ep 4
村での穏やかな日々は、太郎が異世界に来てから数日が経った頃には、すっかり日常へと変わりつつあった。サリーをはじめとする村人たちの温かいもてなしのおかげで、不安だった異世界生活も、今は心地よさすら感じられるほどだ。
特に、村人たちから様々な素材を「あげるよ」と手渡されることが多かった。最初は遠慮していた太郎だったが、彼らの厚意に甘えることにした。そして、試しにそれらの素材を【100円ショップ】スキルに入れてみたところ、驚くべき変化が起こった。素材はポイントに変換され、気が付けば所持ポイントは初期値の1000ポイントに戻っていたのだ。
「これは…ありがたいな」
太郎は内心ほくそ笑んだ。村の生活は温かいが、いつまでもお世話になり続けるわけにはいかない。そろそろ、自分の足でこの世界を歩き始める時だと感じていた。
ある日、太郎はサリーに意を決して街へ行くことを告げた。
「よし、そろそろ街に行こうかな」
太郎がサリーに話しかけると、サリーは少し寂しそうな表情を浮かべた。
「え?ずっと村に居て良いんですよ?」
サリーの言葉は、純粋な優しさからくるものだと太郎は理解している。しかし、甘え続けるわけにはいかない。
「いや、そんなに甘えるわけには。それに、この世界の色々な場所を見てみたいし。」
太郎がそう答えると、サリーは少し考え込んだ後、意を決したように顔を上げた。
「そうですか…。では、私も一緒に街に行って案内しますよ」
「え?」
太郎は予期せぬ提案に、思わず間の抜けた声を出してしまった。
「た、太郎さんだけでは、心配で…。わ、私とじゃ、嫌ですか?」
サリーは顔を真っ赤にしながら、不安そうに太郎の顔を見つめてくる。その可愛らしい表情に、太郎はドキッとした。
「そんな事ないよ!ありがとう、サリー」
太郎が笑顔で応じると、サリーはパッと顔を輝かせ、心底嬉しそうに微笑んだ。頬はまだ赤いままだが、その表情は花が咲いたように明るい。
そして、出発の日が来た。
村の入り口には、村長のササガをはじめ、多くの村人が見送りに来てくれていた。
「太郎、サリー、道中気をつけてな」
ササガはいつもの朗らかな笑顔で二人を見送る。
「うん、大丈夫よ父さん」
サリーは元気よく答える。
「村長さん、皆さん、本当にお世話になりました!」
太郎は深々と頭を下げた。村人たちは笑顔で手を振り返し、二人の旅立ちを祝福した。
「いってらっしゃーい!」
「気をつけてねー!」
温かい声援を受けながら、太郎とサリーは村を後にした。サリーは少し緊張した面持ちで、太郎の隣を歩いている。太郎はそんなサリーの横顔を見て、小さく笑いかけた。
「さあ、サリー。街へ向かおうか」
「はい!」
サリーは満面の笑みで頷いた。二人の前には、まだ見ぬ異世界の風景が広がっている。100円ショップのスキルを手に、太郎の新たな冒険が、今、始まったばかりだ。