降臨
エッセル学園、ここは暁随一の超進学校である。広さは東京都一個分に相当し高い偏差値もさることながら教育環境や設備も充実しており、学園内には居住区域が設置されており寮生活をすることもできる。更に学園内には専用のモノレールと地下鉄が設置されており学生や教員はタダで乗れる。あと女子校である。そんなエッセル学園ではある噂が飛び交っていた。それはこの学園内で超能力者がいるという噂だった。超能力者自体この世界ではあまり珍しいことではないものの一般的でもない為、皆は誰が超能力者かという考察をしていた。候補に挙げられたのは3人。エッセル学園学園長鈴木麗美、エッセル学園生徒会長榊原・アテネ・照美、エッセル学園理事長桐生みなみの3人だ。もう言ってしまうが超能力者は榊原・アテネ・照美だ。彼女はこの噂が広がっていることを知りかなり焦っていた。ここで噂に惑わされないように弁明すれば疑われ何も言わなければ疑われどうすればよいのかわからなかった。学園長と理事長はアテネの能力の事を把握しており、このことは我々で沈静化するので安心した学校生活を送るように励ました。学校終わり、アテネは夜遅くまで自習室で勉強をし夜21時に居住区域内にある自宅へ帰った。居住区域では自身の家族を住まわせることが可能である。生活を送ることが困難な家庭を救済する為である。アテネの家庭も稼ぎ頭であった父親が不倫をし生活が一気に困窮してしまった。奇跡的にアテネの頭が良かったのでエッセル学園へ入学することができ居住区域に母親を住まわせることができた。「はぁ」「あらお帰りなさい!遅かったわねぇ」「ただいまお母様・・・今日は大変だったのよ」「あらそ~!生徒会長ってのも大変なのね~」「えぇ」「夜ご飯用意するから出来たら呼ぶわね~」「はーい」アテネは2階の自室へ行き鞄を椅子に置くとベッドに倒れ込んだ。「あー!どうしてですの!」アテネはどこからこの噂が湧き出てきたのかを考えた。友人かと思ったが彼女には友人はいない。なら自分の能力を知っている者か、もしくは学生間で根も葉もない噂が作り出されたのか。どっちみちやばそうなので今は学園長と理事長に任せることにした。「照美~!できたわよ~!」「はぁ~い」アテネは一階へ降り夕飯であるハンバーグを食べた。「お母様今月の配給満足してます?」「えぇもちろん!こんなに沢山ご飯もらっちゃって何だか申し訳ないわぁ~」「申し訳なさなんて感じなくていいです、正当な制度だし有難く頂きましょ」「そうよね~本当この学校に感謝しかないわぁ」「・・・・」「でも卒業後どうしましょう・・・」「卒業後もここに住めますわ」「あらそうなの?」「えぇ成績優秀者の特権ですわ」「流石私の娘!」「だから安心して暮らしてくださいお母様」「わかったわ、ありがとう照美」「どういたしましてお母様」するとチャイムが鳴った。「こんな時間に誰かしら?学校の方かしら?」「わたくしが出ますわお母様」アテネがモニターを見ると清潔なスーツを着た男が微笑みながら立っていた。「誰かしら」アテネが恐る恐る扉を開けると男は深々とお辞儀をした。「夜分遅くに失礼いたします。私、暁の尊様の側近でございます」「暁の・・・ってあの尊様のですか?」「はいそうです!あの尊様のです!」「そんな方が何の御用ですの?」「貴方様をお尋ねしたのは尊様が貴方様を必要とされているからでございます」「どうしてですの・・・・?」「貴方様のお力をお貸しして欲しいんです!」「・・・・どうしてわたくしの力の事を知っているんです?」「尊様のリサーチでございます!リサーチですリサーチ」「・・・・残念ですがわたくしに能力なんてありませんわ」「あら?そうでしたか・・・ですがもし何かありましたらこちらにお電話してください!」男はにこやかに名刺を渡すとまた深々とお辞儀をしどこかへ去っていった。