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第六話 巨人との激闘!

 イデアの色が緑になったか、イデアの光は地球を透過するので地下でもよく見える。光とは違う性質の何かなのかもしれない。車を吹っ飛ばされた後、お腹が空いたので地下にもぐって視肉を食べている。以前と違い感覚が発達したので、これまで感じなかった新たな臭さ・不味さを感じてしまう…くそっ。

仕方ないので一瞬で10m程の肉塊を一気に飲み込む。不味いが俺の体を動かすには一日に大量の食物が居る。金が無いので視肉しか買えないのだ。しかし腹の中によく納まったなーこれでもまだ腹6分目くらいの感じだが。

「グォウ!」

 相変わらず地上では柳沢さんが大暴れしている。今さらだが探査糸の性能はすごい、いや俺の情報処理能力がすごいのだろうか?まるでその場にいるかのように地上の様子が見て取れる。

「なんてパワーなの、サイ・ハンマーが全く効果が無いなんて…」

 それ通用した事無いだろ、少なくとも蚯蚓と燕には効果が無かったのを見たぞ。

「ペリーくん、僕にサイ・ジャケットを纏わせてくれ!何とかする!」

 無理だと思うぞ、お前ら二人合わせても精々B級の中くらいだ。まぁ成長性を考えればもっと行くのかもしれないが。

「う、うわーーー!?な、んなんだこいつ?」

 藤田が叫んでいる。こいつ何もしていないがどういう訳だろうか?誰かのコネで入ったにしては真のチームはショボイ組織だ。蚯蚓や燕を簡単に倒せる組織は政府・民間問わず他にもあるはずだ。

「失礼します藤田君。黒船、ペリーナ。時間を5分稼いでください」

 藤田を電流か何かで気絶させた真の判断は悪くないが、5分は無理だ。かなり慌てているな。彼女にとっても予想外の敵ということか、冷遇されているのかもな。4人の素性までは知らないが、それ程地位の高い人間でも無いようだ。

「ぐぉぉおぉ!オノレ桂!」

 まぁ柳沢さんはまだ力を制御できていないみたいなので、まだほっといてもいいかもしれない。

「黒船君!サイ・アームズを使ったから、お願い!」

「サンキュー!いっくぞ!PSYレッドキック!」

 全身をPSYの鎧で武装した黒船が以前蚯蚓に放ったレッドキックの十倍くらいの速度で足から突っ込む…胴体を掴まれたか、まぁ体格が違うから仕方ない。

「うっ!」

 しめられて気絶した黒船は稲葉家の庭に吹っ飛ばされた…偶然か?さて、どんな能力なのやら。

「く、黒船君…いや…来ないで…」

 柳沢さんが怯えたペリーに迫る。大きさの差はかなりの物だ。へたり込んだペリーからは恐竜か何かに見えるだろう。柳沢さんの股間からぶら下がってるモノにも怯えているのかもしれない。

 真は藤田を車に乗せて遠ざけたが、ペリーを助けに入るのは間に合わないだろう。

「いや…何する気…」

 娘を凌辱されたらしい柳沢さんが女の子に暴行するのだろうか?見てみたい気持ちもあるが、そろそろ助けるか、栄養補給も終わったしな。消化も大体終わったから運動してもよさそうだ。

「やだ…助けて…お父様…アリー君…」

 確かに近所に住んではいるがな、父親の次が俺か、大した事はして無いつもりだがな。よっぽど頼りになる友達が居ないらしい、可哀想なペリーナ。

地上まで1km程だが、30秒も掛からず公園の入り口付近に到着する。掘るのにも慣れたものだ。

『その辺にしたらどうだい?女の子を怯えさせるのが趣味なのか?』

「なんだ?どこから声が」

「こ、声?そんなのどこからも…」

 探査糸を柳沢さんに取り付けているので他人には聞こえない、骨伝導の要領である。俺に繋がる証拠を残したくないのだ。体格は全然違うからいいのだが、声の調子や話し方でバレたくは無い。意外と他人には分かってしまうかもしれないからな。

『あんたの娘が何をされたのかは知らないが、そのお嬢さんに当たるのは違うだろ』

 腰を抜かしたペリーを真が立たせる、多分大丈夫だろう。きょろきょろする柳沢さんの後ろに回る。

『こっちだよ、あんたの後ろ』

 緑の男が振り向く、俺の様に感覚が優れているわけではなく、あくまで両眼でものを見るらしい。

「きさま…幽霊か?」

 そう見えるのか、偽装は役に立ったらしい。

「あれは…昨日の…?逃げますよペリーナ」

「えっ?黒船君はどう…」

「逃げるのが先です」

 振り返らずに行ってしまった。冷静且つ適切な判断力だ。

「貴様も手先か!?」

 柳沢さんが右腕を振るって…いや振りかぶっただけか。

「貴様…何者だ?」

 意外に冷静だな。腕を振りかぶった姿は、答えなければ貴様を殴るぞと主張しているポーズだ。

『あんたの敵ではない。味方でも無いが』

「奴の手先か?」

 首を振る、まぁ見えてはいないだろうが意思の疎通を図る気は無い。

「いや、何を言おうと信用しない、喰らえっ!」

 ミサイル並みの鉄拳を放つ、遅いな。易々と避けて足元に入り、右足を…

「フンっ!」

 暴風が吹き荒れ、地上から上空20mほどの高さに放り出された。風使いか?

