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蓮・スターク……私を裏切った男。王座のために私を刺したな?

蓮はガバッと目を覚ました。目の前に広がるのは、中世の城の石造りの天井だった。


――さっきまで学校にいたはずなのに。あの恐ろしい光景は……夢だったのか?


「おい、しっかりしろ。寝たら終わりだぞ。」


揺らめく蝋燭の灯りの中、蓮は目の前の男を認識した。鎧をまとった涼真だった。


彼は声を潜めて言う。


「音を立てるな。この異鬼の一群をやり過ごせれば、まだチャンスはある。」


蓮は素早く周囲を見渡した。ここは古びた石造りの密室だ。壁には破れかけた戦旗がかかり、空気は湿気と埃の匂いに満ちている。


涼真は静かに、蓮に短剣を差し出した。刃は龍晶で鍛えられている。


「必要なら、これで自決しろ。」


蓮は短剣を見つめ、口元がピクリと動いた。


「……ふざけるな。俺は戦わずして死ぬつもりはない。」


涼真はため息をついた。その表情には、一層の同情が滲んでいた。


「兄弟、お前はスタークの姓を持ってるが、所詮は私生児だ。主人公にはなれない運命なんだよ。」


蓮は短剣を握りしめ、鋭い眼差しを向ける。


「私生児だから何だ? 俺は最後まで生き延びてやる。」


涼真の顔を睨みつけながら、蓮は静かに続けた。


「なんだ、お前みたいな王族の坊ちゃんは生き残れて、俺は使い捨ての駒だってか?」


涼真は真剣な表情で頷いた。


「まあな。けど、私生児だろうが関係ない。スターク家の運命自体がろくなもんじゃないんだ。だから……お前も運命に抗え。」


その時、扉の向こうから何かが擦れる音が聞こえた。二人は息を潜め、扉に目を向ける。


扉がわずかに開き、赤いローブの女が現れた。


彼女が手を振ると、暖炉の火が激しく燃え上がる。同時に、外に仕掛けた炎も点いたはずだ。これで少しは異鬼の侵攻を遅らせることができる。


女は静かに呟いた。


「炎が我を導いた……まだ旧神は、お前たちの運命に興味があるらしい。」


蓮は警戒しながら彼女を見た。


「……お前の神は、何を言った?」


涼真は目を細め、蓮に囁く。


「こいつの魔法は条件付きだ。等価交換が基本だぞ。」


女は一歩前に進み、炎に照らされたローブが鮮やかに揺れる。


「世の中、タダの奇跡なんてない。」


涼真は腕を組み、半ば冗談めかして言った。


「じゃあ、何を差し出す? いっそ左目でも神に捧げてみるか?」


蓮は呆れた表情で答えた。


「それよりお前の傲慢さを捧げたらどうだ、涼真殿下?」


女は二人の言い合いに興味はないようだった。ただ静かに告げる。


「時間がない。決めるんだ。」


蓮は深く息を吸い、目を細める。


「じゃあ……殿下の財力を使おう。」


涼真は一瞬驚いた後、苦笑した。


「ったく、しょうがねぇな。何せ俺は七国一の金持ちだからな。」


彼は懐から金貨の袋を取り出し、軽く手のひらで転がすと、女に放り投げた。


赤の女は微笑み、指を動かす。すると金貨は黒い煙となって消え去った。


彼女は古代語の呪文を唱えながら、跪き、光明の神に祈りを捧げる。


蓮の手にある龍晶の短剣が、黒から青へと変化していった。青い炎――それは異鬼を滅ぼす力を持つ炎だった。


その時、外が騒がしくなった。吹雪が荒れ狂い、冷たい風が城内に流れ込む。


涼真の表情が険しくなり、遠くの空を睨んだ。


そこにいたのは――幽玄の青に染まった巨竜。


その背には、一人の長身の女が立っていた。黒の甲冑を纏い、銀白の髪が吹雪に舞う。その顔は死人のように白く、冷たい青い瞳には、深い憎しみが宿っていた。


「まずい……異鬼の女王が来た。」


マリナは蓮を真っ直ぐに見つめ、唇を開いた。


「蓮・スターク……私を裏切った男。王座のために私を刺したな?」


蓮の顔が青ざめる。背中に冷たい汗が伝う。


彼の脳裏には、あの夜の記憶が蘇る。


――あの時、自らの手で短剣を彼女の心臓に突き立てた。彼女が苦しみながら、ゆっくりと腕の中で息絶えていった光景が。


蓮は一歩後ずさり、かすれた声で言う。


「ま、マリナ……話を聞いてくれ――」


だが、異鬼の女王は冷たく笑った。


彼女の足元で氷竜が咆哮し、冷気を吐き出す。城の塔が崩れ落ち、氷の瓦礫が散る。


「聞く耳なんか持たない!」


彼女の目は怨念に満ちていた。


「お前はかつて、『共に王座を支配しよう』と言った。なのに、最後の最後で私を殺したのだ。」


蓮は言葉を失った。


手の中の短剣を強く握りしめ、心臓が激しく鼓動する。


マリナは鋭く叫んだ。


「龍焔!」


氷竜の口から、青い業火が吐き出された。


赤の女が即座に呪文を唱える。


「光明の神の名において、炎よ、我を守れ!」


暖炉の炎が巨大な火盾となり、青い氷焔と衝突する。轟音が鳴り響き、城が激しく揺れた。


マリナは竜の背から跳び降り、蓮へと一直線に迫る。


彼女は牙を剥き、冷たく囁く。


「蓮・スターク……今日こそ、お前は――」


蓮は恐怖に駆られ、短剣を構えた。


「……どうなるって?」


マリナは宙で嘲笑う。


「死ぬか、異鬼となるか。」


涼真が剣を抜き、叫んだ。


「蓮・スターク! 元カノに対して言うべき台詞はなんだ!?」


蓮は震えながら、彼女の瞳を見つめ――


「……今日は死なない。」


マリナの表情が怒りに染まった。


「いいや、今日は死ぬんだよ!!」

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