼロの前には何人もの強敵が現れた。有名なのは最終大統領、暗黒皇帝、そして…新興神」

最後のは俺の尤も憎む相手の1人だ。

「新興神は10年ほど前にある事件を起こした。その時俺は東京の教団本部に居た。要するにこの辺に在った建物です。その時ゼロに更地にされたので今は無いですね」

そう云うことも在って人がドンドン消えていった。比喩ではなく引っ越しただけだ。

「教団で俺は虹の御子と呼ばれた、俺は産まれた時からイデアが見えていたので、それを利用されたらしい。お陰で5歳までの間は誰とも会わなかったので、喋れるようになったのは教団崩壊から二年後の事でした」

いや1年後だったかな?幼い頃の記憶なのであいまいだ。ちなみに苗字は生来のものだ、明治維新の時に先祖が付けたのだと隣の老夫婦に聞いた。

「大変でしたね。それが来客達が貴方を尋ねた理由ですか?もう一度利用するために来たのですか?」

真は苦虫を噛み潰したような顔をしている。同情してくれているようだ。美女には何をされても喜ばしい。

「連中は教団の幹部です。のっぽがヌォルでデブがガッツォ。女は誰か知らないですね」

「その名前は聞いた事が…最高幹部が…もう出てきたのですか!?」

「連中はヒーローとしても多くの活動をしてきたからだと思います、噴火や大津波を防いだ実績もある。奴も出て来るようだ。5年後だと思っていたが早ければ1ヵ月後に出るかもしれない」

何の意味も無い希望的観測だ。何れにせよ今出てきて来られても勝てないので、せめてそのくらいの時間が欲しい。俺はほぼ眠らなくていいので実質的には2ヶ月だ。

「連中が俺に会いに来たのは、新興神を出所させるためらしいですね。俺のような被害者に金を払えば出れるらしいので」

「受け取ったのですか?」

「勿論です。住む家も無いから金が要るんですよ。それと、もしかすると恨んでいるのかもしれないですね。あの日新興神が負けたのは俺に原因が無い事も無い」

「…何をしたのですか?」

「その時にゼロと会話しました。テレパシーでしたが、まぁ同じ事です。その時俺はゼロを助けてゼロに助けられたですよ」

「どういう意味ですか?」

「詳しい事は公安警察にでも聞いて下さい、大事になるからあまり話すなと言われた記憶があるのでね。まぁ今更どうでも良いかも知れませんがね、10年前の事だしゼロも死んだ…本当かは今1つ分からないが」

死んだとは思えない、あれほど強さと自由を見せつけた男が。

「以前何故ゲヘナ高校に進学したのかを聞かれましたが、ゲヘナは近所ですし卒業して弁護士になった人もいると聞いたのでね。金が無いなりに頑張ったその人に追いついてみようと思ったのですよ。弁護士になれば生活も多少は安定するしモテそうだ」

掃き溜めに鶴といけば良かったが、正直3年間ゲヘナで孤独な努力をしても同じ事が出来るかどうかは謎だ。イデアに目覚めたからどうでもいいがな。

「成る程…0級に法律の力を使って勝とうとしたのですか」

流石に良く分かっている。超人に勝つには社会の力を使わなくてはなら無いと思った。それに腐った社会を変えてやろうという気持ちも少しは有った。

「そう云う事です、ですが今の状況から言って無理だったみたいですね。いつかは殺してやりたいと思っていたが、チャンスが来たようだ、まぁ間違い無く殺されるんだろうなー」

はははと笑う。実際今のままでは必ず死ぬ。

「ちょっと待って、有馬田谷君。その…新興宗教の人はそんなに強いの?」

「ふむ…真先生。等級の説明は…覚えてもらってないだけ?」

美人教師は不甲斐ないという顔をしながら頷く。藤田は覚えないから苦労するだろうな。

「では説明しよう。イデア能力者はカラーサークル方式で分類するのが主流だ。力の大小をABCに分けて、能力の分類を色で行う…まぁ今日は関係ないから説明しないが。ともかくイデア能力者の最低がC級だ。武器を持った人間に相当する。勿論武器によっては人間以上の働きが出来るし、人間より大きな相手も倒せる」

藤田は頷く。覚えないくせに…いや俺の名前は覚えている。何故だ?

「B級が戦車や戦闘航空機に相当する。装備した兵器によっては都市を滅ぼす事も出来るだろう。相性によっては無傷で都市を滅ぼす事も出来るだろう」

もっともイデアは破壊だけの力ではないのだが、この分類は破壊力を基準にしている。

「A級が軍事基地に相当する。A級最強の男ブルンニアは藤田の好きな西暦で云う2000年ごろの核武装国家に匹敵する力を持つ。A級は概ね人間大のサイズだが、地球を一周するのに180分掛かるようではこのランクには認定されない。若しくは攻撃力が一国を破壊し尽くすほどの力が無くては認定されない。だが基本的にこれらのランクは目安なので明確な基準が在るわけではない。能力によっては人間並みの戦闘力を持ったA級も居る。カラー分類で紫の能力を持つネイシャンという女がそれだ。さて藤田君これまでの共通点は分かるかな?」