「でやっ!」

 圧縮した鉄棒のなれの果てを俺に向かって投げてきた。別にこんなもの利かないが、一応避けて投擲された鉄と地面の混合物を蹴って再び地上の巨人に迫る。

「ふんっ!」

 巨人は腕をまわして風を起こした。また風か、俺の体重は巨人に比べれば軽いので、ちょっとした横風─風速80kmくらいかな?─で吹き飛ばされてしまう。だが今度は公園の地面に硬質の糸を飛ばして張り付けてあるので容易には飛ばない、探査糸と違い見えるのが欠点だが強度はある。探査糸はちぎれないが巨人を引っ張る様な性質は無いのだ、まぁ適材適所だ。

 巨人の胸元に迫り拳を…避けた。サイドステップと云う奴か。地上に着地して巨人に対して拳や蹴りに糸を出すが、全くかすりもしない。スピードでは俺の方がはるかに上だし、パワーも当たれば一撃で殺せるだろうに、何故だ?

「悪人の手先にしてはなかなかやるが、まるでテクニックが無いな。動きが読めるぞっ」

 テクが無いのか、まぁ女に言われなくてよかったと思っておこう。しかし俺の姿はほとんど見えないはずだが良く分かるな。それも能力かな?

 さて、倒す理由なんて全く無いが倒しておきたい。ハザード認定を受けたA級なんておいしい獲物はなかなかいない。能力も頂いて起きたいしな。

『移行変身』

 巨人に接近し微妙に蹴りの届かない間合いから、人型から蜘蛛形態の途中になる過程で生じる横腹の足を使って蹴る。こっちの方がちょっと長いのだ。パンチっぽいような気もするが、足だから蹴りだ。間合いが狂うから当たるはずだ。

「妙な体をしているなっ」

 やっぱり避けられたか、俺の体の大きさの2…いや3倍はあるのに攻撃が当たらないとは、でかい上に素早い奴だ。足を仕舞う。これは…格闘では勝てないな、どうも動きが完全に読まれている。もしや…

『すごいですね、予知ですか』

「違うな、増幅だ」

 あっさり答えてくれた、自分の能力を説明したくなる気持ちは分かる。俺も時折誰かに説明したくなる衝動に駆られる。まぁ嘘の能力を説明してくれているのかもしれないが合点がいく能力だ。

『成程…今のイデアと同じく緑に分類される力ですか。身体能力だけでなく知能も強化されているのか。知性拡張と云うよりは単純に思考の速さや状況把握が上昇したのか、単純だがすごい力だ』

「そのとおりだ、お前の姿は良く見えないが、空気の動きや土埃の動きでどう攻撃してくるか予測できる」

 すごいな、知能指数や情報処理能力も上昇しているらしい。さて…どうするかな、格闘で勝てないなら他の手段を使うか。急に強くなれる訳ではないから今日は今日使える手段しか使えない。まぁ覚醒と呼ばれる現象もあるが、格下相手にはあまり起こらない現象だし意図的に起こせる物でも無い。

『成程…貴方には勝てなさそうだ。今はね…ところで復讐すると云いましたが…どうやってするのですか?』

「もちろん桂を殺す!」

『桂とは桂 在良学長ですか?』

 大学の名前までは言わないが伝わるだろう。さっきクォクで検索したのだ。科学の進歩万歳!

「ほう、やはり敵だったか」

 腕を振るってきた、向かってきた大きな拳に右拳を合わせ…フェイントだったか、でかい左足で体の右側を蹴られたので、軽く吹っ飛ぶがすぐに糸をたどって公園内に戻る。全身の皮膚が少し裂けている、筋肉もダメージを受けている様だ。もう今日は最大効率的な動きはできないかもしれない。