「きっと詐欺ですわね」しかし謎の信憑性を感じたため名刺は一応保管しておいた。「誰だったの?」「宗教勧誘ですわ、こんな遅くまで逆に感心しますわ」「嫌ねぇ~最近この地域で変な人増えてるらしいし気をつけてね~」「はいお母様」夕飯を食べ終え自室へ戻り勉強をしようとパソコンを開くと32件通知が着ていた。メールボックスを開くといつものように殺害予告だった。「またですわ、飽きないものですわね」メールを削除すると明日の授業の予習を始めた。アテネはこの学園内での学力テストでは毎回1位を取るほどの才女で褒め称えられることもあれば恨みをかうこともある。気にしていないフリをしているが彼女はまだ16歳。かなり傷ついており学力テスト後には必ず目につかないところで泣いている。「はぁ・・・」アテネは1時間の自習を終えると23時にようやく眠りについた。その夜夢を見た。大勢の人間達に恨みつらみを言われながら追いかけられ自分はひたすらに逃げ惑う夢だった。アテネは最近このような夢をよく見る。そのためよく眠れていない。そして朝を迎えた。この日は土曜日のため休日で学校も一部しか開いていない。アテネは朝6時に図書館へ向かった。電車に乗ると車内がざわざわし視線を感じる。「アテネ様よ!」「席譲ってあげましょ!」「アテネ様!どうぞこちらへ!」「あぁ・・いいのよ座ってなさい」「いえいえ!アテネ様!どうぞどうぞ!」「では・・・有難く座ろうかしら・・・・」この様な気遣いもアテネにはかなり精神的苦痛だった。7時に学園近くの駅に着き学園に向かう道中も自分が通るだけで歓声が起こる。聞こえないフリもよくないので少し手を振りながら学園へ向かい図書館へ着くと12時まで勉強をした。勉強終わりに図書館を出ようとすると多数の生徒から昼ご飯を貰う。「アテネ様!こちら朝早くから作ったんです!食べてください!」「私のもの!」「自分のもの是非!」「皆様ありがとう、では皆様一緒に食べましょう」13人くらいの生徒と一緒に食堂へ向かい全員が作った弁当を残さず食べた。「どれも美味しかったですわ・・・」「誰が一番美味しかったですか!」「皆様の努力と愛情に順位などつけるのは野暮ですわ」食堂には大歓声が巻き起こった。その後食堂で一休みしていると手袋にスーツ、そして細い眼鏡をかけた男が近づいてきた。「榊原・アテネ・照美さんですね」「はい・・・そうですけど・・・」「私は国家安全保障係特殊事象対策部の中目フートと申します」「そんな国の重役の方が何のようですの?」「単刀直入に伺いますが・・・あなた能力ありますよね・・・」「・・・・・」「貴方は国に能力の消失を報告した、しかしまだ貴方には能力は存在しているそうですよね?」「・・・・ここではあれなので・・・別の場所で話しましょう・・・・」「えぇもちろん」アテネは談話室に連れていき話を続けた。「それで・・・実際のところどうなんですか?」「わたくしに能力は・・」「ここで噓を付けば貴方の家族丸ごと監察行きですけど・・・それでもいいですか?」中目の冷たい目がアテネのか弱い心を貫いた。「・・・・・・っ」「別にねぇ・・・ここで本当のこと言ってしまえばいいんですよ」「わたくしは・・・・」「どうなんですか?」「まだ・・・能力はありますわ・・・衰えたり弱くなったりもしてませんわ・・・むしろ日に日に強くなってますわ」「では国に虚偽の申告をしたと?」「噓をついたつもりは!」「いや、実際に貴方は噓をついた。どんな事情かは知ったこっちゃないですけどこれは明らかな虚偽申請です」「わたくしはどうなるのですの・・・?」「まぁ、君くらいの歳なら逮捕まではいかないだろうけど保護者様には何らかの罰が下るでしょうね」「・・・見逃してくれませんか」「無理ですよ」アテネは土下座をし涙ながらに懇願した「お願い致します!