乙女ゲームの世界に転生した!!!
「な、なにか起きているの」
って、これはよくある性転換のシナリオじゃないか。
同時にこの体の記憶の振り返りを始める。
そうだ、僕はベルント・ヒルガルとサラ・ヒルガルの間に生まれた娘エリ・ヒルガル。
生まれてから、もうすぐ十五年になる。
今まで、トイレの使い方、お風呂で見た自分の裸と髪の手入れ、普段着る服などの体験で、自分は間違いなく女の子だと確信できる。
パパとママが騎士なので、剣術や魔法を教えてもらったことがあるが、剣術の方が全然だめで、魔法も中途半端だった。
なんか、前世の自分を思い出す。
ところで、両親たちの顔がすごく心配そうに見える。
「えっと、どうしたの、まだなにか問題でもあるの」
僕は気軽に聞いた。
「ええ、すこし問題があるが、ちょっとエリに話しづらいわ」
って、なんか母に異世界の名前で呼ばれている。
もしかして、体の影響かな。
今の体はまだ子供だけど、ある程度の理解力をまだ持っている。
「大丈夫、僕も手伝うよ。体が子供だけど、頭が大人だから」
「そうというなら、これはエリに関する問題だが、まず状況を説明しないと。実はここが乙女ゲーム君への不滅の愛の世界なので、そしてエリという子がゲームのチュートリアルボスなの」
不滅の愛、ボス、頭がこの二つの名詞に気を引かれた。
自分のオタク知識によると、乙女ゲーム転生とボスの組み合わせっていうことは、大体ゲームの悪役キャラとして転生するパターンが多い。
つまり、僕は悪役キャラに転生して、主人公に倒されて、死ぬ運命が待っている。
せっかく、第二の人生を手に入れたのに、早めに死ぬなんて嫌だよ。
ちょっと待って、死ぬより、追放の可能性があるかもしれない。
せめて、死なないなら、なんとかなる。
「し、死ぬ、フラグがないよね」
自分の生死に関わる問題なので、全身がすでに恐怖状態に堕ちていて、言葉もガタガタになった。
「あ、いや、チュートリアルの子が罰を受けて済んだよ」
母は安心できそうな答えをくれた。
罰だけなら、いいよね。
「問題は罰の上に、エリが悪貴族と強制結婚して、毎日犯されて、第一章の結末に悪貴族と共に死ぬこと」
「えっ」
父の補足を聞いて、僕はさらなる恐怖に堕ちた。
自分の意志ではない結婚、相手が悪い人、性的な奴隷、そして結局死ぬ。
「い、嫌だああ」
自分が思わぬ悲鳴をあげて、母の懐に飛び込んだ。
母の懐に飛び込んで、泣き始めてから五分後。
母の懐にいたのはいつぶりでしょう。
確かに、甘えん坊は男らしくないと言われて、それから二度と母にべったりしなかった。
「もう落ち着いた。ほら、ちょっとお茶を飲んで」
母はカップを僕に渡して、僕の頭を撫でながら、お茶を飲ませた。
近く見ると、母が凄く若くて、美少女に見え、同時に凛々しい雰囲気も感じる。
父の方も同じく若くて、ちょっと主人公っぽく、穏やかに見え、賢そうな雰囲気がする。
もう、おやじを呼べなくなった。
敵役キャラの親なのに、随分張り切ってデザインされたね。
「では、冷静を取り戻したようで、エリの将来について話しましょうか」
父は話題を広げた。
「そうよね。バッドエンドを避ける方法考えないと」
「うん、けどその前に、エリにそのエンドについて説明しないとね。まずはキャラプロフィールから」
エリ・ヒルガル
女性
Sランク冒険者兼、滅亡した小国の子爵の娘サラ・ヒルガルとSランク魔法使いの冒険者のベルントの間に生まれた一人娘で、十五歳頃にちょうど巡回しているルーカス・ホーク(チュートリアル攻略キャラ)国防を務める公爵の息子に目を付けられて、許嫁とされた。
Sランク冒険者とその子供が一応下級貴族として扱われて、貴族と結婚するのは珍しくない。でも、公爵が高級貴族なので、あまりの差が大きすぎて、この婚姻は他の高級貴族に反発されていた。ホーク家はその反発の声を抑えるために、エリの母が滅亡した小国の姫とエリの父が勇者だったという噂を流し、ひとまず正当化した。ついでに、Sランク冒険者が貴族の手駒のようなイメージを推して、市民と下級貴族の間の敵対を強めた。
高級貴族の許嫁になったエリは王都に連れられて、厳しい訓練を受けた。その中に、極端な至高主義を教われて、王族以外の人間を見下す悪女になった
能力値
