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第五話 お前はクビだっ!はたして社長の宣告とは!?

今日のイデアは紫か、割と珍しい。今日は校則や東京条例を守る事にしよう、そんな日だ。

朝っぱらから豊臣とメガネが聞き覚えのある事を話している。

「核爆発があったみたいでゴザルね」

「どこで?ってかマジで?」

「広域暴力団の無牢(なろう)組が所有するお山みたいでゴザルね。どこの国や組織が攻撃してきたのか、警察やサラリーヒーロー達も調べているそうでゴザル」

「戦争になっちゃうかな?」

「どうでゴザロうか、まぁサラリーヒーロー達が出払ってるお陰でこの辺でも怪人の類がこれ幸いと暴れているみたいでゴザルね、拙者達に影響するのはそのくらいでゴザル。一昨日の蚯蚓男も本来ならすぐに退治されるくらいの戦闘力でゴザった」

出払ってるのは知らなかったな。それで真達も来たのか?いや、それにしては来るのが早い。核爆発があったのは3日前だ。その翌日に来たと云うことは前から決まっていたのだろう。

「そういや今日はペリー達も登校してないんだよな」

集に1~2回しか来ないと云うことは今週はもう来ないのだろうか?

「なんだよ廻、ペリーちゃんが気になるのか?ムッツリめ」

ムッツリてのも古いな。別に興味はない、金髪は好きじゃない。

「いや、学生なのに何で別の学校に来るんだろうなと思ってな。今日は天上で授業受けてんのかな」

本当はだいたい知っているが話す事はしない。これも訓練だ、嘘を得意にならなくては。

「そうなんじゃね?」

「それは変でゴザルよ。天上の授業を受けれるなら、ゲヘナの授業を受ける意味なんて全く無いでゴザル。だいたい昨日、一昨日とまともに授業を受けていないのに出席日数とかどうなっているんでゴザロウか」

たぶん学外活動を評価されるんだろうな。この高校を調査するのも活動の内らしい。どの位期待されているチームなのかは分からないし、何を調査するのかも今1つ知らないが俺にはあまり関係無さそうだ。


『キーンコーンカーンコーン』

いつもの音が今日の授業の終わりを告げる。今日は小田が休みなので帰りのHRは無い。代わりに真がHRの時間に来たが挨拶だけで終わる。

「有馬田谷くん、後で進路指導室に来なさい」

美人教師に呼び出されるのは悪くない。彼女はさっさと教室を出る。一緒に行っても良いのにな。

彼女はペリーと黒船のお目付け役だが、それだけやるために来た訳ではないので基本的には毎日学校に来るようだ。

「有馬田谷、何やったんだ?」

本多よ、俺に聞いても分からない事だって有る。

「進路相談かなんかだろう。俺は進学希望だからな」

本多はそうかと頷く。

さっさと1階の職員棟の進路指導室に向かう。さて、何がばれたのかな?


「有馬田谷君の才能値は…4。でも、中学の成績は良かった。何でこの高校に来たの?」

俺の才能値は能力に目覚めても変わらなかった。まぁそんなもんだ。変身しても何故か変わらない…この検査方法は精度が低いのかもしれない。

「ここの学費が無料だったのと、家から近かったので」

徒歩10分だ。今の能力なら変身すれば10秒で来れる。他の無料制高校は片道2時間の距離だから流石にきつい。しかも車で2時間だ。

「…中学入学直前の暴行事件は関係していないの?」

進路指導室で話しているからって、聞かれたくない事を聞くなーまぁ美女と2人っきりで個室にいるのは悪くない、高校生は基本的にエロイ事しか考えないのだ。色々参考になるので、むしろ今後も2人っきりになりたい。ついでに理性を抑える実験もしておくか。真は好みのタイプなので、はたして我慢できるだろうか?

「強いて言うならその事件のお陰で、内申や教師の受けが良くなかったので天上に落ちました。他に受けたのも此処だけなので…まぁ何を言っても言い訳になってしまうんですがね」

それに力を得た今となっては自由なゲヘナの方が色々都合が良い。体育の時間なんて出席取れば学校外で昼飯食ってきても許される…いや許されてはいないが、バレないから良いのだ。だから専ら体育の時間は隠れて能力を鍛えている。あれ…実は真面目に体育してるのか?

