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第四話 恐るべき罠! 燕の嘴にとらわれた女教師!

今日のイデアは緑色か、園芸日和だな。帰ったら視肉を育てよう。

「…と云う訳です。さて死の日付を偽装した理由は何だと思いますか、毛利君?」

「はい!分かりません!」

 元気だけは充分だな。

「そうですか。老中の罷免を将軍の名前で行いたかった為だと言われています。この頃には将軍の地位も大分形骸化していました」

 まともな授業なんて久しぶりだ。これまでは授業時間中は密かにクォクで1人で勉強していたが、真の授業は聞いていても良いかもしれない。まぁ今日は授業中に校外の自動販売機の下に落ちている硬貨や紙幣を拾って集めようと思ったのであまり真面目に聞いてはいない。

まぁその気になれば今の日本史のクラス内における会話や発言を一字一句再現できるが、そんな事する必要はない。精々期末試験の時にノートを売るために利用しよう。能力は自分が生きるために使わなくては。

 今日は50分で周囲5Kmの自動販売機の下を、教室に居ながら確認できたが、さっぱり落ちて無かった。放牧掃除機の献身的な働きと、現金を使うのが貧乏人くらいだから金なんてなかなか落ちて無いらしい。あぁ…金が欲しい…一度でいいから学食で金を払ってみたい…

『キーンコーンカカーンコーン』

 微妙に違うな、鐘まで変わろうとしているのか。いや単にボロイだけか。

「古風な音ですね。では皆さん予習範囲を送信しておきましたので、確認しておいて下さい」

 クラス全員が起立して礼をする。珍しいな、日本史の終礼は全員寝過ごすのが定番だったのに。

「黒船さんとペリーナさんは話が有るのでお付き合い願います。では皆さんまた明日」

 黒船が本名だと云う事実には結構驚愕した。何の話をするか興味があったので、真に追跡用の糸を真に付ける。俺の復讐に関わる情報を話すかもしれない。心の中で技の名を叫ぶ。

『探査糸(MRI)付着!』

 自分で解説しよう、探査糸とは先端のたんぱく質で出来た部分以外が物質を透過する性質を持った糸なので、常に直線距離で対象を追跡する事が出来るのだ…誰も聞いて無い解説は虚しいな。

 解説男ことメガネが話しかけてきた。

「廻殿、メールは見て下さったか?」

「バイク女の事だろ、多分正解だ。何かが変わろうとしてるのさ、何かは分からんけどな」

 ある程度は知っているが、興味は無い。この学校がちょっと変わったって世界情勢が変わるわけじゃないしな。

「成程、まぁ拙者達にできる事は無いわけでゴザルし、拙者も泰然と構えるでゴザルよ」

「なになに何の話ー?」

 プレスリー豊臣が陽気に話しかけてきた。その格好で今日一日過ごすのか?

 ん?藤田も仲間だったか、成程これまであまり授業に出なかったのはそういう理由もあったのか?4人戦隊が校外に出るようだ。ほぅ特別な専用車も有るのか…金有るな。

しかし授業はどうするんだろうか?学生の本分は勉強だと偉い人も言っていたぞ。特定の誰かが言ったわけではなさそうだが、偉い人が言ってそうな台詞だ。


「よう有馬。精が出るな」

 放課後に誰も居ないトレーニングルームで握力の調節実験していたところ、吉良が入ってきた。ランニングをしてきたのか汗びっしょりだ。

「お疲れ様です」

「おう、柔軟手伝え」

 分かりましたと頷き、マットの上に座った汗まみれの男の背中を押す。トレーニングルームには男が二人っきりだ。この高校では二人っきりの状況は避けたほうが無難だが、お互い女好きなので警戒する必要は無い。

