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メールと朝

それから俺はその子、佐々木愛さんと別れ、浮かれながら家に帰った。




帰宅してすぐに、考えに考えて、佐々木さんにメールを送った。



件名:こんばんは

本文

さっきはありがとうございます!


もし、こちらに来ることがあれば教えて下さい、それと、メールしてはいけない時間なども。


これから、よろしくお願いします!


考えに考えてこれか、とかは突っ込まないでいただきたい。答えはいつもシンプルなものだ。

そして、すぐに返信が来た。



件名:こんばんは

本文

少しびっくりしました。

でも、こちらこそよろしくお願いします(*^o^*)/


メールできない時は、平日の昼間学校にいる時です(>_<)


それではこのへんで*^^*



まだ俺とは話しづらいかなあ、でも、これから少しずつメールしようと俺はおやすみなさいの返信をして、ケータイを閉じた。




リビングでニタニタしながらテレビを見ていたら涼子さんに気味悪がられたが、そんなことはどうでもいい。



かわいかった。

俺は昼間の彼女の姿を反芻し、わりとどうでもいいバラエティ番組を、右から左に受け流していた。



ああ、今日は眠れる気がしない。






しかし、今日もテストはあるのだ。


俺は眠れなかったことを少し後悔したが、あまり眠くもないし、それは仕方がない。




今日は、英語、保体、地学、日本史である。明らかに二日目の方がライトな気がする。




そして今日も暑い。テスト中に高橋は汗みどろになっていた。




しかし、俺は昨日から、引っかかっていることがある。



佐々木愛さん。彼女の名前である。



どこかで聞いたことがある気がするのだ。芸能人にいたのだろうか?




テスト中、なぜかそれがグイグイ引っかかってきて、あまり回答に集中できなかった。



何か、それはとても大切な気がするのだ。だけど、考えてもわからなかった。





その夜、俺は、自室の勉強机に向かっていた。


今までの見直しみたいなことをやって、少しでも点を取りたかったが、普段の勉強が大切だと自覚すると同時に、投げた。




ベッドに寝転がると、ケータイを開いて、佐々木さんにメールしようかと悩む。


昨日の今日では、少ししつこくはないだろうか。



共通の話題があるわけでもないので、何を話せばいいかわからない。



そういえば、俺は、佐々木さんの好きな食べ物も、好きなことも、好きな場所も知らない。



俺は、メール画面を開いた。




件名:こんばんは!

本文

今大丈夫ですか?


そういえば、佐々木さんの好きなものってなんですか?聞いてもいいですか?




何か...かなり乙女なメールな気がするのは俺だけか。少し悩んだが、送った。



またすぐに返信があった。




件名:どうも♪

本文

大丈夫ですよ~*^^*


好きなものは、チョコレートです~いろんなの食べるのが好きです!(*>o<*)


永井さんは、何が好きなんですか?





件名:Re:どうも♪

本文

そうなんですか、チョコレートおいしいですよね!俺も好きです!


それから俺は、ポテチが好きでよく食べます!


好きな趣味とかはあるんですか?






半分本当で、半分嘘である。俺は甘いものはどちらかというと苦手な方だ。でも今なら、いくらでも食べられそうな気がする。





件名:Re:Re:どうも♪

本文

ポテチおいしいですよね、私も好きです~(*^~^*)


好きな趣味は、音楽を聴くことです!今はCO-LLONEにハマってるんですよ~(*^o^*)


永井さんは何が好きなんですか?o(*^o^*)o





CO-LLONEは今大人気の女子高生3ピースバンドである。

佐々木さんは何かCO-LLONEに特別な思い入れがあるようで、よく聴いているらしい。



俺はゲームが好きだと答えたが、彼女はゲームはあまりしないらしい、よく分からないようだった。


あとは、花や動物を眺めるのが好きなこと、どうしてもダメなのがホラー映画だとか、いろいろなことを聞いた。



俺は、その夜は、満足感に包まれて眠った。



夢の中で、板チョコをちぎらずにそのまま鳩にぶつける佐々木さんを、俺は必死に止めていた気がする。




「朝か....」




「おはよう...」

「おはよう竜也、ごはんできてるよ」

「ん....」



どうも朝は頭が重くていけない。俺は焼きたてのトーストをかじって、トマトジュースでゆで卵を流し込む。



「ごちそうさん、いってきます」

「はいいってらっしゃい」



俺は、靴を履き、玄関のドアに手をかけた。



「あ、そうだ、今日ね、舞おばさんと愛ちゃんが昼間うちに来るからねー」



俺は雷に打たれたような気がした。

そして、振り返らずに涼子さんに聞く。



「愛ちゃんって...?」

「何言ってんの、あんたのいとこでしょ?忘れてんじゃないわよ。ほら、行ってきな!」



俺は家のドアを閉めると、そのままうずくまった。




母の旧姓は佐々木だ。

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