体力:239
攻撃力:107
防御:115
魔力:167
命中値:1
敏捷:102
」
流石、攻略百パーセントを目指す父、細かいところをすべて読んで把握する。
チュートリアルボスだけど、面白いバックストーリーを持っているね。
きっと、凄いシナリオの担当者だった。
それでも、なんなのよあの命中率は、宇宙兵士より低いじゃないか。
「続いてチュートリアルのシナリオ、三年生のルーカスは一年生の主人公のマリアの強力な力が欲しくて、側室として迎えようとした。正妻の座を失いたくないエリはマリアに決闘を申して負けた。婚約を反対の高級貴族はこのきっかけに、彼女に貴族の名に恥をかかせた名目で罰を与えた」
「そもそも、マリアは側室になるつもりもなく、即座に断った。すべてはただの誤解だった。かわいそうわ」
両親は細かく説明してくれた。
なんか、エリちゃん元々優しくて、無邪気な子だったのに、貴族世界に巻き込まれて、こんなざまになるなんて嘆かわしいよね。
「ふむ、マリアに勝つ可能性がゼロだから、悪役令嬢ストーリーのように、マリアと仲良くなって、戦いを避けるしかない」
「でも、マリアの友たちになったら、密かに平民と組んで貴族に反逆を企んでいると訴えられると思うわ。どのみち、エリを認めない貴族が多いから、たとえ、エリが大人して、なんもしなくても、婚約を反対の高級貴族や他の側室になにかの罪で嵌められるかもしれない」
「確かに、常に狙われているよね」
どうやら、主人公と仲良く作戦がダメだった。
待ってよ、すべての始まりは公爵の息子に気に入って、そして婚約を結んだこと。
なら、最初から婚約を結ばなく、いやあの息子に一目惚れされなかったらいいんじゃないか。
「巡回の日に一日中隠れば」
「それはいけるかもしれないけど、私たちギルドを管理する人なので、村の代表する立場もあるから、挨拶に出ないと、不敬罪に見られて、その結果酷い管理にすり替えて、皆に辛い生活を送ることになってしまう」
父に却下された。
冒険者たちと村人たちと仲良いから、迷惑かけたくないのも当たり前だね。
「じゃあ、あの息子に一目惚れされないように、可愛くないようにすれば」
発言が終わったら、部屋がしーんとなって、両親の顔が呆然となった。
「だ、ダメに決まっているでしょう。こんなに可愛い顔を台無しするなんて、イラストレーターに失礼だわ」
母は見たこともない熱情で、応じた。
「ファンにもね」
父も呟いた。
「え、このキャラを推す人がいるの」
「いるよ、人の趣味がそれぞれだからね。ベルンは確かに、あのくノ一キャラシノちゃんが推しよね」
「ツッコミやギャグも多かったから、いつも出番を楽しみだったね」
「ふううう」
「ちゃんとサラ一筋なんだから」
なんか、また茶番が始まった。
自分の記憶によると、エリの両親も僕の前世の親と同じくラブラブようだ。
正直自分の顔や髪をわざわざ醜くするなんて、可愛いものが好きな僕にも抵抗感がある。
いやいや、目の前のバッドエンドをどうにかしないと。
両親がSランク冒険者だったっけ、つまりある程度の戦闘力を持っているじゃない。
「パパとママが僕をあの貴族から奪還したら」
「それは本編にもあったが、結局手遅れたわ」
「どう考えても、やはり許嫁になる前に、手を打たないといけない」
「許嫁になる前にね............許嫁、結婚............そうだ結婚」
父の呟きを聞いた母は急になにか発想が出た。
「ルーカスは確かに恋愛経験がない、無知的な少女が好きでしょうね」
「ええ、初期のプロフィールがそう書いてあるはず」
「じゃあ、相手が肉食系で、或いは既婚だったら」
「彼の好みに合わなくなる」
「エリ、目に付けられる前に、彼氏作って、結婚するわよ」
母の言葉を聞いた僕は啜ろうとした残ったお茶を溢して、服を濡らした。
僕は彼氏作りだと。
彼女すら一人も作らない僕ができるわけがないだろう。
「お母さんが孫がほしいだけじゃないか」
「それがお父さんのほうで、私は着せ替え人形がほしいだけだった」
「だった?」
「ええ、今目の前にいるじゃないか。濡れた服を着替えないと」
母は僕の肩を掴んで、微笑んでいる。
気がついたら、俺は母に引っ張られて、書斎を出て、寝室に向かっていく。