「天上の連中の様子はどうだ?」

「今日も一時限目で居なくなりましたよ」

「いくらなんでも早すぎるなオイ、まったく…学校に何しに来てるんだ?」

 寝るための布団を学校に持ってきてる人に言われたくは無いだろうな。

「天上といえばお前なんであそこに行かなかったんだ?頭良かったって聞いたけどな」

「面接で落とされたんですよ。あと内申点も足りなかったんで」

「ギャハハ、バイトばっかしてるからだよ」

 バイトか…デビルサタン派遣からは連絡が無いが、核爆発で死んだと思われたのかな?その方が都合が良い。あそこは時給が100円とかだしな、今更働く気は無い。

「で、調子はどうだ」

「相変わらず女日照りですよ。金も無いし。良いバイト知りません?今の所もうすぐ辞めるんで、時給の良いとこ知らないですか?」

「ばーか良いバイトがあったら自分でやるよ、そういやマカオブラザーズが入院したってよ」

「またですか、今度は何したんですか?」

「議員の息子の腕折ったんだってよ。議員様の息子が怪我させられたならすぐ捕まえてくれるんだなぁ」

 その後も他愛の無い話をしてから、柔軟を終えた吉良がランニングを再開するために外に出る。俺も誘われたが遠慮した。

「走るのが一番体力つけるのにいいんだぞ、ゲヘナで体力無かったらやってけねぇーぞ」

 ははっ、と笑い去っていく。体力か、地中に穴を1km掘れるくらいの体力が有れば十分だ。


「そして誰も居なくなった…さて調節実験再開といくか」

 握力計を5つ用意し、それぞれ10kg・21kg・33kg・50kg・70kgで音が鳴るように設定する。大きい方から試す…なかなか鳴らない…表示を見ると100kgに近い。

「かなり弱く握っているつもりだったが…柔軟がうまくできて良かった~」

 下手すりゃ折ってたな。しかし今のままでは何かの弾みで事故が起きる。調節できるようにならなくては。

「最大値を計ってみたくはあるが、多分1t超えるから連絡が行っちゃうな」

 測定器の類にはそうした機能もある。イデア能力者を探すためだ、ある日突然普通の人間が力に目覚めてテロを実行しても困るから、そうした機能が有る。

「そもそも本気を出したら握りつぶせそうだな、しかもまだ変身できる…ふふっ」

 やっぱすごい力だ。0級まではいかないが、A級は確実な力だ。

「だが…奴は0級の中でも最強級…今のままでは勝てない…奴こそが俺の0~5歳までの不幸の原因だ。必ず殺す…たとえどんな姿に変貌しようとも…」

 決意を胸に静かに怒る。握力計に表示された数値は徐々に下がってきた。

『パンっ!』

 小気味よい音だ。続けて他の握力計も握る。

『パンっ!』

『パンっ!』

『パンっ!』

『…パンっ!』

 一番低い目標のは少し時間がかかったが仕方ない。今度は低い方から試していく。そんなことを何度も繰り返していたら、だいぶ時間がたっていた。

「もう7時か、イデアが明るいから日没が分からないのも俺の欠点だな」

 俺は夜でも視界が明るい。変身能力を得る前からそうだったので夜目が利く奴だと思われていた。

『パンっ!』

 5kgに設定した握力計が音を鳴らす。調節はかなりうまくなった。今日はこれくらいで良いだろう。トレーニングルームに感謝の気持ちを示すために掃除してから帰宅する…4人戦隊はまだ戦っている…あの程度の相手に…


「地中に活ありってとこか」

 地中に生活する蜘蛛もいるそうだが、俺の様に地中で視肉を育てる種類は居ないだろうな。俺は絶滅危惧種兼突然変異だ。視肉は土だけでも成長するタイプの奴をヘソクリで買ってきた。やっぱり不味いが食う量が増えたので仕方ない。

際限なく増えないように磁石で囲む。明日には100mくらいの肉塊に生っているはずだ…すごい臭いがしそうだな、金をケチらずに醤油でも買ってくるかな、多少は味が変わるはずだ。

「公園のトイレの下から家の地下を繋げたから俺が家に居るとは思われないしな…ふふ、秘密基地だな」

 俺は少年心を忘れない男だ。公園のトイレ横の開かずのバケツを開けると此処まで落ちてこれるようにした。勿論開けられないように糸で閉じた上に、此処に来る時も周囲のチェックを怠らない。

別にキャッシャーを恐れているわけではない。奴を弾みで殺す事も無いだろう。だが、もう俺の歯や皮膚は、ちょっとやそっとでは傷つかないので能力に目覚めたのが依頼者達にばれるとまずい。国外に逃げてしまうかもしれない。それは拙い、手間が増える。

