起立
尊と華の間には子供がいた。それも2人。名前はミナトと侑斗。2人は産まれて間もなくして尊の遠い親戚の元に送られ親の顔を知らないまま14歳を迎えた。彼らは常日頃から両親は死亡したと親戚家族から聞かされており彼らもそれを疑わなかった。ちょうど尊がアルケミストに華を取られた年に親戚家族の一人がとあることに気が付いた。それは彼らが庭でサッカーボールを使い遊んでいた時だった。その時目撃したのは親戚家族の三女だった。その三女が目撃したのはミナトが宙に浮き侑斗が腕を伸ばして捕まえようとしている様子だった。三女は自分の目を疑ったが何度見てもミナトが浮き侑斗の腕が異様に伸びていた。三女はすぐに祖母に伝えると祖母は2人を呼び出すと自身が持っていると自覚している能力を全て出すように言い2人はあらゆる能力を祖母の前で披露した。ミナトが出した能力は「浮遊」「硬化」「燃焼」「水」「反射」「共鳴」「連打」「増殖」「操作」「電撃」「活性化」侑斗が出した能力は「伸縮」「結界」「門」「回転」「骨」「膨張」「貫通」「運」「生成」「筋肉増強」「延長」これらの能力を事細かく記録し尊の使いの者に伝えた。ミナトと侑斗のことをこれまで以上に監視し新たな能力を確認し次第記録し伝えるように祖母は自身の家族一同に伝えた。それ以降親戚から向けられる眼差しは慎重なものになった。それはまるで動物園で飼育されている動物を見る飼育員のようだった。ミナトと侑斗は自分達が普通の人間ではないと気付き周りの人間を避けるようになっていってしまった。数か月もすれば2人は孤独になった。ミナトは勇気を振り絞って祖母に尋ねた「おばあ様・・・私と侑斗には何が起こっているんですか?」「・・・あなた達に全てを伝えるつもりはありません・・・しかし一部を知る権利はあります」「・・・私は・・・・私達には何が起こっているんですか!」「あなた達のご両親は共に同じような力を持っています。それもあなた達より強力かつ膨大な量を持っています。そんなご両親の血を強く引いているあなた達はそれらの特性を強く受け継いでいる」「特性・・・・」「えぇ・・強力な能力を持ち莫大な量の能力を制御できる、そんな特性をあなた達は受け継いでいる」「それで・・・私達の両親は今どこに!というか生きていたんですか!」「一つずつ答えますね・・・あなた達の両親の事は言えません・・・しかしどこかで確実に生きています」「私達は・・・・捨てられたんですか」「いいえ、ご両親はあなた達を避難させたんです」「避難?何からです!」「それは・・・あなた達には関係ありません」「ふざけるな!私達は今日まで孤独を味わってきた!今まで!ずっとだ!それなのに私達に何も知る権利はないなんて!そんなの!あんまりだ!」「落ち着きなさい・・・あなた達が避難させられた理由を知ればきっと奴が追ってきます」「奴・・・?」「・・・えぇあなた達は一人の男に狙われないように私達の元へ避難させられたんです」「それは・・・誰なんです!」「■■■■と名乗る・・・奇妙な男です」「■■■■・・・依然調べたことがあります・・・古い伏せ字・・・ですよね」「えぇ・・とある聖人の名前の名前の一部です」「それがなぜ」「彼はこの世界中の能力者達を使役するとともに自身に匹敵する最高のライバルを探していました・・・そんな奴が見つけ出したのがこの暁に伝わる暁の尊様に目を付けられたのです」「暁の尊・・・・この暁に長く君臨したと言われている古き家系」「その暁の尊様が・・・あなた達の事を一時的に引き取られていたのですが・・・そのときに■■■■が襲撃しに来たので私達の元にあなた達を避難させたのです」「じゃあ両親は!」「暁の尊様が逃がしました・・・なぜ別れさせたのかはわかりませんが・・・恐らくかく乱させるためです」「じゃあなんで私達が・・・尊様の血を継がれているのです!」