発現
6日後業は娘の月を連れて実家へ向かった。実家までは新幹線で3時間程度。正月以来帰っていなかったので何故か緊張していた。途中月が腹を空かせ駅弁を自分の分まで平らげるというアクシデントもあったが無事に到着。実家の呼び鈴を鳴らすと木の門が開き中へ入っていった。久々に来る実家はどこか寂しげだったが庭の草木がきちんと手入れされており今もこの家は生き続けているのだと思った。少し寂れた扉を開け靴を脱ぎ広間へ行くとそこには祖母と母親が座って待っていた「あー!業!月ちゃん!久しぶり~!」母親は月を背負いどこかへ連れて行こうとしたが祖母がそれを止め座るように言った「それで業・・・電話で言ったことは本当かい?」「うん・・・自分と娘には何かの力が発現しかけているのかもしれないんだ」「そうかい・・・それは困ったねぇ・・・この大戸家は昔から能力を持つ者が生まれ子孫を増やし能力者を増やしていった家系なんだよ」「それは昔から聞いてた・・・けど本当だとは思ってなかった」「えぇ・・・信じられないのは当然・・・とりあえずどんな力なのか教えて頂戴な」「うん・・・まず娘は予言や未来予知といった感じだね・・・自分は千里眼と手のひらからシャボン玉が出る」「そうねぇ・・・あなたのは苦労しないのだろうけど娘ちゃんのは苦労しそうね」「・・・・」「こんな日が来るとはねぇ・・・貴方達を尊様に紹介するわ」「尊・・・あ」「もしかしてスーツの方が最近来たんじゃない?」「来た・・」「尊様も貴方の能力に気が付きはじめたのね」「自分達はどうすればいいんだ?」「尊様の仲間になり保護してもらうのよ」「保護?」「えぇ尊様が管理しているとなると手を出す者は少なくなるわ」「じゃあ・・・そうするよ」すると祖母は背後の襖を開けると尊が饅頭を食べながら話を聞いていた「こんちには大戸業さん月さん」「貴方が・・・」「えぇ尊様よ」尊はゆっくりとこちらに近付くと正座をし頭を深々と下げた「どうか我々にお力をお貸しいただけないでしょうか」「業は知らないのよね・・・これからこの国に起こる惨劇を」「これからこの国には予想も出来ないほどの大惨劇が引き起こされます私が倒し損ねた一人の男によって」「それで自分達の力が必要だと」「はい・・・貴方達は代々能力者の家系、能力の濃さではこの国でトップクラス」「そうなんですか・・・」「ですのでその力をこの国の未来のためにお貸しいただけないでしょうか」「では・・・条件があります」「条件ですか」「娘の方は貸せません」「業!この国のために・・・!」「いえおばあ様、事情はある程度把握しております」「私の娘は能力が出るたびに高熱で魘されるんです・・・頻繫に使用するようなことがあれば恐らく命に関わります」「わかりました、ではこちらから提案があるのですが」「提案?」「娘さんの能力の制御のお手伝いをさせていただけないでしょうか」「制御・・・?」「娘さんの能力は年の割にオーバースペック・・・なのでこれから不意に能力が発現した際にも対応できるように治療とトレーニングをするんです」「でも・・・」「大丈夫です、もし高熱になってもすぐに治療できる能力者を常備させます」「・・・・・・・それをすれば娘は能力が出てしまっても大丈夫になるようになるんですか」「時間はかかりますが必ず大丈夫になります」「期間は?」「大体1か月程度ですね」「では・・・お願いします」「ありがとうございます」業も頭を下げると話は能力のことに戻った「恐らくですが業さんの能力はお母さまの能力の派生なのではないかと考えられます」「母親の・・・?」「知らなかったの業?あなたのお母さんの能力は透視よ」「知らなかった・・・・」「大戸家の能力図を見ると非常に良かったと思える点があります」「良かった点?」「能力の重複と分散がないことです」「なるほど・・・」「えぇこれによって安定した能力の遺伝が行われているっぽいですね」能力の話を40分ほどしていると月がぐずり始めたので一旦話を終え休憩をとることにした。業は月とシャボン玉で遊んでいると尊がその様子を見ていた「とても楽しい能力ですね」「そうですねぇ・・・なんでシャボン玉なんだか」「シャボン玉は謙虚と素直の象徴・・・貴方の心を表した素晴らしい能力ですね」「いえいえそんな」すると月が目を抑えて苦しみだした「月!月!まただ・・・!これです!能力が発動してるんです!」「取り敢えず運びましょう!私は熱を冷ますものを用意します」業は月を寝室へ連れて行くと布団に寝かせ体温計で熱を測った。熱は38℃とかなりの高熱で解熱剤を飲ませ頭を撫で看病をした。尊は濡れたタオルを持って来て額に当てると心配の眼差しで見つめていた「これでよくなればいいんですが」「そろそろです・・・」すると月がゆっくりと口を開いた「月から来訪するもの・・・多くの宝石と蛇を連れて来るだろう・・・」そういうと再びで寝てしまった「これが予言ですか・・・」「はい・・何のことかわからないんですが」「・・・・そうですね、とりあえずこの症状を軽くするために治癒能力を少し流します」「お願いします」尊は月の手を握ると微弱に光る緑色の液体が爪の間から入ると月の熱が次第に下がっていった「一先ずこれでいいでしょう」「どうして完治させないんですか?」「成長期に完全治癒を施してしまうと病気や体調不良に対する抗体が生まれにくくなってしまうんですよ」「そうなんですね」「あと1時間もすれば起き上がれるようになると思います」「ホントにありがとうございます」尊と業は月の傍に居続け本当に1時間後月が起き上がった「大丈夫か?」「うん・・・頭くらくらする」「お水持ってきますね」「ありがとうございます」業は月の背中をさすり抱きしめた「パパ?」「もう大丈夫だよ」尊の持ってきた水を飲み落ち着くと月は再び眠りについた「娘さんの能力の発現する予兆のようなものはあるんですか?」「いえ・・この高熱がそうかもしれませんが」月が眠ると業は再び尊に告げた「どうか娘の能力だけは使わせないようにおねがいします」「わかりました・・・」尊はその場を後にすると祖母に別れを告げ折り紙の鶴に姿を変えどこかへと飛んでいってしまった。その後月は無事に回復し母親が作った月見うどんを完食し庭を少し散歩した後また眠りについた。業は片時も月の傍を離れることはなく一日中看病をしていた。3日後実家を後にし新幹線でゆったりと帰った。車内は平日にもかかわらず席が埋まっていた。月と一緒に外を見ながら駅弁を食べ好きなお菓子の話をしながらエッセル学園内に入るまで暇をつぶしていた。学園内に居住していなくても学園内を公共交通機関で通過することは許可されている。なにせ広いので不可抗力だからだ。月があと20分くらいの所で寝てしまい業は起こそうとしたが少し寝かせることにした。駅に着き許可証付きのパスをかざし月を連れて電車に乗った。家に着き月を寝室で寝かせると仕事へ行く準備をしていた暗音がいたので少し話をして送り届けた。業はコーヒーを淹れ椅子に座り天井を見上げた。ここ最近で起こった出来事が一気に頭の中に流れ込みパンクしそうになった。これから何が起こるのか予想が出来ず、底が見えない恐怖に襲われそうになったが何とか気を紛らわし残りの休暇を楽しむことにした。