どうか見逃してください!ようやく手に入れた幸せなんです!お願い致します!お願い致します!」「おいおいおいおい困ったなぁ・・・・」「どうかこの通りです!何でも致します!お願い致します!」「一つだけありますよ」「何ですか・・・?」「保護者様に全てを擦り付ければいいんですよ」「え・・・・」「保護者様が事実を隠匿していたと我々に通告すれば貴方の名誉は守られますよ」「でも・・・・」「選択肢は2つだけ・・・・虚偽を認めるか、母親にすべてを擦り付けるか」「・・・・・」「まぁどっちでもいいんじゃない?だって君には一切罰がくだらないんだからさ」「そんな・・・!」「さぁ決めるんだ」「・・・」するとアテネの背中が光りだすと大きな白く輝いた翼が現れた。「力尽くで抵抗ってわけか、正しい選択じゃないなぁ」中目は右手の手袋を外すと煙を噴射し始めた。「貴方を殺せば・・・・この事はなかったことに!」「落ち着けって」「もう・・・わたくしは誰も苦しめたくない!」アテネは翼をはためかせると強烈な突風が吹き中目の煙はかき消されてしまった。「マジかよ・・・・」「もう嫌なの!」「落ち着け!まだ方法はある!」「・・・・?」「能力が再発現したと報告すればいい・・・・それには証明が必要だが・・・今ので証明はできる・・・・」「・・・・・」アテネから翼が消えると倒れこみ中目は抱えるとソファに座らせた。「あの・・・大変申し訳ございません・・・」「いやいいんだ・・・自分も追い詰めるような言い方をしてしまった・・・申し訳ない」「それで・・再発現の件は・・・」「あーそれはこっちでやっておくから後で送る資料書いてもらえばそれでいいよ」「はい」アテネは落ち着くと中目は話を続けた。「それで・・・えーっとなんだけなぁ・・・あーそうだ、君の能力のことなんだけどさ翼だけじゃないでしょ」「はい・・・最近光った矢みたいなのが出せますわ・・・・」「それはいつ頃?」「1年前くらいですわ」「ふーん・・・それで何か他には?」「他は特にないですわ」「そうかぁ・・・凄いよねぇ君の能力」「そうですか?」アテネは露骨に照れ始めた。「それで・・最近能力使った?」「いえ・・・もう何年も使ってませんでしたわ」「なるほどねぇ・・・・話は以上だよ」「そうですか・・・・」「ごめんね突然呼び止めちゃって」「いえ・・・」「それじゃ何かあればここに電話かけてね」中目は自身の部署の電話番号を書き記したメモを渡すと談話室から出た。「はいありがとうございました」アテネは談話室から中目が出ると崩れ落ちた。能力を久々に使い体力を消耗しきってしまい20分は動けなかった。「はぁ・・・・疲れましたわ」アテネはそのまま眠りに落ちてしまった。大きな音がして飛び起きると外で何やら巨大な白煙が立ち上っていた。「なんですの!」アテネは学園から出て現場の近くに行くと雑居ビルが大炎上していた。「なんてこと・・・・」するとアテネはビルの屋上に小さな子供が取り残されているのが見えた。どうやらクレーンでも炎が強く近寄れないらしく、火が益々強くなるため救助は困難を極めていた。「危ないですわ・・・・・」火は次第に子供へと着実に近づいておりもう助からないムードが漂っていた。しかしアテネは助ける方法を知っている。自分だ。自分が飛べばあの子は100%助けられる。しかしアテネは能力を使うのが怖かった。アテネは幼少期自身の能力を存分に使っており、アテネもこの能力を神からの贈り物だと感じ非常に誇らしかった。しかし事件は起こった。とある日友達が崖から飛び降りようとしており、周囲の人間は必死に止めたがその友達は飛び降りてしまった。アテネは共に飛び降り翼を使い受け止めようとしたが落下速度が速く掴み切れずにそのまま地面に打ち付けられ死んでしまった。このトラウマからアテネは自身の能力に自信がなくなると共に、使っても誰も助けられないと感じ能力を封じ込めてしまった。