「そうね、でも受験科目は充分合格点…何で落ちたかは分かる?」

嫌なこと聞くな~受験結果は申請すれば点数を閲覧できるので合格点なのは知っていた。

「面接を担当したのが暴行した奴だったからですかね、他に思い当たる事も無いので」

「そうね…暴行事件についてはどう思ってるの?」

「信じてはもらえないでしょうが、俺は当然の事をしたまでです」

実際慰謝料なんて払う気は無い。たとえ金が入ろうとも連中に金を渡す事は絶対に無い。

「…その人の怪我の状態を知ってて言ってるの?」

「精巣1つと右膝を潰したことですか?金持ちなんだからすぐ治したでしょうに」

今の医学は脳が半分無くなっても再生できる位だ。そうすると記憶がかなり変質するそうなので、脳を失った本人が直ったとは云えないという意見も有るが命が在れば別に良いだろうに。

「…有馬田谷君はいわゆるイデア能力者?」

「資料に書いてませんか?昼間でもイデアが見えるって」

「見えるだけなの?」

「何でそんな事聞くんですか?そろそろ呼び出しの理由を教えてもらえませんか?今日は帰って新しいバイト探したいんですよ」

彼女はため息を吐く。美人は何をしても絵になる。もっと色々な顔見たいなー

「…貴方が能力に目覚めていないかを調査するのも私の仕事よ。貴方はバカじゃないんだから気付いているでしょう?」

気付くどころかあんたの部屋の下着の枚数まで知っている。派手な黒が一枚だけなのはやっぱりそういう事なのかなぁ…我ながらオッサン臭い…調査の一環とは云え復讐に関係ないような…いや、人の家を調査しなくてはならない事も有るからその前哨戦だ。うん、きっとそうだ。

「調査?今和泉先生は進路調査も担当なさって…」

「そういう誤魔化しは要らないのよ。私はとある役所の人間。私の上司の友人も貴方に暴行を受けた。だから貴方が逆恨みをしていないか調査するのも仕事」

誠実で正直な人間だ。さてどう返そうか。

「逆恨み…そういう認識なら話す事は無いですね。帰らせてもらいます」

正直に応えて席を立つ。今時パイプ椅子なのも此処くらいだな。まぁ椅子なんて座れりゃいいんだ。

指導室のドアに手を掛け出ようとすると、まだ話が有るらしく呆れた様子で話しかけてきた。

「そう…此処の伝説は知ってるわね?今のままなら貴方は必ず刑務所に入るわよ。何が有ったのかは知らないけど暴力で解決する問題なんて…」

「くくっ、お笑いだ。第三次大戦を終わらせたのだって個人の暴力じゃあねぇか。あぁ…日本史の教師だから現代史は詳しくないのかな?まぁ教員免許を持ってるのかも怪しい人ですしね…でも教えるのはこのゲヘナで一番上手いですよ。教師としてもやっていけると思いますよ。いっそ転職なさっては?」

言葉をさえぎり背を向けながら一気に話す。ちょっと本音が出たな、俺も煽りに弱いことだ。

「教員免許は大学の時に取ったわ。本当は体育教師になりたかったの。ずっと陸上をやってたからね」

「そうですか。教員免許を持っていないと疑って申し訳ない。走る所を見てみたい物です。今和泉先生の走る姿はさぞ美しいんでしょうね」

「その内体力テストをするから、その時に手本を見せるかもしれないわ。その時は宜しくね、今日みたいに素直に受けてくれると嬉しいな」

彼女の掌の上らしい。まぁ連中に情報が漏れても構わない。臆病な連中のことだ、俺が力に目覚めたかも知れないと知ったら精々怯えてくれる事だろう。どうやらあの日の事を忘れてはいないようだしな。それが分かっただけでも収穫だ。勿論真と2人っきりになれたのも収穫だ、やはり俺がマダラオニクモ怪人と気付いていない様子だ。変身能力は変装としても充分有効だ。


『デビルサタン派遣からアリマタヤに通達』

校門に着いた辺りで、着て欲しくないメールが着てしまった。女の子からは一通も着た事が無いのに…寂しい…

「死んだと思われてなかったか、ったく面倒くさい」

サタンの語源はヘブライ語で反対者とかいう意味らしく、ヨブ記ではサタンは天使として神と話したとかなんとか、時代が降って後に悪魔の一個体になったらしい。そしてデビルも元は反対者とか敵対者という意味らしいが特定の悪魔を示すものではなく、デビルという天使もいないらしい。

「つまり日本語にすると悪魔反対者派遣…つまり善玉…」

そんなわけは無い、単に名付けた奴の頭が弱いのだ。もうこんなところで働く気なんて…待てよ、タイミング的に真が上司に報告して上司が友人に連絡してデビルサタンに連絡…するほどの時間は経っていないような…すぐ連絡すれば可能かな?

