ep 7
ライデンの提案に安堵したのも束の間、ライデンは部屋の奥に向かって声をかけた。
「ふむ、ライザ。入ってきなさい。」
重厚な扉が再び開き、部屋に入ってきたのは、凛とした雰囲気を持つ女性だった。 整った顔立ちに、キリッとした眼差し。腰には立派な剣が携えられている。 彼女がライデンの娘、ライザだった。
「はい、お父様。」
ライザは落ち着いた声で応じ、ライデンに恭しく頭を下げた。
サリーはライザの姿を見て、嬉しそうに声を上げた。
「ライザ!久しぶり!」
「あら、サリー。久しぶりね。元気してたかしら?」
ライザはサリーの問いかけに、優しい笑みを浮かべた。二人は旧知の仲のようだ。
ライデンは咳払いを一つし、太郎に向き直った。
「太郎さん、こちらは我が娘のライザだ。自分で言うのもなんだが、自慢の娘だよ。剣士としての腕前は勿論、美しく、そして優しい。」
ライデンの親バカぶりには少し苦笑してしまうが、ライザの凛とした佇まいからは、確かに只者ではない雰囲気が感じられた。
「お、お父様…」
ライザは少し恥ずかしそうに顔を赤らめる。ライデンの言葉は、娘にとっては少しばかり照れくさいものだったのだろう。
ライデンは構わず話を続ける。
「う、うむ。太郎さん、ライザを君の護衛に付けよう。」
ライデンの言葉に、太郎は思わず間の抜けた声を出してしまった。
「え?」
護衛? まさか、あの強そうなライザが、自分の護衛になるというのか?
「君がいかに重要な存在か、ギルドとしても理解している。その身を守るためには、信頼できる護衛が必要となるだろう。となると、やはり娘のライザをおいて他にいない。」
ライデンの言葉は、有無を言わせぬ決定事項のようだった。
「そ、そんな、悪いですよ。」
いくらなんでも、ギルド長の娘を護衛につけるというのは、気が引ける。自分はただの異世界から来た普通の大学生だ。
「これは決定事項だよ、太郎さん。ライザ、しっかりと太郎さんをお守りしてあげなさい。」
ライデンは有無を言わせぬ口調でライザに命じた。
「はい、お父様。太郎さん、よろしくお願いいたします。」
ライザは改めて太郎に向き直り、深々と頭を下げた。 その真剣な眼差しに、太郎は圧倒されそうになる。
「よ、よろしくお願いします、ライザさん。」
「ライザで構いませんよ。」
ライザは微笑みながら言った。 その笑顔は、先ほどの凛とした表情とはまた違い、親しみやすさを感じさせた。
その時、サリーが嬉しそうに手を叩いた。
「やったー!ライザと一緒に冒険できるのね?」
サリーの言葉に、太郎は初めて気が付いた。サリーも一緒に行くつもりなのか?
「え?サリーも一緒に!?」
思わず聞き返すと、サリーは当然だと言わんばかりに頷いた。
「当然です!太郎さんだけでは心配だもの。私も一緒に行きます。」
確かに、サリーの回復魔法は非常に頼りになる。それに、一人で心細い異世界を旅するよりも、サリーと一緒の方が心強い。
「分かったよ、サリー。ライザ、よろしくね。」
太郎が笑顔で言うと、サリーとライザは顔を見合わせ、嬉しそうに頷いた。
「はい!」
「ええ、こちらこそ。」
こうして、ひょんなことから、太郎、サリー、ライザの三人パーティーが結成された。 心強い仲間を得て、太郎の異世界生活は、新たな章へと進んでいく。 100円ショップのスキルを武器に、彼らは一体どんな冒険を繰り広げるのだろうか。 その未来は、まだ誰にも分からない。