公爵家嫡男と、叔父
「母上が動いてるのは知っていたけどさ、……叔父上爪が甘過ぎるよ?そんなだから昔カルイーニャに騙されんだ」
ユーグが預けた目下反省中のカリスを見て、俺は溜め息を付くと椅子から立ち上がり腰に剣を差した。
「……面目無い。……サキアが母親の能力を継いでいる情報を過信していた。まさか先に逃しているとは……」
部屋の床に正座をして項垂れるカリスはアホっぽい。
「確か叔父上を騙したカルイーニャは、頭がぶっ飛んで居た転生者だったっけ?結局、母上にアンデッド化された後どうなったんだ?」
思い出して俺は叔父上に尋ねてみた。
「……生前は行儀作法や、教養、マナーもやる気が無かったのだが……アンデッドになった途端、性格も変わって地道にメイドとして仕えてるらしい。今は……アリスの侍女候補として働いてるな」
叔父上は困った顔をして答えた。
……性格変わったって……まさかカルイーニャは転生者じゃなくて、地球で死んだ悪霊が憑依してたとか?
……いやいやいや、いくら転生者が溢れていても、ないないないない。
憑依系なんか無いだろう。だったら都合良く母上にブッ殺されて悪霊が消滅したって事になるし……
俺は難しい顔をして頷く。
「……何故か私や私の側近達を見ると、土下座して謝罪するんだ」
……別人!!それもう憑依されてた可哀想な人!!
更に叔父上の言葉で俺は確定した。
「……まっまあ……今はカルイーニャの話は置いておいて……屋敷の警護だな。叔父上と叔父上の側近達は俺の率いるアサシンドール騎士部隊に組み込まれたからさ。悪いけど俺の指示に従って貰うよ」
「それは問題無い、分かった、指示に従おう」
俺が命じると、叔父上も返事をして立ち上がった。
「正座して直ぐに立つの……叔父上凄いな」
「ん?慣れたぞ、多分これ慣れたから足も痺れないと思う」
思わずジト目で俺が叔父上に言うと、叔父上はキョトンとして答えた。
……ドM!?叔父上ドMなんか!?
当然俺はドン引きした。
その後、俺と叔父上はアサシンドール騎士部隊を率いて外に展開する。
「もし違法魔石を喰うならやっぱり公爵家に突っ込むのか?」
「力の無い人間が食べる事で理性を失い、強大な力を得る人工魔人だからな。純潔の魔族や魔人と違って話も通じなくなるようだし……十中八九恨みで襲ってくる可能性が高い」
俺に叔父上は答えると、魔力を具現化させて双剣を作ると構えた。
「んじゃ、気合い入れて行こうぜ」
「あぁ」
俺も鞘から剣を構えると、叔父上と頷き合うのだった。