「あなた達の両親は尊様の兄弟だったのです」「・・・・・」「これくらいでいいでしょう」「・・・・すみません」ミナトは自室へ戻ると自身のことを見つめ始めるとますます両親のことが気になり出した。ミナトが部屋で悩んでいると侑斗が部活から戻ってきた。侑斗はミナトのことなど気にせず買ってきたポテトチップスを食べようとしていた「侑斗・・・着替えて風呂に入りなさい・・・あと夕飯前に食べると夕飯食べられなくなるよ」「うるさいなぁねぇちゃんは!」「・・・」「ったくねぇちゃんは真面目でお節介だよなぁ!誰に似たんだか!」「侑斗、両親のこと気にならない?」「いいや全然」「ならよかった」「だって死んだんだろ?気になっても無駄じゃんか」「そうだね」「なんだよ・・・今日はガミガミ言ってこないんだな」「・・・・とにかく風呂に入ってきな」「わかったよ・・・変なやつ」侑斗は風呂場へ向かいミナトはパソコンを使い■■■■について調べた。一方そのころ親戚家族は尊からの連絡がなかなか来ないことに疑問を持ちながらもこれからの事を考えていた。ミナトが■■■■のことを認識したことによって追われる可能性があるためミナトだけをどこか遠くへ逃がす案もあったが全てを知ったわけではないので追われる危険性はないと祖母は判断した。その日はそれで話は終わりミナトと侑斗に餃子をふるまった。次の日季節外れの大雪に見舞われ学校が休みとなり侑斗ははしゃいでいた。ミナトとは寒さに震え自室に籠っていた。侑斗は庭の雪かきを手伝いながら雪玉を投げて遊んでいた。ミナトは昼飯時まで自室から出ずにテレビで流れるニュースを見ていた。侑斗雪が降る空を見上げると一匹の鳥がグルグルと旋回していた。侑斗は目を凝らしながら見るとその鳥から大粒の白い何かが落ちてきていた。それを最初は糞だと思っていたがよく目を凝らしてみると雪だった。侑斗はミナトに国営テレビをつけさせると自分の地域以外はどこにも雪は降っていなかった。侑斗は再び庭に出て空を見るとその鳥が段々と降らせる雪の量を多くしており庭には益々大量の雪が蓄積されていった。侑斗はこのことをミナトに伝えたが信じず他親戚家族は仕事に行っていたり買い物に行っていたりと誰一人としていなかったので自分だけで対処するしかなかった。そこで侑斗は庭に落ちていた石を集めて投石にて鳥を撃墜させることにした。一発投げるが当然届かず次は筋肉増強と回転、そして伸縮と延長を同時に発動しながら投げると鳥の右翼に当たり鳥はフラフラと飛び庭の池に墜落した。侑斗はすかさず鳥を掴み胴体をゆすった「この鳥!もしかして俺たちと同じような!殺すか!」侑斗鳥を池の中に再び突っ込むと鳥はブクブクと泡を出し次第に量が少なくなると大きな泡を出すと動かなくなった「しんだ・・・まぁ・・・鯉の餌にでもして誤魔化すか・・・・」侑斗は取れる部分を取るとそれ以外の部分は庭に埋めたり野良猫にあげたりした。雪は溶けなかったので雪かきを続けながら鳥の残骸をそこら辺に散らした。一方尊はやっと回復し自分の子供達の状況を知るとすぐに返信を送った。親戚家族は返信を受け取るとその意思に従った。その後は何の変化もなくそのまま2人は23歳を迎えた。2人は親戚家族がやっている醬油と酒と味噌の製造を継ぎ日々鍛錬と研究、開発、改良を欠かさなかった。とあるひどく凍える冬の日に訪ねてきたものがいた。その人物は「華」と名乗り酒を買いに来たという。侑斗はその華の容姿に惚れるとともに少し浮かれながら接客をした。華は一通りの酒を見て試飲をすると「母の愛」と「家族」という酒を買いその日は店を出た。侑斗は華が出た後も自惚れておりミナトはそれを怒った。華は帰りの新幹線でその酒を眺めながらこっそり飲むと奥深く広がりのある味に驚くと共に数年ぶりに見た侑斗に涙を流し駅まで眠った。一方ミナトは華という人物に少し興味を持ちまた買いに来てくれることを少し楽しみにしている自分に驚きながらも新作の味噌の開発に勤しんでいた。その次の月に華がまた買いに来た。