「探査糸を付けときゃよかったな」

まぁ今更云っても仕方ない、それに連中は権力者だが、0級を動かせるほどの地位には無い。罠が有ってもA級程度だろう。その程度は片付けられなくてはな…メールの中身を見る。

『931-495891-3094-149-09-9-409-09-09482』

「また悪の組織ごっこか。ったく…本社集合ね」

別に暗号の法則とかは無い。数字が乱舞していたら本社集合という合図だ。さっさと行って辞表を出そう、もしも受理しないなら労働基準監督署に訴え…いや、会社を潰すか。その方が手っ取り早い。


 豪華で悪趣味な社長室では全身タイツタイプの戦闘員スーツを着た5人組がありがたい話を聞いている。俺は聞き流しているが、聞き入っている奴もいるらしい。社長は小男だが眉毛も目つきも唇も鼻も全て濃い男だ。一度会ったら忘れない顔だ。これまた濃い声で出動前の訓示をしている。

「お前らはクズだ。金も無い。力も無い。女も無い。帰る家も未来も無い。お前らはこれから先一生幸福になれない」

 デビルサタン派遣社長、悪魔出 ドッキリのありがたい御言葉だ。生来の名は日本人によくある名字と名前だったそうだ。

役所にこの名前に改名する書類を出すような厚顔無恥の男なので、善悪はともかく精力の凄まじい男だ。違法な会社を経営しているが儲かっている様だ。社長室に来るたびに悪趣味なオブジェが増える。

「機械の発達で死んだ業種は腐って化石になるほどある。だがな、経営者ってのは無くならない。結局人を使う才覚が有れば食いっぱぐれない。お前らはそれが無いから借金まみれだ」

 割とためになる事を言ってるな、これで過労死出しまくってる会社の経営者じゃなかったら尊敬できるんだが。

「いいかお前ら、今日いい仕事をしたらこの女をくれてやる。好きにして構わないぞ。どうだ、俺は良い社長だろう?」

 そう言って髪の長い美人秘書の股間をまさぐる。黒尽くめの戦闘員達は随分興奮している。まぁ風俗にも行けない給料だから女日照りなんだろう。

 秘書は嫌がってるな、と云うか泣いてる、彼女も借金持ちだ。この会社の従業員は社長も含めて皆そうだ。そういう逃げ場の無い連中が雇われるのだ、俺の借金は正当な借金では無いが、他にも似たような奴が居るかもしれない。

 社長の隣に居る秘書はスーツ姿だが、下半身は紅い下着だけだ。セクシャルハラスメント+パワーハラスメント=勝訴確定、だが悪魔出の事だから裁判になったらどうなるかとか脅してるんだろうな。

「今日の仕事はある会社員の口封じだ。お前らと違って正社員だからお前らクズより強いかもな」

 正社員とバイトなら正社員の方が強いんだろうか?給料や待遇はそういうケースも多いだろうが、戦闘力は関係無いだろうに

「情報は送った、さぁ行け行け行けいっ!」

 クォクにメールが来ていた。俺に特別な質問も無い、辞表も受理してくれなかった。しかし核爆発をどうやって生き延びたのかを知りたくは無いのだろうか?

一応探査糸を社長に付けておく、望む事ならもっと大勢の人間に付けて情報収集したいが、探査糸は精々2本が限界だ。今日の処は社長一人の動向を調べるだけに使用しよう。

 戦闘員達が1人ずつ社長室を出る。

「温子ちゃんとやれるのか…ゲヘヘ」

「正社員殴って女ともヤれるなんて最高だなこの仕事」

「なぁどうせなら全員でヤらねぇか、みんなで分け合おうぜ」

「いいねぇ一度やってみたかったんだよ多人数プレイって奴をよ」

 ちなみに俺は口を開いていない。相変わらず下種どもだ。この会社に登録されているバイトはこの他にも10人ほどいるが俺以外はみんなこんなもんだ。

「お前何黙ってんだよコラ、良い子ぶるんじゃねぇよ」

「お前いつものあいつだな、ったく付き合い悪いな」

「こいつ先にぼころうぜ」

「さんせーい」

 そう言って俺を殴ってくる。全く痛くは無いが、むかつく。さてこいつらは馬鹿だが俺の能力がばれないと良いのだが。つーか、もうやめようこの仕事、今日でこの会社潰しちまおう。これから向かう会社員にも訴えるように協力してもらおう。違法な仕事の現場を抑えれば流石に無能な警察も動くだろう…動かないかもな、これまでもそうだった。