アテネが恐怖で震えていると炎は一気に子供の近くにまで上っていった。周囲からは悲鳴が上がり誰もが助からないと思い泣き始めた。「誰かがやらなきゃあの子は死にますわ・・・ならだれがやるのです・・・・わたくししかいませんわ・・・・!」アテネは自分にこれをひたすら言い聞かせると翼を生やし一気に上空へ上っていった。「なんだありゃ!」「天使か!」「いや・・・アテネ様よ!アテネ様だわ!」「アテネ様ぁ~!!!!」アテネは今にも飛び出してしまいそうな心臓を抑えると子供を抱きかかえ地上へ降ろした。「おぉ~!!!」「よくやったぞお嬢ちゃん!」「凄い!」「アテネ様すごいわ!!」アテネは誰にも何も言わずその場から逃げ出すように走った。「はぁ・・・・はぁ・・・やっちゃった!やっちゃった!」一部始終を見ていた中目は本部へ連絡すると同時に尊にも電話をかけた。アテネは自宅へ飛び帰ると自室に飛び込んだ。「はぁ~!!!もう終わりだぁ」アテネはその日一切SNSやテレビを見なかったが母親にはもう伝わっていた。「あなたすごいじゃない!」「仕方なかったんですわ・・・・」「まだあの子のこと引きずってるの?」「引きずらない訳ないですわ」「あなた聞いてなかったものね、あの子のご両親、貴方に凄い感謝していたのよ」「え?」「あの子のご両親がね、貴方が最後の最後まで助けようとしてくれたことに凄い感謝していたのよ」「それは本当ですの・・・・?」「だから気にしないでって言ってたわよ」「・・・・・・・」アテネはそのことを聞くと更に身体から力が抜けてしまい夕飯も手につかなかった。その日はどうやって寝たのか覚えていないくらいすぐにに眠ってしまい翌日目覚めると玄関前に取材陣が大量に張り付いていた。一階降りると母親がテレビを見ながらお茶を飲んでいた。「どうしましょう・・・」「あー・・・ほっといておきましょ、どうせすぐ帰るわよ」「そうなのですかね・・・・」しかし母の予想とは裏腹に昼過ぎになっても取材陣は帰らなかった。「もーしつこいわねぇ」「すみません・・・わたくしのせいですわ・・・」「いやいや照美は何も悪いことしてないわよ」「でも・・・」「どうしようかねぇ・・・」アテネは思い出した。中目からもらったメモに書かれた電話番号に電話をした。「もしもし、そちらに中目フート様はいらっしゃいますか?」「はいしばらくお待ちください」2分後中目が電話に出た「もしもし」「あの・・・榊原・アテネ・照美です」「どうしたんですか?」「玄関前に取材の方が大量に張り付いているんです・・・・」「そうですか、ではこちらで手配させますのでしばらくお待ちください」「はい・・・お願いします」「どのくらいいます?」「ざっと30人くらいです」「わかりました、では1時間後そちらに隊員が向かいますので」「はい・・ありがとうございます・・・・」電話を切り1時間後本当に取材陣がどこかへ消えていき玄関前が静かになった。「あ~やっと帰ったわぁ~」「そうですね」もうすっかり辺り一面暗くなってしまっており予定も全て崩れてしまった。「お母様・・・わたくしお買い物に行ってきますわ」「だめよぉ~また取材陣に取り囲まれちゃうわよ」「あぁ・・・では・・・・どうしましょう・・・」「私が行くから、照美は家で留守番してて?」「大丈夫ですか?」「大丈夫大丈夫!」母親が買い物へ向かうと恐る恐るテレビを付けた。するとニュースで自分が取り上げられており顔もバッチリ写っていた。「あ~・・・どうしましょう!どうしましょう!」アテネは比較的穏やかで健康的で優雅な学園生活を送りたかった。しかし今回の一件でもうそのような学園生活は送ることはできない。アテネは部屋で悶絶しながら今後について一人で考え詰めていた。20分後母親が帰ってきて夕飯を食べた。