その時はミナトも侑斗と接客をし華と少しだけ話をすることができた。どうやら華は子供と離れて暮らしており旦那にも見限られ傷心旅行をしているのだとか。ミナトはそんな華に味噌を勧め華もそれに興味を持ち「春景色」と「火山」を買ってくれた。同時に「母の愛」と「家族」も買い、今日は店で少し飲むことにした。ミナトは華のどこを見ているかわからない空虚な目に耐えられず世間話を始めた「あの・・・今日はどちらから?」「北海道です・・・・私の実家付近じゃ美味しいお酒がなくってね」「そうなんですね・・・どうしてうちを?」「ネットで見て美味しそうだとおもいまして」「ありがとうございます」「・・・ミナトさんは・・・このお店の娘さん?」「いえ・・・ここは親戚の店で」「そうなのねぇ・・・ご家族は?」「家族とは・・・全然会ったことないです」「あらごめんなさいね・・・そういえばこのお味噌・・・何と食べたら美味しい?」「私は白米に少し乗せるのが好きですね」「いいわねぇ・・・じゃあそうしようかしら」「あの~・・・・俺!侑斗といいます!この酒つくりました!」「あら~侑斗くんねぇ・・ご兄弟?」「はい・・双子の弟で!こら!侑斗!」「ごめんよねえちゃん!でも!そのお酒!なんにでも合うんで!」「あら~じゃあ何と合わせるのがいいかしら?」「えーっと俺は!油ものとかと一緒に飲みますね!焼き鳥とか!」「あんたの合わせは変なのよ!華さん!お刺身とかにピッタリですよ!」「うふふ・・・どちらも試してみるわよ」「ありがとうございます!」「じゃあ・・・あとこのお味噌汁の具も買おうかしら」「まじすか!サンキューです!」「3つあるけどどれがおすすめかしら」「俺は油揚げです!」「私はシジミです」「じゃあ油揚げとシジミどちらも買うわ」そういうと華はシジミと油揚げの袋を取り会計をした。合計で3万円。2人は華を見送るとそれを見ていた親戚の1人がその光景を目にしており微笑ましく思うと同時に来ていた人物の後ろ姿を見て何か引っかかるものを感じた。その親戚はすぐに祖母の遺した日記や書物を調べると「華」という人物にとても似ていることがわかり、2人にも話を聞き来ていた人物が華だとわかると親戚を全員呼び緊急会議を開いた「というわけで・・・来ていた人物は華です!」「何だと・・・華は生きていたのか」「それよりも・・・何故自分の子供に近付き始めたんだ?」「そりゃ自分の子供の能力を利用するためだろ!あの女は既にあの男の手中だからな」「とにかく次来た時!我々で厳重な監視を行いましょう」「はい!」親戚家族は華が次に来店した時に厳しく監視すると共に2人にも華に入れ込みすぎないように警告をした。そして1ヶ月後華が再び来店した。華は再び同じ酒を買い2人とも会話をした。華は少し疲れているような様子を見せていたが旅の疲れだと二人には説明した。ミナトは華のことを何故親戚たちが警戒しているのかわからなかったが話しているうちに少しわかる気がしてきた。華と話していると謎の安心感に包まれ無限に自らの弱い部分を話してしまう。これを危険だと親戚は判断したんだと思い慎重に会話を続けた「ねぇミナトちゃん」「はいなんですか?」「・・・もしお父さんお母さんが突然目の前に現れたらどうしたい?」「とりあえず・・・抱きしめたいです」「へぇ・・・どうして?」「だって・・・私達のことを守るために捨てたんだから・・・感謝の意を込めて抱きしめたいです」「優しいのね」「・・・・・」「華さんも・・・・お子さんとどうしたいんですか?」「・・・一緒にご飯を食べたいな」「ご飯ですか・・・いいですね」「・・・ミナトちゃん」「はい」「あのね・・・私はね」「・・・・・」「君たちの母親なんだ」「え・・・・」「君たち2人・・・ミナトと侑斗の母親なの」「・・・・うそだ」「・・・本当よ」「もし本当だったら・・・どうして・・・来たんですか」「・・・比較的安全になったから」「・・・・」「今までごめんね・・・・ミナト」「・・・・・なら・・・私達をどうしたいの」「今すぐ一緒に暮らしたいわ」「でも」「わかってる・・・今更一緒に暮らそうなんて都合が良すぎる」「・・・・」「だけど一緒にゆっくりと暮らしたい」「・・・・」「今更母親なんて名乗る権利はないけど・・・・私のことをお母さんって呼んでくれる?」