「はい、そうです。問題ありませんよ。核爆発?あぁ…ありまたやとは関係ないですよ。ガソリンを届けったって連絡も無かったで…いえガソリンはこっちの話で…まぁとにかくあいつは爆発見てビビって逃げたんですよ」

 てきとうな連絡が功を奏したようだ。報告・連絡・相談は重要だがこの会社でまじめに働く気は無い。

「はい…はい…えぇ柳沢ですね。問題無く…能力に覚醒?うちは能力者は行かせてないですね…はい…ありまたやは行かせました。そうなんですか、A級ですか、確実に死にますね。ハッハハハ」

 遠距離通話の片方だけ聞くのは結構不快だ。さて、俺を殺そうとするのはついでってところか。探査糸を切断する。証拠は残らない、タンパク質で出来た先端部分を分解してしまえば、質量を持たない糸はあっという間に地球の外だ。

「貴様ら…何者だ?」

 A級相手なら会話を盗聴する暇は無いかもしれない。あれは結構神経を使う、目や耳を増やしている様なものだから大変なのだ。

「奴の…桂の差し金か?」

 周囲には俺以外の戦闘員が転がっている。全員息はしているし心音もあるが、腕や足が折れているのも居る。

「お前一人無事なんだから答えろ!?」

 訓示を受けた後に5人で手動車に乗り込み、会社から帰宅途中の柳沢さんを拉致して人気の無い公園に連れてきたは良いものの、変身した柳沢さんにあっさり俺以外の全員はやられてしまった。俺がやられなかったのは一番遠くに居たからだ。ラッキー、なんだか最近運がいいな。

「なんとか言ったらどうなんだ!?」

「世の中には先天的又は後天的な事情で口を利けない人も居るんですよ。柳沢さん」

「そうか、それは失礼…喋ってるじゃないか」

「私は喋れますよ。ただ世の中にはそういう人も居るんです」

 からかっているわけではない。単に事実だ。

「…何故私の名前を?」

「デビルサタン派遣を御存じで?」

「悪徳会社だな、近々強制捜査が入るそうだ」

 本当か、先週死んだ奴も報われる。まぁ遅すぎるんだがな。俺の知っている奴等だけで3年で7人も死んでいる。労災も出ていないはずだ。

「そこから派遣されてきました。貴方の口封じが目的だそうです。何を封じるのかも知りませんし依頼者の素性も知りません。社長は知ってるかもしれませんが」

「…何故話す?私を何時でも殺せるという自信か?」

 さて、それを調べてみたいのは確かだが。今日はそうするつもりは無い。資料によると柳沢は部下からの人望も厚く友人の中には議員秘書もいるそうだ。そういう人間で実験するのはまずい。やるなら野良だ。

「私にそんな力は有りませんよ、単純に悪徳会社に忠義を示す必要は無いのでね」

 半分くらい嘘だが、柳沢の能力によっては倒せないと云うのも事実かもしれない。

「そ、そうか。それはそうだな」

「戦闘員を回収したら帰っていいですかね。柳沢さんもやる事がお有りでしょうから、手間はかけませんよ」

「い、いいのか?」

「強制捜査が入るってことは間違い無く潰れますからね。俺も借金の関係で無理やり働かされていただけなんですよ。信じてもらえなくても結構ですがね」

「そ、そうか。じゃあ…帰ってもいいけど…」

 許してくれたみたいなので、戦闘員達を乗ってきた手動車に1人ずつ運びいれる。救急車は会社の規則で呼べない、酷い会社だ。

「手伝うよ。というか大丈夫かな?」

 運ぶのを手伝ってくれた。良い人だ。

「大丈夫ですよ、死にはしません。呼吸も心音も有りますからね」

 そう言って最後の一人を乗せる。うめき声が聞こえるが気にしない。全員にシートベルトをして運転席に座る。

「では私はこれで、襲っといてなんですが気をつけてお帰り下さい」

「さ、さようなら…」

 エンジンをかけて帰ろうとすると…

「待てぃ!」

 夜の公園に俺の知っている4人組が現れた。記憶喪失の藤田と中途半端なPSY能力者のペリーに、これまた中途半端な肉体強化能力を持った黒船。残りの一人は元エリートの左遷された現美人女教師、今和泉 真だ。

