新人推薦会前の一幕
我らギルド『黎明の蒼狼』の本部ハウスは上が四階、下が五階というなかなかの高さ誇る。
それだけでなく、一回ごとの広さもまた格別だ。冒険者協会本部の建造物よりもでかいらしい。詳しくは知らない。
まぁ何が言いたいかと言われれば、我らのギルドハウスは新人推薦会に参加した数百は超える冒険者の卵、新人候補どもを収容できるだけの広さを誇るということだ。しかも一階だけで。
頭おかしい。
そして俺は今、新人推薦会とかいう馬鹿な催しを開きやがったギルド幹部達が集まっている空間の「審査員」特別席に座っている。
「で?」
「で?はないだろ」
「ただでさえ仕事で首が回らないってのに・・・こんなの開きやがって」
俺は、見るからにガサツな顔しているギルド幹部に向かってため息を吐く。
「まぁまぁ、いいじゃないか」
「良くねぇ!!」
幹部の中で一二を争うほど整った顔立ちを持つ幹部に怒声を浴びせる。
「加入者の契約書を用意するこっちの身にもなってみろよ」
「・・・・でも加入者が増えれば、仕事が減るよ?」
「減るわけねぇだろ。むしろ増えるわ」
「・・・・バレた」
見るからに気弱そうな幹部・・・・職業が忍者とかいうなかなか珍しい幹部だ。
つか、バレたって何だよ、バレたって。よく考えればわかる話だろうが。
コイツ俺のこと馬鹿にしてるのかな?罷免だね。
「有望な新人を囲っておいて損はない。むしろ、我々のギルドにとっては得しかない。この機を逃すのはあまりにも惜しい。そうは思わないのか?」
「思わない。むしろ規模が拡大しすぎだ。幹部の一人や二人を罷免したいくらいだ。なぁ?」
「おとぎ話の妖精の国から来た」と言われても全く驚かないほど端正な顔立ちをしている高慢エルフ幹部の意見を一蹴しつつ、睨む。
睨まれた高慢エルフは傲慢な顔つきを一切変えず、視線を俺から外す。
コイツとは少々確執があるからなぁ。主にフィーナ関連で。
「うちのパーティの奴らが来てれば話早えんだけどなぁ」
「来ていないのかい?」
「一部はもうすぐ帰ってくるはずだ」
その一部のメンバーから送られてきた手紙には、状況が一ミリも理解できない文章で書かれた経過報告とともに「もうすぐ帰れる!!」と書かれてあった。
・・・あなたにやらせたクエストってすごく高難易度のはずなんだけど・・・頭おかしい。
「そろそろ始めようぜ」
「・・・賛成」
その声を聴いて俺は、今回の参加者たちの方を見る。
どいつもこいつも気が立ってんなぁ。反抗期か?
「では自己紹介から、私は『白煌の誓約』、ロベルト・セインツ・ヴァン・イグニス」
「俺は『黒狼』リーダー、ガルド・ヘルヴォール・ブレイガン」
「朕は『星樹の灯』のリーダー、ガーネシア・ミラ・サファリオン」
「・・・私は『暁の影』リーダー、シェルナ・ヴィリ・パープルフォン」
「・・・『黎明の流星』リーダー、エルリック・ヨルバ・フォージウィン」
こうして、史上類を見ない意味不明なギルド加入試験、もとい新人推薦会が始まった。
前置きが長いですね。すいません