「どうしましょう・・・明日から・・・・」「胸を張りなさい照美、あなたは一人の命を助けたのよ」「でも・・・・」「何も犯罪したわけじゃないんだから」「そうですわよね・・・・・」アテネは自分のやった行為に自信を持とうと頑張った。翌朝学園へ向かうと外では大量の出待ちの学生がいた。「おはようございますアテネ様!」「あ・・・・・おはようございます」「さぁ行きましょう!」「でも・・・・何でこんなにいるのですの?」「だってアテネ様、一人でいたらマスコミに追いかけられるでしょ!」「だから私たち!アテネ様護衛隊が学園までボディーガードさせていただきます!」「はぁ・・・・それはありがとうございます・・・・・」アテネはボディーガードに囲まれながら電車へ乗り無事に学園へ着いた。すると学園の校門前にはおそらく自分を待っているであろう生徒がびっしりと行列をなして待機していた。「さすがにこの人数はやばいですわね・・・・・」するとそこにとある人物がやってきた。「やぁ昨日ぶりだね」「中目さん!」「なになに?」「知り合い?」「えぇ、国家安全保障係の方ですわ」アテネはボディーガードの中から抜け出し中目の元に向かった。「今日はどうされたのですか?」「この前の件、お母さまに書類送ったからそれの報告とこの学園に用事でね」「そうなのですね。そういえばこの前の件・・・わたくし何か罰を受けるのでしょうか?」「あーあれ?大丈夫だよ大丈夫」「良かったです」「まぁ~人命救助って理由なら見逃してくれるしそこまで厳しくないからね」「それなら良かったです」中目はチラッと校門を見ると、滅茶苦茶写真や動画を撮られているのに気が付いた。「ファン?」「いえ・・・生徒です」「あれで校内入れる?」「多分無理ですわ・・・・」「なら私に任せてよ」中目は指から濃い煙を出すとアテネを抱えて学園内に入っていった。「あれ!どこに!」「アテネさま~!」「きっと裏口よ!」出待ちしていた生徒達は散り散りになっていった。中目はアテネを物陰で降ろすと手袋を付け呼吸を整えた。「ここまでくれば大丈夫だろう」「わざわざこんな事まで・・・・本当にありがとうございます」「じゃあ気をつけてね」「はい!」「そうだ・・・職員室ってどこ?」「食堂に続く道をまっすぐ行くとありますわ」「ありがとね~」中目は職員室の方向へ行くとアテネも教室へ向かった。教室へ着くとアテネは早速囲まれた。「アテネ様!あれ見ましたよ!」「見せてください!あの羽みたいなやつ!」「そうそう天使の翼みたいなやつ!」「見せて見せて!」「それは・・・・あの・・・・・」「見せてください!」「私!写真部なので今日撮らせてくれませんか!」「うちは美術部だから絵描かせて!」アテネはますますパニックになり目が回り始めた。「あの・・・」「映像部です!」「新聞部です!」するとアテネは机を叩き声を上げた。「わたくしは!この能力が嫌いですの!見世物ではないですの!」そういうとアテネは教室を飛び出し屋上へ向かった。「はぁ・・はぁ・・・みんな・・・わたくしの能力を・・・・見世物だと思ってますの・・・・もう嫌ですわ・・・」アテネの背中からはアテネを包み込むように翼が生えており、涙で溢れるアテネの姿を見せないようにしていた。アテネはそのまま4時間目まで屋上で翼の中に閉じこもっていた。次第に雨が降り翼を濡らし始めた。アテネはそれに気が付かないくらい心が沈んでおり何もしたくなかった。そこに中目が現れた。「・・・・・・・・」巨大な白い翼に包まれている姿を見て少しうつむくとタバコを吸おうとした。「ここは禁煙ですわ・・・・」「まじか・・・・」中目はタバコを箱に戻すと翼に近づいた。「皆心配してるぞ」「いいですわ・・・心配しても・・・・」「ずっといたら風邪ひくよ」「引いてもいいですわ」中目は袋から焼きそばパンを取り出した。