「な、なんだお前達は?さては戦闘員の仲間か」

 強いて言うなら学友です。

「貴方はB級ハザード認定を受けました。柳沢 安雄さん。投降してください」

…ほぅ早いな、しかし認定はBか。なのに会話ではAと言っていた。何か有るな…

「認定…馬鹿な、まだ何もしていないぞ?」

俺達は暴行を受けたがな、訴えられる立場ではないが。しかしその位ではB級認定は受けないはずだ。

「危険思想を持った人間であるという報告が有ります。その所為です。その人たちへの暴行も関係ありません」

 やっぱり無いのか、まぁ感覚的に云ってこいつらが近くに来たのはついさっきだ。糸を伸ばして確かめると、確かに乗ってきた機動車両のタイヤの跡がある。監視していた訳ではないらしい。

「危険思想?さては桂の差し金か!?」

「答える必要はありません」

 答えた方が良いな、柳沢さんはA級らしい。軍事力が違いすぎる。学生を混ぜたお遊びのチームで勝てる奴じゃない。軍隊が必要なレベルだ。

「そうか…そうだったのか…さてはこの連中も…許さんぞ…出まかせを…」

 俺の方を向いてるな。車を壊す気だろうか、迂闊なことはできないので発車できない。戦闘員服だからばれないとは思うが、一応変身しておく。俺は変身の際に光や爆発を伴わない、さらに俺の変身過程は僅か0.05秒に過ぎないので瞬時に変身できるのだ。気付かれない筈だ。

スーツがちょっと膨らむが、戦闘員スーツはフリーサイズなので問題無い。バレるかもしれないが問題無い。

 「真さん、藤田くん、ペリーくん。気を付けよう。相手は4mの巨人だ」

 正確には3m71cmだ。柳沢さんは段階変身型らしいが、全身が灰緑色で巨大な事以外は人間の全裸姿だ。それを人間とは呼ばないかもしれない。理性は有りそうだが昼間に見かけたら距離を置くタイプの格好の人間だ。

「許さんっ!娘を凌辱しただけでは飽き足らず…カツラァっ!」

 剛腕が車めがけて襲ってきた、デビルサタンの財産である手動車が全壊どころか粉末さえ残らずに消滅する。その後には爆発が起こり、公民館くらいのサイズの大きなクレーターが出来た。

 御近所が全員起きそうな轟音がしたな、一瞬空が照らされたから明るくなったかもしれない。しかしもう11時か、俺の視界は明るいんで分からなかったな。それに睡眠時間がほとんどない事も有り、曜日や時間の感覚が前にも増して分からなくなっている。

 公園はあとかたも無く吹き飛んだ、もう子供も居ない地区だが、寂しいものだ。昔はよくここで遊んだんだがな、鉄棒位しかなかったが、それでも結構楽しかった記憶が有る。攻撃力はミサイル並みらしい、本気かは分からないがどうやら俺にはあまり効かないようだ。直撃したわけでは無いが、痛みはそれほど無い。

 一応バイト仲間たちはぶつかる寸前に放り投げた。稲葉という老夫婦の住んでいた家の屋根に着地させた。4人全員共に俺の負わせた怪我は無い。投擲力のコントロールも向上しているな。無論ちゃんと生きている。すこし傷だらけだが命が有れば良いだろう。

「皆さん大丈夫ですか?この威力…報告にあったB級のモノではない…すぐに撤退します。手に負える相手ではない」

 真は冷静な判断だ。どうやら学友達も全員生きているらしい。当然の判断だ、こいつの力は最低でも軍事基地並みだ。人間4人で攻略はできないと思う。

「ユルサンっ!ユルサンゾっ!」

 柳沢さんはすっかり正体を無くしている。近所に人の住まないゴーストタウンとはいえ迷惑なことだ。地下基地の扉まで壊しやがって。此処に連れ込んだ時点で嫌な予感はしていた。わが家の近所は人が住んでいないので荒事の舞台になる事もあるが、まさかここまでの事になるとはな。

 引っ越しを考えていたくらいだから、この辺を更地にしてくれても構わないのだが。

『闇蓑』

 スーツがお釈迦になったので姿を隠す糸を全身に廻らせる。夜だからほとんど見えないはずだ…想像していなかったわけではないが、まさか自宅の近所で戦闘になるとはな。さて、どう転ぶかな?俺に都合のよい方向に転べば文句は無いのだが。

怪人図鑑No.5

名前─悪魔出 ドッキリ

本名─同上

スピード─100m走23秒ジャスト

耐久力─50代男性の肝硬変患者並み

特殊能力─借金を負った自社社員をデビルサタンの会社規則に従わせる

成長性─悪巧みに関しては完成

カラー分類─紫

総合評価─能力はC級だが、長年の悪辣な活動により、能力者専用監獄にて懲役10年の刑を言い渡された

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