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冷徹社長、闇に堕ちる時:復讐

もう一方。


蓮はまだMETに戻っていなかった。

社内はすでに大騒ぎになっており、特に三人組のグループは異常な盛り上がりを見せていた。

彼らは即座に会議室を予約し、大画面に例の写真を映し出し、清奈を議論に招いた。


- 会議名:METとQVの競争力分析

- 参加者:アリサ、圭介、順平、清奈


一見すると、正式なビジネスミーティングのように思えるが――


実際は全くの別物だった。


まず、その写真は極めて芸術的かつ情緒的な一枚だった。

嵐の夜、画面全体は暗い青のトーンで覆われている。

交差する光と影の中、男女が地面に座り、熱い視線を交わしていた。


二人の背後にはちょうど雷が走り、その閃光が彼らの横顔を照らし出す。

女性の髪は光を浴びて揺れ、男性の目は影の中で光っていた。

彼女の視線は決して「ただの友人」には見えず、

彼の肩に置かれた手もまた、明らかに熱を帯びていた。


そして何より、彼らの距離が――近すぎる。


順平がついに言葉を絞り出す。

「これ、絶対にトップニュースになるやつだろ!」


清奈は肩をすくめ、涼しい顔で答えた。

「簡単に言うと、もう海外でも話題になってるよ。これが今のネット社会の速度。」


アリサは気まずそうに清奈を見つめた。

「……今の気持ちは、大丈夫?」


清奈は小さく首を振る。

「METには大きな影響はないよ。もともと独立運営だし、投資家の涼真も型破りな人だからね。」


それでもアリサはためらいがちに聞いた。

「でも……あなた、蓮と付き合ってるんじゃないの? まったく気にならないの?」


清奈は驚いた顔で眉を上げる。

「私?」


一瞬、呆然とした後、吹き出した。

「私と蓮が? そんな話、初耳なんだけど?」


順平が肩をすくめる。

「ずっとそうだと思ってたよ? 蓮、このところ清奈にめちゃくちゃ従順だったし。」


清奈は頭を抱える仕草をして、苦笑した。

「あー、違う違う。みんな何を勝手に妄想してるのよ! 断言するけど、蓮は真理奈に完全に惚れ込んでる。もはや救いようがないレベルでね。」


三人はその発言に目を見開いた。


順平は信じられないという顔で言う。

「つまり……蓮は、純愛戦士? クズでも、遊び人でも、二股男でもない?」


アリサは複雑な表情を浮かべながら、ゆっくりと口を開く。

「……もし、そうだとしたら……私、ある可能性を思いついた。」


圭介はうなずく。

「俺も同じこと考えてた。」


順平も即座に察したようで、

「蓮ならやりかねないよな。」


だが、清奈だけはまったく理解が追いつかない様子だった。

「だから、一体何を言ってるの? 誰か説明して!」


順平は深刻な顔をして、重々しく言った。

「十中八九、蓮の自作自演だよ。全部、真理奈を振り向かせるための計画ってわけ。」


三人はその推測を確信し、互いにうなずき合った。

一方で、清奈はまるでとんでもない陰謀論を聞かされたような表情を浮かべた。


「蓮の……自作自演?」彼女は信じられないように繰り返した。


「そう。」アリサは確信に満ちた声で言う。

「みんな知ってるでしょ? 蓮は真理奈に本気だし、行動力が尋常じゃないって。それに、この写真は偶然じゃ撮れない。」


「昨夜の嵐――」圭介はジェスチャーを交えながら続ける。

「なんで ‘たまたま’ 真理奈と同じ場所にいたの?」


「写真のアングル――」順平がスクリーンを指さす。

「どうして ‘たまたま’ 最高の光のタイミングで撮影されたの?」


アリサがまとめるように言う。

「蓮はこのために、ありったけの策を仕掛けたんだよ。真理奈に自分の気持ちをはっきり伝えるためにね。」


三人はその結論に納得し、改めてうなずき合った。


清奈は腕を組み、しばらく考え込む。そして、次第に表情が険しくなっていく。


「……もし本当にそうなら、ひとつの恐ろしい事実が浮かび上がる。」

彼女は低い声で言った。


「蓮って、恋愛において究極に自己中心的な人間ってことになるけど?」


「蓮は、この騒動が真理奈にどれだけの影響を与えるか……考えたことあるの?」

会議室は沈黙に包まれていた。

清奈の表情には、冷静な距離感が滲み出ている。


彼女はゆっくりと口を開いた。

「もし蓮が本当にこんなことをしたなら、それは真理奈を追いかけているんじゃない。操っているのよ。」


アリサが一瞬言葉を詰まらせ、清奈の意見に頷いた。

「そうよね……。彼が口にする『深い愛』なんて、結局は安っぽい感情に過ぎないのかも。」


清奈は皮肉げに笑った。

「本来、恋愛は自由なものよ。でも、もし蓮がこれを仕組んだのなら、それは彼女を追い詰めてるだけ。世間の注目を集めさせて、彼女が『答えざるを得ない状況』を作ったってことじゃない?」


