波動
苅部は少年の中にいる謎の存在の指示によりこの街にいる連続誘拐犯を見つけ出すのに奮闘していた。1日目は何の情報も得られず追跡も出来なかった。しかし一つだけわかったことがありその誘拐犯は男だということだ。それ以外は何もわからなかった。家に帰り夕飯を作る準備をしていた所に一本の電話が入った。それは妹二人を誘拐したというものだった。「お前は誰だ!」電話の先の男は不気味な笑い声を出すと妹二人の声が薄っすらと聞こえてきた「おい!俺の妹達をどうするつもりだ!」「どうするもこうするも!俺のコレクションにしてやるのさぁ・・・・あひゃひゃひゃひゃ!!!」「目的はなんだ!金か!」「いいやぁ俺の目的はこのガキ共をあのお方に捧げるのだ!」「あのお方・・・・?」「まぁ・・・ラストチャンスをやろう!!!旧東向日葵製鉄工場へ来い!!!」「旧東向日葵製鉄工場・・・わかった」「さっさときやがれ!ゴミ野郎!」旧東向日葵製鉄工場、2044年に閉業して以来全く使われていない廃工場。噂では中で人の声がするという。苅部は全速力で旧東向日葵製鉄工場へと走った。家からは全力ダッシュなら6分で着くが6分では遅い。もっと速くもっと速くしなければならない。苅部はいつも以上に全速力で走り4分で着くことができた「はぁ・・・はぁ・・・おい!来たぞ!」すると寂れたスピーカーからガビガビの声が鳴り響いた「ほんとに来るとはなぁ!!俺は奥の輸送エリアで待ってるぞ!!!」全てが錆びており所々に蜘蛛の巣が張り埃っぽい中を恐る恐る進んで行き作業エリアに到着すると袋をかぶせられ手を縛られた二人の子供らしき人物と全身刺青の小太りの男がいた。「貴様!今すぐに妹達を解放しろ!」「無理だなぁ!!!だってこいつらは既に死んでるからなぁ!!!!」「なに!?」誘拐犯は頭の袋を外すとそこには白目を向き口からは大量に何かの肉片が溢れ出していた「き・・・貴様ぁ!!」苅部は男に向かって走り始め腕を燃焼させ始めた。腕は瞬く間に300℃を超え炎がチリチリと出ていた。「苅部・・・玄太郎だったかぁ?それがお前の力かぁ・・・なら俺は!この力だぜ!」誘拐犯は口を膨らませると超高圧の水を噴出した「おわぁ!」苅部は燃える腕を防御のために使ったため炎が消え腕も冷えてしまった「おらおら!さっきまでの威勢はどこいった!」苅部はじりじりと追い詰められた。そこで苅部は床に散乱していた鉄くずを投げ始めた。ははははは!こんなゴミ!かすり傷もつかないぜ!」誘拐犯は水を止めると鉄パイプを持ち襲い掛かり始めた「こいよ!お兄ちゃん!」苅部は襲いかかる鉄パイプをよけつつ腕を再燃焼を始めた。腕の燃焼には体力と身体の温度が必要。しかし先ほどの水噴射により冷えていたためかなりの時間を要することを理解していた。なので燃焼ではなく「波動」を使おうと考えたが、波動はまだ未完成に近く発動することは容易いのだが威力が安定していない。誘拐犯を倒せればいいのだが一発でもしくじれば命の危険がある。しかしやらなければどの道殺される「一か八かだな・・・」苅部は拳を強く握ると拳から禍々しい黒紫色のオーラが拳に纏わりつき始めた。「なんだそりゃ・・」誘拐犯もこの雰囲気は何か不味い予感がしたので距離を取り防御と回避の姿勢を取り警戒した。次第にオーラは苅部の右手全体を包み込み始め攻撃姿勢を取った。「恐らく2隗分・・・だがそれでいい!」苅部はオーラを纏った腕を誘拐犯にぶつけるために接近を始めた。誘拐犯は水を噴射し遠ざけようとしたが何故か水が効かず苅部は水を弾いて誘拐犯に突っ込み、瞬く間に懐に入り込むと腹部にオーラをぶち込んだ。そのオーラ攻撃こそ波動である。誘拐犯は鉄くずの中に吹っ飛び大ダメージを負った。苅部は更に追撃しようと近付いた「ぐはっ・・・これがあの方が言っていた・・・鍛錬能力・・・・」苅部は誘拐犯の顔を覗き込むと顔に拳を叩き込んだ。4回目で死んだことが分かった。苅部はすべてが終わったとわかり誘拐犯の亡骸を引きずった。するとそこにあの小学生が訪れた「よくやったぞ苅部・・・では望みを叶えてやる。母親の命を助けてやる」「お願いだ・・・妹達も・・・」「それは無理だ」「お願いだ・・・」「ならば母親の命を諦めろ」「お願いだ・・・」「何度も言わせるな!救えるのはどちらか一方!さぁ選べ!選ばないのなら!私は帰る!」苅部は4秒悩んだ後、妹達を選んだ。