「お腹空いたろ?」「・・・・」「ずっと能力使ってたら体力使うだろ?ほら食べな」アテネは翼をしまうと焼きそばパンを受け取り食べた。するとボロボロと泣き始めた。「どうした?何かあったの?」「わたくしのこと・・・みんな物だと思ってますの」「能力か」「そうですの・・・・・もう私はあそこにいたくないのですの」「まぁねー・・・・」「こんな能力・・・欲しくなかったのですの」「私もわかるよ。私もこの能力は大嫌いだった」「どうしてですの・・・」「この能力は俺の家族を殺した奴と同じ力なんだ」「え・・・」「だからこの能力から目を背け続けてきたんだけどさ、最近その能力を使わざるを得なくなってね」「それはどうしてですの?」「他の能力者に部下を殺されたんだよ・・・・だからこの能力を使ってそいつを殺した」「・・・・」「いざ使ってみると心の中が高鳴っちゃってるのに気づいてね・・・正直怖かったよ。けどね誰かを守れる力だというのにも気が付いてね・・・この能力にもう一度向き合ってみようって思ってるんだよね」「もう一度・・・・」「だから君も向き合ってみたらどう?」「でも・・・わたくし・・・怖いです・・・・・・」「確かに怖いよね」「この能力を告白してどうなるか・・・もうばれてしまった以上・・・・せざるを得ないといけないのに・・・勇気がないですの」「・・・・・・・!」中目はアテネの頭を抱きかかえると屋上に謎の人物が飛来してきた。「なんだお前は・・・・」「なんですの・・・・?」謎の人物はこちらを見るなり笑い声をあげた。「お前かぁ!ガキを助けたくそガキは!」謎の人物は腕を燃やすとこちらに近づいてきた。「あの火事・・・・お前の仕業か」「・・・・・・!」「あぁそうだよ!あのビルを燃やして最後はガキを殺してフィナーレだったのに!そいつが邪魔しやがった!だから次は!この学園を燃やしてやる!」炎の男はこちらに走ってくると中目はアテネの手を引き校内へ逃げた。「あいつ・・・重要指名手配犯の火焔か!」「火焔・・・・ってあの博物館とか小学校とか燃やした?」「よく知ってるな・・・あいつ・・・1年前の森林火災で死んだと思ってたのに生きてやがった」「今から全校生徒を逃がすのは無茶ですの・・・」「いいや、やれる」中目は火災報知器に向けて煙を放っていった。学園全体に火災発生のベルが鳴り響き生徒達は慌てて教室から出てき始めた。「まぁこれである程度は出せるな・・・」すると後ろから火焔の声が聞こえた。「おいガキ!お前を殺してやる!!!!!!」すると火焔は手で炎を丸め始め炎の玉をいくつも投げた。「やばい・・・!」「わたくしが・・・・やりますの・・・」」「できるの?」「わたくしも・・・向き合いますわ!」アテネは弓道で矢を放つような構えをすると左手の指先から徐々に矢のようなオーラが出始めた。「それが・・・・」「なんだぁ?光ってるぜ・・・・!!!!」そしてある程度形になったところでアテネは矢を放った。しかし途中で消えてしまった。「なんだそりゃ!!!ほら!もっとこいよ!ほら!」アテネは再び構えたが放たれた火の玉に当たってしまいダメージを負ってしまった。「きゃあ!」「大丈夫か!」何とか髪で顔への衝突は免れたが長い髪の一部が焼け落ちてしまった。「ほらほら!!!抵抗しないと殺しちまうぜ!!!!!!!!!!!!!」中目は煙を出し煙の壁を張るとその場から撤退した。「野郎!!!どこだぁ!!!!」火焔は次々と火をつけ始め次第に火が大きくなり始めた。中目はアテネを連れ校庭に出ると全校生徒達もそこに集合していた。「アテネ様!」「あぁ中目さん!どうされたんですか!」「はぁ・・・はぁ・・・・先生方は安全な場所へ避難してください!あれは火事じゃないです・・・放火です・・・!放火犯が中にいますが時期に!」中目が言いかけると火焔が校庭に飛来してきた。