順平は二人の勢いに押され、何も言えなかった。

圭介は深く息を吐いた。

「確かに……。蓮が誰よりも分かってるはずだ。真理奈がどれだけ理知的で、誇り高い人間かを。彼女は、誰かに支配されることを何よりも嫌う。」


「それに、彼女のキャリアだってあるのよ。」アリサが淡々と付け加えた。


順平の表情が少し曇る。

「でもさ……蓮がそんなことをするような奴とは思えないんだけど。」


清奈はスクリーンに映る写真をじっと見つめ、小さく首を振った。

「彼がどんな人間かは関係ない。今、目の前にあるのはこの状況なのよ。」


――その時。


会議室の扉が開いた。


蓮が立っていた。


その表情は静かだが、どこか険しい。


どうやら、すべて聞いていたらしい。


空気が張り詰める。

全員の視線が彼に集まった。


最初に沈黙を破ったのは清奈だった。

「蓮、ちょうど君の話をしていたところよ。」


蓮は無言のまま、スクリーンの写真に目を向け、そして清奈の瞳をまっすぐに見た。

「知ってる。」


清奈は目を細め、探るように尋ねた。

「じゃあ、一つだけ聞くわ。この件、君が仕組んだことなの?」


蓮の指がかすかに動く。唇がわずかに開き、そして——


「俺じゃない。」


アリサがすかさず問い詰める。

「じゃあ、誰が?」


蓮は少し間を置き、ゆっくりと言葉を紡いだ。

「まだ分からない。」


数秒の静寂。


その時、誠司がドアの前に現れた。

「俺には、心当たりがある。」


全員の視線が誠司に集中する。


彼は黙ったまま会議室に入り、自分のPCをスクリーンに接続した。


「俺は、最初のサーバー攻撃を諦めずに追跡していた。」


画面に高速でコードが流れる。誠司が手際よく操作し、一つのデータが浮かび上がった。

それは、複雑に入り組んだIPアドレスの追跡経路と、解読された匿名ID。


「面白いことが分かったよ。」誠司が口を開く。

「俺たちが受けた攻撃は一度だけ。でも、侵入はそれだけじゃなかった。」


順平は首を傾げる。

「それって……面白いのか?」


「もちろん。」誠司は淡々と言った。

「もし何度も侵入できたなら、もっと攻撃を続けることもできたはずだ。でも、相手はそれをしなかった。」


蓮の目が細められる。

「……代わりに、もっと効果的な打撃を狙った、ってことか。」


誠司は頷いた。

「最初に流出した森林の写真、実は匿名の掲示板に投稿されたものだった。それを追跡して、最初に投稿した人物を特定した。」


彼はキーボードを叩き、画面に匿名フォーラムのページを表示させる。


「単刀直入に言うと——この投稿者のIP、サーバーを攻撃した奴と同じだった。」

会議室には沈黙が満ちていた。


蓮はスクリーンを見つめ、目を細めながらゆっくりと言った。


「つまり、盗撮された写真のアップロード、そして以前のサイバー攻撃……すべて同じ人物の仕業ってことか。」


誠司は小さく頷く。


「可能性は高い。今朝の写真をアップロードしたIPアドレスを確認してみる。」


彼はすぐにキーボードを叩き始めた。


数分後。


「間違いない。同じIPだ。」


蓮の声は静かだったが、どこかに危険な気配が滲んでいた。


「他人の人生を覗き見するのがそんなに楽しいなら……こっちも同じ目に遭わせてやらないとな。」


順平、圭介、アリサの三人が大げさに抱き合い、ふざけた声をあげる。