「それでいいのか苅部玄太郎」「あぁ・・・母さんは俺がどうにかする」「・・・わかった」小学生は妹達の亡骸に鈴の付いた簪を額に刺すと祈禱を始めた。すると鈴が独りでに激しくなり始め、妹達の傷が逆再生したかのように治っていき3秒も経たないうちに完治した「これで完了した・・・この誘拐犯の亡骸は私が回収させる」「させる?」「あぁ・・・我々は暁の尊様に属するわけでもなく国家に属するわけでもない、言わば第三勢力というわけだ」「第三勢力・・・」「我々は悪につくわけでもなければ正義つくわけでもない、ましてや時代の勝者に付くわけでもない。我々は己を信じる者につく」「・・・・」「では私はこれで」「待ってください!」「なんだ?」「俺を・・・貴方達の仲間にいれてください!」「・・・・」「俺は・・・俺を信じてくれる全ての者のために戦いたい・・・こんなことされて・・・俺はもう黙っていられない!」「だからどうした?」「己を信じる者につく・・・その言葉に心から感動しました・・・俺も!俺を信じる者にのために戦い!生き抜いてやります!」「・・・・・・・・」「だから俺をいれてください!」「わかった。しかし貴様には家族がいるだろう」「・・・」「我々の仲間になりたければそれなりの誠意を見せてくれないとな」その日、苅部は妹二人を連れて帰るとそのまま手紙を残し家を出ていった。時々家の方向を振り返り涙を流し最終電車に乗り込み第三勢力の本部へと向かった。翌朝父は息子の家出したことを知りすぐさま関係各所に電話を掛けたがそんな人間は居ないと返され次第に苅部家族は彼のことを忘れていった。苅部は某超巨大電波塔の地下施設にて新メンバーとして紹介された。苅部の前には椅子に座っている39名と黒服の男達が彼らを囲んでいた「彼が苅部玄太郎くんだ、彼は世にも珍しい鍛錬能力を手にしている」場はざわつき苅部は少し誇らしくなった「彼をよろしくね」場は拍手に包まれると黒服の男達に連れられ面談室へと連れていかれた。パイプ椅子に座りしばらく待っていると髪の長い女性が入ってきた。女性は椅子に座ると自分の生い立ちや能力について色々な質問を行った。苅部の鍛錬能力・波動はその時の感情によって効果が変わる。主に喜怒哀楽に分かれており一つずつ記していく。喜は回復効果で自分と相手を治すことができる。しかし治せる範囲は全治2ヶ月の怪我までなので命を落とした人間や重病患者などは治すことができない。怒は攻撃の威力を上げる。怒は基本殴り技。10段階の上昇があり単位は隗。一隗=1tと考えていい。怒は比較的どの感情よりも発動しやすいがその分負担も大きい。今まで出した限界は5隗で出した後は2週間右手が動かなかった。哀は凍てつかせる。哀は蹴り技。哀を発動すると足が-108℃にまで冷える。この蹴り技を食らわせると食らった箇所が凍る。楽は自身の身体能力の向上。この能力は調節が難しく加減を間違えると薬物を使用した時と同じ状態になるため注意が必要。現時点でこれらの併用は難しい。追跡は追跡対象に関連する資料をナイフで突き刺すと発動する。追跡範囲は資料から推測される範囲まで。燃焼は両腕(肘から下)の体温を急激に上昇させ炎を微量に放出する。使用しすぎると内部から火傷が始まる。これらが苅部玄太郎の能力の全てである。彼のフィジカルの強さは父親の影響が強く父親も能力者である。父親は与える力を2倍にする能力を持っておりそれを使ってプロボクサーをしていた。しかし力加減を誤り相手を死なせてしまい引退、以降は様々な工場で働いている。更に母親も微弱ながら回復能力がありそれらが混ざり合うことで波動の基礎となったと考えられる。髪の長い女はそうレポートをまとめると苅部を部屋から出しこれから過ごす自室へと案内した。中はそれなりのビジネスホテルのような内装で高級そうなソファと様々な本が並べられた本棚、机も丁寧に磨かれており自分の姿が反射して見えた。ベッドは質素な物だったが何故か身体にフィットする物だった。あと風呂トイレ付き。テレビもあり理想的な物を全て詰め込んだような部屋だった。その日苅部は部屋で一日を過ごし翌日からは組織内で働き始めた。一方尊は苅部からの報告がないこと、そして苅部の記録が全て消されていることから第三勢力にスカウトされ入団したことを察した。尊はメンバー不足に少し焦りながらも次なる人物に向けて動き出した。