俺がキャッシャーの拷問に耐え切れなくなったと思ってくれるのが一番良いんだが。

「俺が逃げたと思ってくれると一番だが、学校は割れているが…まぁ登校は今まで通りにするとして…どうするかな、キャッシャーの依頼者達は復讐リストの後ろの方だし…」

 だが社会権力的には大物が多い。先に殺すと動き辛くなるかもしれない。ばれる様なドジは踏まないつもりだが、何が起きるかは分からない。

「まぁ、成る様に成るさ…最初に殺す予定のあいつも今は刑務所だしな」

 あの場所は迂闊には侵入できないから待つつもりだった…あと5年で出てくる…ふざけた話だ、あれだけやっておいて。法は神と同じでとっくに死んでるな。

「ん?4人戦隊が1人戦士になった…まぁもう夜10時だし真面目な学生は寝る時間かもな…さてどうするかな」

 別に俺には関係ないが、コネを作っておくと便利だ。別にテスト問題を教えてもらう気は無い、合格点は自前の頭で充分取れるだろうしな。いざとなればカンニングし放題だし。

「助けるか助けないか…まぁどうせ暇だし行ってみるか」

 どうせ眠りに必要な時間なんてほとんど無いんだ、暇つぶしになれば良い。蜘蛛の姿から二足歩行の蜘蛛人間に変身して全身を光を吸収する性質の糸で覆う。

闇夜蓑(ヤミノ)

 解説は…別にいいや、ようするに消えるのだ。他人から見ると消えると云うよりは全身がぼやけるのだが、正体が分からなけりゃそれでよし、完全に消える方法はまた開発しよう。


「くくくっ、ノーマルな普通人間風情が大空を飛ぶ鷹さえ撃ち落とす私に勝てると思っていたのですか?」

 燕尾服をきた鷲鼻の男が宙に浮きながらそんな事を言っている。シュールな光景だ。ここは郊外の田園地帯なので、奴の足元にはトラクターが鎮座している。田んぼの上空10mに燕尾服の男が浮いている…何だか間抜けだ。変身型では無いので普通の成人男だ、年は30位だろうか。

「イデア能力を持ったくらいで神気取りですか?念の為言っておきますが神を気取るなら0級…せめてA級の力を持ってから言って下さい坂井さん」

 真の言い分はもっともだ、燕尾服の力は高めに見積もってもB程度だ。馬の牽く戦車かプロペラ航空戦闘機並みの戦闘力だ。それだけの力で女一人殺せないとは、まぁ殺さずに楽しみたいのかもしれない。

「くくくっ、おやおや、半裸の女に言われてしまいましたか、今の貴方はパッと見原始人と変わらない格好ですよ?」

 真は半裸だ、コンバットスーツは剥かれている。器用な奴だ、怪我が無いので繊細なコントロールが出来るらしい。眼福である、やはり良い体している。燕尾服もニヤついているので俺と似た趣味らしい。さてどっちを助けようか?

「そうですね。でもこの後応援に来る人たちには替えのスーツを用意してもらっているので安心です」

「くくっ!応援なんて来ませんよ。それを一番分かってるのはあなたでしょうに?」

 確かに応援なんて周囲5km四方にはいない、通信機を壊されたようだ。いまどきは豆粒より小さい通信機も有るが、彼女はすべて壊された様子だ。位置を追っている様な連中もいるかもしれないが、やはり到着するのは大分後だろう。そもそも真達はそれ程期待されたグループでは無いから応援なんて来ないかもしれない。

「では、もう良いでしょう。楽しませてもらいますよ。くくっ」

 燕尾服が下劣に笑い。真に向かって急降下してくる。真の表情は覚悟を決めた表情だ。良い根性している、女武者という言葉がよく似合う。面白いな…真に味方するか。燕尾服と真の間に入る。

「ぐひゃっ!?」

 俺に激突した燕尾服が間抜けな声をあげて落ちる。闇蓑を解くのを忘れていた。一応解くか、姿を見せないのは失礼だ。監視記録装置の類も無いから安心して姿を見せられる。

「あ、貴方は?」

「通りすがりの…地獄の…いや地獄から…」

 いかん考えてきた台詞が思った様に出ない、超格好悪い。

「鬼…いえ、マダラの蜘蛛ですか?一体何者なんですか?」

「そう…通りすがりのマダラオニクモ怪人だ」

 今命名した、というか鬼に見えたのか?確かに触角はあるが角に見えないことも…我ながら全然蜘蛛じゃないな、というか蜘蛛と名乗っていいんだろうか?蜘蛛と名乗ったらファーブルに殴られそうなくらい蜘蛛じゃない…ともかく共通点は糸出すって事ぐらいだ。毒も有るかどうか分からない。