そういうと店の奥から親戚家族が6名出てきて華のことを手から出現させた鋼鉄の鎖を巻き付けて拘束した「・・・・・・・!」「よくもずけずけと来たな!裏切り者め!」「やめて!」「ミナト!お主はこの女に騙されている!この女はずっとお前の力を狙っておったのじゃ!」「!」「ミナト・・・・・・違うの」「華さん・・・・やめてよ!」ミナトは華にまとわりついている鎖を引きちぎると華とその場で居眠りしていた侑斗を連れて外へ逃げ出した。とにかく遠くへ逃げて逃げて逃げた「ミナト・・・・」「お母さん・・・・3人でどこかに行こう!」「・・・うん」そうして華とミナトと侑斗はどこかへ去っていき尊がアルケミストを月に送るまで行方が分かっていなかった。次に発見された時には3人は完全に家族になっておりどこからどうみても何の変哲もない家族像だった。華はアルケミストの存在を感じなくなり一先ず安心したものの再びアルケミストが暁に襲来したときにミナトと侑斗に何も告げずに家を出ていってしまった。ミナトと侑斗は華を探したが見つからず尊の使いが手配したシェルターで今は安全な暮らしをしている。このことを話終えると華は少し悩みこみ尊を見つめた「ふーん・・・・じゃあなんで私達は戦ってるの?」「それは・・・君が無理をしているからだ」「無理?」「君はアルケミストに怯えている」「・・・・・・それで?」「私は君を救う」「・・・むりよ」「無理じゃない」「じゃあどうやるの?」「君をまずここから私の館にテレポートさせる」「でもあの方はすぐに気が付くわ」「だから館に待機させている味方達と迎え撃つ」「・・・・・無謀すぎる」「必ず君を守る」「・・・・・・何年か前にあなたのことを信じなかった・・・けど今回は信じてみようかしら」「ありがとう」「でも約束してね・・・・2人のことは必ず幸せにして」「何言ってるんだ・・・4人で幸せになろう」「それは・・・・無理よ」そういうと華は奥から持ってきた核を花で砕くと自らの首を花で切り裂いた。首からは血が吹き出し尊の顔にかかった「そんな!」尊はすぐさま館にワープすると医療班に治療を任せた「華!華!」尊も治癒能力を振り絞り花の首を必死に治療した。華が医療班に特別病院へ搬送されてから20分後遠くからとてつもない轟音を鳴らしてアルケミストが飛来してきた「尊!!!!」「アルケミスト!貴様だけは!ここで倒す!」尊は手に円盤状の結界を貼りそこに黄金の鎖と歪な骨のオーラを纏わせアルケミストは月鏡・改に数多の種族のオーラを纏わせた。その力がぶつかり合うと館に時空の狭間が出来て謎の亜空間へ引きずり込まれた「ここは!」「ここはなぁ!時間の中だよ!尊!」「時間・・・・!」「さぁここなら誰の邪魔もない!正々堂々!戦おうじゃないか!」そのころ現実世界では空や地上から謎の人型の化け物や巨大な恐竜のような化け物が暁中を跋扈していた。暁中にいる能力者達はこれらの対応に追われていた。中目やアテネなども尊の援護に向かいたいが化け物の数が多く援護に向かうことができなくなってしまった「なんだこいつら!」「中目さん!わたくしはエッセル学園領の援護に向かいます!中目さんはここをお願いします!」「わかった!気を付けろよ!」暁中はとにかく大パニック。公共交通機関もすべて止まり化け物による破壊行為や殺人行為が次第に増え始めた「これは!」「業くん・・・・!」「・・・・ノイズ!私は暗音の元に行く・・・ノイズは月とここに来る尊様の使いの人達と一緒に安全な場所に逃げて!」「でも!」「大丈夫!」「・・・・絶対死なないでね」「うん」今ここに全てを終わらせる聖戦の火蓋がきられるのであった!