 キャッシャーに殴られ慣れていたので殴られる心構えはできていた。別に無傷で勝つつもりは無い、俺よりも強い相手とも戦わなくてはならないのだから当然だ。

 巨人の目前で問いかける。

『教授には娘さんが3人いらっしゃいます』

「それがどうした?」

『悲しみますよ?桂さんの娘さんも彼の友人もね、勿論あなたのご家族や友人も悲しむでしょう。娘さんはまだ生きているのでしょう?』

「何故知って…まさか娘を人質にするのか!?」

 そんなつもりは無い。

『私が云いたいのはね、柳沢さん。貴方は耐えられるのかという事ですよ?私はあなたと同じで復讐を志す者ですからね。似た境遇の人間の話を聞いておきたいのですよ』

 これも本心だ。命乞いと云う訳ではない。

「そ…それは…悲しむだろうな家族は…だが…」

…そう云う奴か…少し試すかな。

『参考資料として娘さんのホームサイトをお見せしましょう』

 稲葉家から糸を使って持ってきたモニタに、先程調べた情報を映し出して巨人に見せる。

【げんき!ゲンキ!元気!柳沢 舞のお気楽バンザーイ~】

 間抜けな題名だが、父親は震えている。そこにある情報は父親にとって意外なものだろう。

「馬鹿な…舞がこんな…嘘だ!さてはお前達が作ったんだな?」

『なんならクォクをお貸ししますよ。グルオン検索をしてみますか?』

「…そうか、子の心親知らずとはこのことか」

『どうでしょうね、そこに書いている情報が正しいかは分かりませんよ。貴方をハザード認定した事を考えると娘さんに書かせた物かもしれませんよ。都合の悪い事に蓋をする為に』

 俺の復讐相手達も似たような事をしていた。俺なら敵の言葉など信じない。

「君は…どっちの…もしやさっきの戦闘員なのか?そういえばあの家の屋根には4人しか居ないな」

 ばれたか。

『そんな所です。貴方に協力しても良いと考えている者です』

「どういう意味ですか…借金…お金なんて無いぞ、私は平凡なサラリーマンなんだ」

 首を振る、金など要らない。判断力が上昇しているなら俺の言いたい事も分かるだろう。

「…私は復讐はしないよ。まずは娘と話し合う。桂と恋人だったのかどうなのかを、そしてこのふしだらなページの意味を…」

「…くくくっ…なら格闘ごっこは終わりだ。もうあんたに用もない…『四肢焼き』」

 巨人の両肘両膝を真紅の炎で焼き尽くす。流石に取れたりはしないがもう動けないだろう、巨人が崩れる。叫ばないな、表情も到って平静だ。

「な、何をする!?」

 成程俺と違って痛みは無いのか、変身型にはこう云うのも居るのか。そばに近寄ると、腹筋だけを使って器用に空中に向かって跳ねた。馬鹿が、空中で自由に動ける様な能力はあるまいに。跳んだ男の上めがけて跳躍し、脊椎を蹴って地面に激突させる。巨人の拳の作った物よりもはるかに大きいクレーターが出来た。野球場並かな。

「い、一体君は?」

 痛くないのか、凄いえぐれてるのにな。痛みを知らないから復讐をやめようなんて気になるんだな。芋虫の様な巨人は何か言っているがもう会話する気も無い。

泡拭糸(アワフキ)

 泡状の糸を使って周囲にある俺の足跡や肉片と糸の残骸を回収して清掃する。

 巨人の能力を得るために地面に落ちた巨人の肉片も回収し食べておく。もう用は無いな、さて帰る…家は戦いの余波で崩れてしまったか、まぁA級の戦いの余波としては小さなものだ。

「まて、どこにいくんだ?おい、どこに?」

 まだ何か言っているが放っておこう。今の事態は奴が招いた事だ。投降して裁判を受ける事もできただろうに、A級相当の力を認定されたのなら意見も多少は通るはずだ。大体未だ何もしていなかっただろうに、なのに考えなしで暴れるとはな、力を得たものにありがちな暴走か。

 俺はそんなつまらない失敗はしない、能力を隠して社会に溶け込む。そして一人一人順番に復讐相手を殺す。だが巨人は巨人で役に立った。こいつの正体がどう報道されるかはしらないが、事情を知る立場の者達は復讐失敗者と見做すだろう。A級の復讐さえ上手くいかないなら俺のも上手く行く訳無いと考えてくれると都合がいい。この巨人が上手いこと布石になると良いのだが。

「油断大敵気付いた時には大火事に…さて此処には調査委員会も入るだろうし、地下洞窟の痕跡は消しておくか、新しい住処はどうするかな」

 そんな事を考えながら、監視カメラの無いところで変身を解く。力はうまく得られただろうか?頭脳も賢くなってくれればいろいろ便利なんだがな、まぁ巨人は間抜けだったから個人の性質は変わらないだろう。精々失敗者を教訓にしなくては…

怪人図鑑No.6

名前─柳沢 安雄

本名─同上

戦闘力─スペックはA級としては並み以下だが総合力はA級上位

耐久力─地方都市並み

特殊能力─自分自身の能力を100倍にする単純な能力だが、一日何度でも使える。限界が有るのかは未確認

成長性─イデア能力は完成した模様

カラー分類─緑

総合評価─当初のハザード認定はBだが、後にA級に認定。四瀬町一帯を破壊したため懲役20年を言い渡される。なお人的被害は調査員を含めて皆無である。

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