燕が上昇して立て直したようだ。

「くくっ!応援ですか?なるほど変身型を飼っていましたか、戦闘ごっこくらいしか役に立たない連中ですからね」

「女の服脱がす能力しか持って無い奴に言われたくないな」

「くくっ!こう云う事も出来るんですよ…スワロウ・ダンス!」

 燕尾服の男の周囲を一羽の燕が飛びまわる。実体化したPSYか、中々燕らしい姿だ。調度いいので実験しよう。

「スワロウ・エッジ!」

 燕が俺に向かって飛んできた、別の名前つける意味あるのか?俺の首に到達する前に幻の燕は消えた。どうやら蚯蚓の能力は奪えたらしい。だが燕尾服の能力は要らないな、憎い奴のPSY能力にははるかに劣る力だ、どうせ奪うならA級以上が良い、奪える上限が有るかも分からないのだ。奪うならやはり…時間操作か空間操作だ。レアだから入手できるかは分からないが強力な能力が多い分類だ。

「な!?くくっ…で、ではさらば!またお会いしましょう」

 意外に冷静な奴だ。勝てないと分かったら即撤退か、合理的だ。おぉう飛んでった、飛行能力も良いな。だが奴は遅すぎるからやっぱり奴のは必要無いな…時速40km位で良く飛べるな、落ちそうなくらいとろい速度だ。

「…?何故追わないのですか?貴方は一体…」

「既に終わっている」

 奴に付けた不可視の糸で首を絞める。探査糸ではないので俺の目には見えるくらいの糸だが、普通の人間には見えない。

「ゲホッ?」

 落ちたな。真の前まで引っぱてくる。こいつを殺す必要は無いし、殺さないように倒すのは力を把握するのにちょうどよい実験だ。

「あんたの手柄にすることだ。俺の事は…喋らない方が都合が良いが別にどうでもいい」

「何者ですか…自警団気取りなら…」

「ハザードだ、分類的にはな。これがアドレスだ。困ったら呼んでくれ、出来ればA級以上を狩りたい。コンサルタントとして雇ってくれると嬉しい。報酬は…応相談でお願いします」

予備のクォク端末のアドレスを書いた紙を渡す。真のは教えてくれないようだ、残念無念。

「…助けてくれたことには感謝しますが、そんな話は聞けません。個人的なお礼はしますが組織としてはあなたを敵と見なします」

 お堅いな、実に好みだ。裸に近い格好でも凛としている姿はアホらしくも見えるが、目に強い光が在るので、美しく感じる。

「お礼ねぇ…変身型の悩みはご存知かな?その中でも男女…いや雌雄に関することだが」

「生殖に対する不安でしょう?よくニュースになるから知っています」

 そう、俺は子孫を残せない可能性がある。この前の放射線は関係ない。変身すると体の構造が変わるので、精子も変質する事が有るので変身型は人間とは子供を作れなくなるケースがある。

「そう云うのでも良いのか?」

「構いません。命の恩は返します。出来る事なら何でもします」

「ふぅ~ん。でも処女(おぼこ)に俺のは無理だな、何せでかいから」

「なぁっ!?」

 お、真っ赤になった~可愛いなぁ。胸と股間を隠していた手を離して拳を作ったので実に眼福である。

なんでわかったかと云うと探査糸で調べました…いや武装とか通信機とかを調べるためにだ、そっちが主目的だ。

「では、この辺で失礼するよ。勝てない敵が現れたら呼んでくれ。第二恒星調査局のイデア能力者調査係主任の今和泉さん」

 そう言って闇蓑を纏い、退散する。声でばれるかとも思ったが、どうやら変声糸は上手く機能したようだ。我ながら便利な力だ。その便利な力を実験する為にも彼女の様な立場の人間の動向を知るのは重要な事だ。

 憎い奴らを殺すためにはもっともっと便利で強力な力が要るのだ。精々あの女教師兼特殊公務員を利用しよう。

怪人図鑑No.4

名前─スワロウマン

本名─サカイ・ノブテル

スピード─短距離ランナー並み

耐久力─バリアによって砲弾も弾くが本体は貧弱

特殊能力─特筆するものは無い念動力

成長性─40代の人間並み

カラー分類─青

総合評価─C級の平均的なPSY能力者である

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