完全に怒っており先ほどよりも腕の炎が強くなっていた。「ちょこまかと逃げやがって!」全校生徒達は逃げようとしたが火焔が放った炎で壁ができ逃げることができなくなってしまった。「もういい!ここで全員焼き殺す!!!!」火焔が生徒に向け火の玉を放つとアテネが飛び出し翼で生徒達を守った。「くっ・・・・!」「アテネさま!!!」「大丈夫・・・ここh私が!」火焔は翼に向けて容赦なく火を放ち続け翼はどんどん崩れ落ちていった。「はぁ・・・はぁ・・・・」中目は助けようとしたが炎の壁に阻まれて助けることができなくなってしまった。「くそ・・・とりあえず本部へ連絡するか・・・」炎の中ではアテネがいたぶられておりそろそろ限界をむかえていた。「ほらほらほら!もっと翼を生やさねぇと死んじまうぞ!ほらほらほらほら!」「アテネさま!もう私たちはいいです!もうやめて!」「そうですよ!死んじゃいます!」「わたくしはこの力で・・・あなたたちを・・・守り抜きますわ・・・もうだれも・・・死なせないですわ!!!」アテネが心の中で強い決意を固めると新たな翼が生え火焔に向けて強風をぶつけた。「ぐお!!」そしてアテネは矢を放つ構えを取った。「はぁ・・・俺を殺したら!人殺しになっちまうぞ!」「私の矢は殺さないですわ!」アテネの左手から先ほどよりも強い矢のオーラが出ると思い切り放った。放たれた矢は火焔の胸を貫き火焔は意識を失いその場で倒れ込んだ。炎の壁と校舎の炎は消えてなくなった。「壁が・・・・」中目は倒れていた火焔の生死を調べると生きていて深い眠りについているようだった。「よし・・・身柄確保・・・」中目は拘束器具をつけ到着した本部のトラックへ乗せた。アテネは炎の壁が無くなった途端地面に座り込んでしまった。周囲の人間はアテネに近寄ることができずどうすればよいのかもわからなかった。すると一人の生徒が抱きしめ更に別の生徒も抱きしめ、次第に全ての生徒がアテネを包み込むかのように抱きしめた。「よかったな・・・」中目はトラックに乗り込むと本部へ去っていった。その後アテネは保健室へ向かうと背中の火傷を冷やしその日は早退した。多数の生徒に心配されたが名誉の負傷だからなのか痛みをあまり感じなかった。むしろ誇らしかった。その後アテネは名刺に連絡すると力を貸すことを承諾した。「アテネ・・・貴方の翼と矢は人を守り悪から救う力があります。是非その力をこの世を守るために使ってください」「承知いたしました尊様」「では・・・最近作っている羊羹でも食べますか?」「是非!」最近尊は中目に腕を褒められて以来調子に乗りお菓子作りを頻繫に行い使用人たちに食べさせている。使用人からは好評で特にプリンとクッキーがとてもいい評価を貰っている。アテネは羊羹を食べると余った羊羹を母親と共に家で食べた。「これおいしいわねぇ~」「でしょ?とてもお菓子作りが上手い方なんです」「尊様って意外と女子力高いのねぇ」「・・・・お母様、わたくしは命をかけてこの国を守ることになります・・・お母様は反対されないのですか?」「もちろん娘がそんな危険なことするなんて意地でも止めたいわよ、けどね私はあなたを信じてる、きっとこの国を守って生きて帰ってきてくれると信じてる。だから止めることなんてしないわ」「お母様・・・・」「約束して・・・その時が訪れて・・・戦いに行くというのなら・・・必ず生きて帰ってきて」「はい・・・お母様!」そうしてアテネは尊と共にこの国を守る一員となった。「尊様、次はどのような方になさいますか?」「そうだなぁ・・・この人がいいんだけど」「この方は・・・・」「生きてたらこの人を必ず入れてくれ、これは私が君達に初めてする命令だ」「はっ!」「・・・・・・・生きててもこちらに従うかどうか・・・・彼はこの世のどんな人物よりも私を嫌っているからなぁ」




