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公爵と親友の会話

「クエス、お前の兄貴がやらかした」


執務室で休憩をしていると、ユーグが苛立ちながら入って来た。


「スロバキア男爵家の弟を逃がしたのか?」


「なんだ……既に諜報部隊を追わせていたのか?」


私が言うと、気付いたユーグが肩を竦める。


「まあな、朝食の席でマリエルの発言を考えれば動くのは分かっていたし、アンデッドになってもカリス兄上は爪が甘い。何かしらやらかすのは目に見えていたよ」


紅茶を淹れた私はユーグに差し出す。


「お早い行動で、そのたぐいまれな頭脳を玉座について生かせば良かったじゃねぇか?」


「玉座に端から興味はない。……私は裏で動く方が向いてるよ」


ユーグと私は顔を見合せて笑い合う。


「アンデッドになってユーグは後悔してないか?」


気になって私はユーグに問い掛ける。


「元々、俺は不治の病だったから何もせずにしても呆気なく死んでいたさ。……だったら死ぬ前に愛しのマリエル嬢に賭けて見たんだ。シュバルツ一族は屈辱を赦さない。ならば、敢えてマリエル嬢に暴言を働いて不敬を犯せば怒りに触れ……俺を殺してアンデッド化してくれないかとな」


紅茶を飲み、ユーグは困ったように笑う。


「全ては計算付くか。なんとも君らしいよ。それで目論み通りアンデッド化して妻の側に居られるのだと思うと複雑な気分だが……」


「そのくらい我慢しろ、クオルナ公爵家の使用人の半分がアサシンドールだし、侍従や執事達が諜報部隊なら構わないだろうよ」


苦い顔で私が頭を抱えると、ユーグは足を組む。


「まあな……だが、家令のスチュアートから悪い知らせが入った。……弟のジュスタが持って逃げてる金貨袋の中に違法魔石が入ってるらしい。そいつをジュスタが食えば魔人なって暴れる可能性がある」


「……厄介だな。スロバキア男爵家は隣国と内通していた様だからそれ経由か?」


私が話を変えると、ユーグも眉を潜めた。


「アサシンドールを総動員して奴を探す、お前も諜報部隊を動員して警護を強化しろ」


「あぁ、こっちもやっておくよ」


紅茶を飲み干したユーグに軽く手を振り、私は返事をした。


ユーグはまるで忍者みたいに姿を消すから、少し羨ましく感じる。



私には前世の記憶がある。


新人の編集者の頃から苦楽を共にした小説家の先生と過ごしてきた。


後任の編集者が横領してから、私は先生に誠心誠意謝罪し、先生は笑って許してくれたのは今でも覚えてる。


あの日も、私は外出した先生の帰りを先生の自宅で待っていた。


先生の大好きなカレーライスを作った私は、嬉しそうに食べる先生の顔を想像して微笑む。


だけど、私は会社から先生の訃報を伝えられ、頭が真っ白になった。


葬儀の後、私は生きる目標を失って脱け殻になった。


無気力になった私は……住んでいたマンションから飛び降りて命を断つ。


気付いたらこの世界に第三王子として産まれた。


過ごす中で、この世界……と言うよりドュース王国に転生者が多い事に気付く。


第二王子のリヒャルド兄上は、同じ転生者で先生のファンだった。


リヒャルド兄上と共に私は、他の転生者を探してドュース王国のインフラを整備した。


国が豊かになれば、国民も豊かになるからだ。


ナイツ侯爵家の侯爵令息だったユーグとは親友となり、様々な意見を出し合った。


その過程で、不治の病になったユーグはマリエル嬢に賭けて賭けに勝つ。


頭脳はあっても、私は度胸がない。


ユーグに言われて卒業パーティーで、私はマリエル嬢の後ろに移動したけど、彼女には最後まで気付いて貰えなかった。


アンデッドになっても自信満々なユーグは、彼女にハンカチを差し出すと私を見て苦笑する。


結局、マリエル嬢はユーグのエスコートで会場から去り、私は二人の後に続いて会場から去った。



それからも、ユーグは婚約を結んだ私とマリエル嬢の為に間を取り持ってくれたのだから有り難い。


何とか結ばれ、子宝に恵まれて幸せなのに。


スロバキア男爵家ごときに邪魔されるのは不愉快だ。


私はまた溜め息を付くと、執務室から出るのだった。


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