興奮して饒舌になっているのか長台詞がスラスラ出てきた。そう、今の俺はA級に相当するので自分の状況を長めに語ってしまった。

藤田は困惑しながら答えた。

「人間…強さの基準に人間が関わるものばかりだ。強さの基準なら生物を指針にしても良いのに…いや戦車を倒せる生き物は…」

頭が悪いわけでは無いらしい。隕石とか災害に能力を例える分類法も有るが、俺はこの分類が好きなのだ。

「そう、全ては人間が基準だ、たとえB級でも関羽やロンメルみたいな英雄的才覚を持っていれば軍事基地にも充分勝てる。C級ではちょっと難易度が高いが、可能性は丸っきりの0じゃない」

そう、勝ち目はある。俺も教団の幹部には勝ち目がある。

「この等級基準はな藤田、人類なら能力者に対応できるという意味のものなのさ。軍事国家も戦車も英雄も人類史ではよく勝ちよく負けた事柄に過ぎないんだ。時間は掛かるだろうが今の人類の力を使えばABC級を絶滅させる事も出来る。だから彼等は異常では有るが、それほど酷い迫害も受けない。完全なる上位存在に比べればABCなんて何人居ても意味が無いのだからな」

「つまり新興神は…その上なの?軍事国家より…?信じられない…」

「そうだ、0級とは人類文明が対処できない能力者達だ。パイロキネシスもサイキックも現代科学で同等の仕事が出来る。物を燃やすならマッチで事足りる、後は燃料を燃やす規模に応じて用意すればいいだけだ。そんなものはゼロに比べれば下らないお遊びだ。もちろんテレパシーなんて必要無い。今の通信技術は太陽系外からだって実質的には誤差無しに会話できるんだ、しかも金さえあれば誰にでも使える。一方テレパシー能力者はB級でも日本の端から端まで通話が精々のレベルだ。電話にも劣る役立たず能力だ。だが奴等のは違うっ!世界を自由にできる力なんだ!現に太陽系の公転を弄って季節を変えて閏年を消滅させ、タイムパラドックスを解明したのもゼロだっ!奴等は時も星も自由に出来るんだっ!日本唯一の0級の年収を知っているか?一年の国民総生産の1%だ。世界を滅ぼせるのにそれだけだ、動かないことで世界を守っているのにな!」

4人が驚愕している。話の内容にではない、俺の形相がまぁ多分アレな顔なんだろう…興奮し過ぎたな少し落ち着くか、深呼吸深呼吸。

「コホン、とにかくだ。俺の復讐しようとしている相手はそうした怪物の中でも最強だ。地球史上でもあいつと比較できるのは他に3人だけだ。しかももう全員死んでいる。止められる奴は地球には居ない。俺の方は復讐を止めるつもりは無いがな」

「つまり…有馬田谷 廻は…何をしようとしているの?何者になりたいの?」

真の優しい問いかけだ、落ち着いてよかった。危うく襲うところだ、本当に美人だ。憂いを帯びた表情も実に良い…

「俺は復讐者ですよ。ゲヘナに入学したのも、憎い奴等から金を受け取ったのも全ては復讐の為に…俺は復讐を遂げなくてはならない、そういう人生を送ってきたのでね。奴は俺から両親を奪った、よって正当な復讐を果たす。別に良い事をしようとしてる訳じゃない。悪いことだという自覚は有りますよ。失敗するとしても復讐は果たす。必ずね」

「それで良いの?それで貴方の人生は幸せなの?」

「勿論恋に勉強にスポーツも両立するつもりですよ。今日もこれから道場に行こうと思うんですよ。少しでも力を付けるために、前向きに復讐を考えているんでね」

役に立つかは分からないが、俺に足りない戦闘経験を手に入れておきたい。

「道場!?無茶だ、君は左腕に怪我をしているんだよ?」

黒船が乗車してから始めて口を利いた。ペリーはずっと俯いているが、まぁ俺には関係ない。

「では、これで失礼しますよ。言いたい事も言ったしね」

「その傷は教団に受けたのですか、痛かったでしょうに…何も出来ない子供を…」

辛そうな顔だ。同情してくれているのだろうか、脈が在るのかもしれない。

「まぁ今の話と体の傷は何の関係も無いんですけどね、では皆さんまた明日。土曜日は授業少ないからデートしてくれますか真さん?」

また全員口を開けた、面白いな。俺は基本的に不幸なのだ、傷は別の復讐相手が原因なのだからしかたない。奴等への復讐は新興神の後だ。

どっちみち0級を倒せるなら出来ない事は事実上無くなる。敵になるのは0級のみだし、復讐相手に0はあいつだけだ、だから奴を最初に殺すのだ。それに奴は俺の人生の方向を決めた奴でも在るのだから最初に復讐するのが礼儀というものだ。

怪人図鑑No.8

名前─ガッツォ

本名─不明

視力─冥王星のクレーターの数を把握できる

戦闘能力─ヒッパカ・ギュムナシアにて50戦50勝0敗。その後教団活動のため無敗のまま引退

特殊能力─オーソドックスな透視能力だが極意を習得したと主張している

成長性─修行により完成と主張

カラー分類─青

総合評価─世界を恐怖に陥れた『教団』の幹部の1人。新興神の右の薬指といわれる。戦闘能力はA級でも屈指。ヒーローとして活動した過去在り

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