「うわー! これはまさに……"冷徹社長、闇に堕ちる時" 第一章:復讐!」


清奈も面白そうに口を挟む。


「で? 次のセリフは……『三分以内に、この人物のすべてを洗い出せ』ってやつ?」


蓮は苦笑しながらこめかみを揉み、呆れたように言った。


「いや、さすがにそこまで言わないよ。」


すると誠司が静かに補足した。


「でも、もし本気で知りたければ、三分でも不可能じゃない。」


三人組:「……。」


順平は背筋をぞわりとさせ、身を引いた。


「おいおい、冗談だよな?」


誠司は淡々と答えた。


「冗談だよ。」 そう言った後、少し間を置いて続ける。「ただし、突破口が必要だ。」


蓮は腕を組み、テーブルに寄りかかりながら興味深そうに尋ねた。


「それで、どうやって探るつもりだ?」


誠司は考え込むように視線を落としながら言った。


「相手がどうやってお前のスケジュールを知ったのかが鍵だな。森での写真はドローンでの空撮っぽいが、昨夜の写真は室内に仕掛けられた撮影装置のように見える。」


蓮の瞳が僅かに陰る。


彼は指でテーブルを軽く叩きながら言った。


「つまり、俺の行動を事前に知ることができるか……もしくは、常に俺の近くにいるってことか。」


会議室が再び静寂に包まれる。


その静けさを破ったのは順平だった。


「なんか、内通者がいるみたいな話になってきたな。」


誠司は首を横に振った。


「社内の人間はすでに調べた。怪しい動きはなかった。」


蓮と清奈が視線を交わす。


清奈は少し考えたあと、言った。


「すべての可能性を排除したら、残るのは……。」


蓮は眉を寄せる。


「涼真か……真理奈。」


彼は大きく息を吐いた。納得したくないという感情がありありと見て取れる。


「……警察に任せたほうがいいかもしれないな。」


順平は納得いかない様子で蓮を見つめた。


「おいおい、現実から目を背けるなよ!」


蓮の表情が固くなる。


「ありえない。真理奈がそんなことをする理由がない。もし彼女が本当にそうしたいなら、回りくどいことをする必要なんてない。彼女が手招きすれば、俺はもうとっくに彼女のものだ。」


その瞬間、三人の顔色が変わる。


順平が叫んだ。


「俺、もうこの会議室から出るぞ! 恋愛脳に感染したくない!」


清奈も疑わしげな目で蓮を見た。


「ちょっと、二日酔いじゃないの?」


蓮は一瞬言葉を詰まらせた後、咳払いをして顔をそらした。


誠司は少し考えながら言う。


「確かに、真理奈にとってもメリットはない。むしろ彼女が一番の被害者じゃないか?」


清奈は軽く肩をすくめた。


「じゃあ、残るのは……涼真。」


蓮は低くその名前を呟いた。


「涼真……。」


清奈は真剣な表情で頷いた。


「彼はお前を"神"に仕立て上げようとしている。天才企業家としてのイメージを作り上げ、高METの評価を上げるために。」


圭介も同意した。


「それに、彼ならお前のスケジュールを把握してるし、プライベートな空間にもアクセスできる。こんな情報収集、外部の人間には不可能だ。」


だが清奈はすぐに首を横に振った。


「でも……それだけじゃ、涼真には物足りない。彼ならもっと大胆で、刺激的な手を打つはず。」

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